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寅さん全作品解説/第40作『男はつらいよ寅次郎サラダ記念日』

本作をひとことで言うと

寅さんの“サラダ記念日”

俵万智の短歌をモチーフにした意欲作。積極起用された若いキャストが高齢化の目立つレギュラー陣とうまく融和しており、渋みのある大人の恋愛を瑞々しい感性で描いている。三田佳子、すまけい、鈴木光枝らの芸達者ぶりに加え、三田寛子の好演が作品の完成度を一段と高めている後期の秀作。

マドンナ/三田佳子

役名:原田真知子(女医)

派手さはないが抜群の安定感を見せるマドンナ。三田佳子は本作の2年前にNHK大河ドラマ『いのち』で女医を演じているためか、医者の所作が板についている。寅さんと月を眺めるシーンは昭和女優ならではのクサみのある演技がハマった好場面である。

第40作「男はつらいよ寅次郎サラダ記念日」評論

「大人の恋愛」を瑞々しい感性で描く、後期の秀作

『サラダ記念日』は1987年に刊行された俳人・俵万智のベストセラー歌集。本作は要所要所で俵万智の短歌がフィーチャーされる一風変わった寅さん作品である。

バレンシアオレンジしかもつぶ入りの100パーセント果汁のように

第40作「男はつらいよ寅次郎サラダ記念日」

寅さんが『この味いいね』と言ったから 師走六日はサラダ記念日

第40作「男はつらいよ寅次郎サラダ記念日」

シーンの最後に歌が詠まれることで、風景そして人物の心象がスナップショットのように切り取られる。正直なところ歌がなくとも成立する作品だが、歌がなければ極めてオーソドックスな寅さんの人情譚だったはずで、ここまで印象に残る作品にはならなかったかもしれない。挿入歌にサザンオールスターズを起用するなど、大台の40作にしてなお新たな試みに挑む山田洋次の心意気には拍手を贈りたい。

物語はささやかな日常のスケッチを中心に、柴又と長野県小諸市を行きつ戻りつ進んでいく。語られるエピソードはいささか地味だが、シーンが替わるごとに新しい人物が登場し、スムーズに展開していく脚本はお見事。

俳優陣も派手さはないがいい仕事をする芸達者ばかりで、本作の高い完成度に貢献している。短い出演だが強い印象を残すのはお婆ちゃん役の鈴木光枝。二度と家に戻れないことを悟ったお婆ちゃんは、万感の思いを込めて愛しの我が家を見つめる。映像は家、お婆ちゃん、初秋の山々を順番に映すだけだが、お婆ちゃんの切実な瞳を見た観客は、彼女がこの家で過ごした日々のことを想起せずにはいられないだろう。マドンナ三田佳子しかり、すまけいしかり、表情や佇まいだけでセリフ以上の想いを伝える俳優陣の活躍には、安心して身を委ねることができる。

個人的に意外だったのは助演・三田寛子の好演。彼女は恋の歌を詠む人だから、早すぎる別れを選んだ寅次郎の胸のうち──マドンナ真知子を愛しているが、自分は決して彼女にふさわしい男ではない──を敏感に感じとることができたのだ。大人の恋の切なさを知って溢れ出す涙と、それが夕陽に照らされキラめく様子は本作の情感をぐっと深いものにしている。

若いキャスト、新しい試みを積極的に取り入れることでレギュラーキャストの高齢化をうまく中和しながら、瑞々しい感性で大人の恋を描くことに成功した本作。後期寅さんの秀作といっていい作品だろう。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第40作「男はつらいよ寅次郎サラダ記念日」 作品データ

第40作「男はつらいよ寅次郎サラダ記念日」 予告編

第40作「男はつらいよ寅次郎サラダ記念日」 あらすじ

準備中

第40作「男はつらいよ寅次郎サラダ記念日」 作品データ

公開1988年(昭和63年)12月24日
同時上映釣りバカ日誌(西田敏行)
観客動員数182万2,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Salad-Day Memorial
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