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寅さん全作品解説/第38作『男はつらいよ知床慕情』(1987年8月公開)

本作をひとことで言うと

寅さん VS “世界のミフネ”

“世界のミフネ”こと三船敏郎をゲストに迎えた第38作。口下手な中年男の劇的な愛の告白と、北海道の豊かな自然の印象が相まって、中期寅さんにしては珍しく爽快感のある作品に仕上がった。淡路恵子、すまけいら脇役達のいい仕事も見逃せない。ショートカットが麗しいマドンナ竹下景子は2度目の出演。

マドンナ/竹下景子

役名:上野りん子(獣医師の娘)

竹下景子は第32作に続き2度目のマドンナ出演。縁側から呼びかける寅さんに、風呂上がりの濡れた髪もそのままに現れるシーンにはドキッとさせられる。刈り上げのラインが美しいショートカットのマドンナである。

第38作「男はつらいよ知床慕情」解説・評論

“世界のミフネ”の男らしい告白、そして煮えきらない寅次郎……

第38作『知床慕情』には世界のミフネこと三船敏郎が登場する。当時67歳。『用心棒』『椿三十郎』など黒澤明とヒットを連発していた頃の色気はさすがに薄れたが、男らしさの呪縛に苦しむ中年男性・順吉の悲哀をコミカルに演じており、晩年ならではの味がある。

これまで寅さんは恋に悩む男の恋愛コーチを何度も務めてきたが、自分より年上の男を助けるのはシリーズ初である。「思いを伝えられない口下手な男」とは山田洋次作品に頻出する人物像だが、よりによって世界のミフネにその役をあてがい、ウブな男子学生のような告白をさせてしまうクライマックスは実に痛快。

告白の相手は淡路恵子。サバけた態度の奥底に深い愛情を垣間見せる演技はさすがで、順吉との別れを惜しむ黄昏のシーンでは彼女の表情がセリフ以上に切ない胸の内を物語る。老いらくの恋が観賞に耐えうるものになっているのは二人のキャスティングによるところが大きいだろう。

すまけいを筆頭に知床の地元民を演じる脇役たちも個性豊か。彼らが順吉や寅さんの一挙一動に派手に泣き笑いしてくれるおかげで、我々観客も物語の世界に入り込んでいける。シネスコいっぱいに広がる北海道の大自然の開放感も相まって、哀愁ばかりを感じさせる中期寅さんにおいて珍しく爽やかな後味をもたらす作品に仕上がった。

さて、そんな作品の印象とは裏腹に、我らが寅さんの“煮えきらなさ”にはいよいよ拍車がかかっている。寅さんは告白をためらう順吉を焚き付けるためにこう言った。「勇気を出して言え!今言わなかったらな、おじさん、一生死ぬまで言えないぞ」。そして順吉は告白に成功するが、その夜になると今度は寅さんに絶好の告白チャンスがやってくる。ついさっき劇的な告白を見せられた観客は当然寅さんの思い切った告白を期待する。しかし寅さんはその場をそーっと立ち去り、翌朝逃げるように旅に出てしまう。なんと歯がゆい寅次郎なのだろう!

第38作は珍しく夢シーンではなく寅さんのモノローグから始まる。第1作を彷彿とさせるオープニングに、熱心な寅さんファンなら「今回は何かが起きる!」と予感したかもしれないが、これはフェイント。観客の期待を裏切るかのように寅さんは清々しいほどに相変わらずで、マンネリ批判に対する堂々たる開き直りすら感じさせる。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第38作「男はつらいよ知床慕情」 作品データ

公開1987年(昭和62年)8月15日
上映時間107分
主な出演者[車寅次郎]渥美清
[諏訪さくら]倍賞千恵子
[上野りん子]竹下景子
[上野順吉]三船敏郎
[スナックはまなすのママ・悦子]淡路恵子
[知床丸の船長]すまけい
[知床海洋ホテルの二代目(専務)]冷泉公裕
[知床丸の船員・マコト]赤塚眞人
[漁協のボス]油井昌由樹
[おいちゃんが入院した病院の医者]イッセー尾形
[りん子が住んでいたアパートの大家]笹野高史
[門前の板前]出川哲朗
[車竜造]下條正巳
[車つね]三崎千恵子
[諏訪博]前田吟
[桂梅太郎]太宰久雄
[源公]佐藤蛾次郎
[満男]吉岡秀隆
[あけみ]美保純
[御前様]笠智衆
同時上映堀の中の懲りない面々(藤竜也)
観客動員数207万4,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san Goes North

「男はつらいよ」全作品解説リンク

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