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寅さん全作品解説/第37作『男はつらいよ幸福の青い鳥』(1986年12月公開)

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本作をひとことで言うと

寅さん VS 長渕剛

後に本当の夫婦となる長渕剛と志穂美悦子がカップルを演じる第37作。渥美清は脇役にまわり、若い男女の恋物語を笑いで盛り上げる。芸術家志望の青年・健吾を演じる長渕剛の存在感が際立っており、寅さんの看板を掲げながらほとんど長渕の映画となってしまった稀有な作品。

マドンナ

志穂美 悦子(当時 31歳)

役名:島崎美保
職業:旅館のコンパニオン

日本映画史上、最初で最後のアクション女優・志穂美悦子。彼女の得意が生かされた結果、マドンナ美保はオフロードバイクを乗りこなし、宴席では酔っ払いにタックルされる肉体派マドンナとなった。本作の翌年に長渕剛と結婚し引退。寅さんが最後の映画出演となる。

第37作「男はつらいよ幸福の青い鳥」解説・評論

渥美清にも山田洋次にも勝った、唯一の助演男優・長渕剛

第37作『幸福の青い鳥』は、寅さんが男女の仲を取り持つ“コーチもの”の一つに数えられる作品。しかし寅さんの介添えもごくわずかに、若い男女は紆余曲折を経て自然に惹かれあっていく。本作は第35作「男はつらいよ寅次郎恋愛塾」と同様に「青春恋愛映画」と評するのが適切だろう。

長渕剛というキャスティングに驚く向きも多いと思うが、見どころはやっぱり彼の演技である。近所の兄ちゃんのような気安さを見せたかと思えば、才能の不足に悩む芸術家の繊細さ、好きな女性に素直になれない男の不器用さをひたむきに演じていく。今とはまったく別人の若き日の長渕、その熱演は彼のファンならずとも注目である。

相手を務めるマドンナ志穂美悦子は、第8作「男はつらいよ寅次郎恋歌」第18作「男はつらいよ寅次郎純情詩集」に登場した坂東鶴八郎一座の看板女優・大空小百合(岡本茉利)のその後という設定。しかし、あの幼い丸顔と志穂美の精悍な顔がどうしても結びつかない。オフロードバイクを颯爽と乗りこなす異色のマドンナだが、役柄に真摯に取り組む姿には好感が持てる。

長渕と志穂美は本作の翌年に結婚するが、撮影当時からすでに交際中であったらしい。そのせいもあるのか、長渕と志穂美が二人で登場するシーンには芝居を超えた熱があり、寅さんではない別の青春映画を見ているかのような趣がある。今回の寅さんはそんな二人の恋愛が盛りあがる様子をただただ見守るだけ。渥美清と長渕剛の共演はほんの一瞬で終わるが、寅さん的世界観とは異質な長渕との接触を最小限に抑えたことは、若い二人の恋愛を中心に据えた作品としては良かったのかもしれない。

「男はつらいよ」にはこれまで数え切れないほどの助演男優がゲスト出演をしてきた。しかし、作品に大きな存在感を残し、渥美清にも山田洋次にも勝った役者は長渕剛ただ一人といっていいだろう。本作は、寅さんの看板を掲げながらも助演男優・長渕剛の映画作品になってしまった稀有な例である。

劇中でさくらが「1年のご無沙汰よ」という通り、本作は松竹50周年記念映画『キネマの天地』のために前作から1年ぶりの公開となった。『キネマ』で主演を務めた有森也実は端役で登場し「おじさんユニーク!」と時代錯誤の歓声を上げ、笹野高史も『 キネマ 』同様、渥美清と軽妙なやり取りを見せている。

そうそう、若き日の出川哲朗も『 キネマ 』に引き続き本作にも出演。柴又の情報屋として帝釈天の参道を駈けずり回っている。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第37作「男はつらいよ幸福の青い鳥」 作品データ

公開1986年(昭和61年)12月20日
上映時間107分
主な出演者[車寅次郎]渥美清
[諏訪さくら]倍賞千恵子
[島崎美保]志穂美悦子
[島田健吾]長渕剛
[健吾の親方(有限会社創美社の経営者)]じん弘
[夢のシーン・オープニングシーンの車掌]イッセー尾形
[嘉穂劇場の従業員]すまけい
[上海軒の主人]桜井センリ
[葛飾区結婚相談室の相談員・近藤]笹野高史
[門前の板前]出川哲朗
[芦ノ湖の娘(「ユニーク!」と嬌声をあげる)]有森也実
[芦ノ湖の娘(「そんな~」と嬌声をあげる)]エドはるみ
[車竜造]下條正巳
[車つね]三崎千恵子
[諏訪博]前田吟
[桂梅太郎]太宰久雄
[源公]佐藤蛾次郎
[満男]吉岡秀隆
[あけみ]美保純
[御前様]笠智衆
同時上映愛しのチィパッパ(高見知佳)
観客動員数151万1,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Bluebird Fantasy

「男はつらいよ」全作品解説リンク

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