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寅さん全作品解説/第28作『男はつらいよ寅次郎紙風船』

本作をひとことで言うと

哀愁漂う、過渡期の寅さん

美しい晩秋の風景が印象的な第28作。寅さんの加齢、同業者の哀れな末路、薄幸なマドンナ等の諸要素が重なり、シリーズ中最も哀愁漂う作品に仕上がった。岸本加世子が家出娘を好演、明るさをもたらしているが、作品全体のトーンはあくまで物悲しい。シリーズとしても寅さん個人としても、次の展開を模索するような過渡期的作品である。

マドンナ/音無美紀子

役名:倉富光枝(テキ屋の女房→旅館の仲居)

テキ屋の女房として苦労を重ねた薄幸のマドンナ。夫の余命を寅さんに告白する場面では、西陽に照らされた潤んだ瞳が印象的。シリーズ中もっとも夕陽が似合う黄昏のマドンナである。

第28作「男はつらいよ寅次郎紙風船」評論

男はつらいよシリーズ中、もっとも哀愁が漂う「過渡期の寅さん」作品

第28作『寅次郎紙風船』の味わいを端的に言えば「哀愁」のひと言に尽きる。人、風景、エピソードなど、哀愁に満ちた要素が満載で、寅さんシリーズにおけるペーソスの極北を行く作品といっても過言ではない。

その要因の一つに「寅さんの加齢」があるのは間違いない。本作の寅さんは甥っ子の満男に煙たがられ、小学校の同窓会でも鼻摘み者となる。シリーズ初期の彼なら笑い話で済んだエピソードも、もやは50歳に手が届く初老の男の経験となれば、漂う哀愁が半端ない。

旅先で寅さんが出会う登場人物たちも悲哀に満ちている。再会したかつてのテキ屋仲間(小沢昭一)は、病により余命幾ばくもない。あばら屋に住み、死を目前に控えながらも、ひとまわり若い妻に執着する姿は哀愁を誘う。

彼に寄り添う妻の光枝(音無美紀子)も、どこか影を背負ったマドンナである。彼女が夫の余命を寅次郎に告白するシーンでは、薄暮に包まれた晩秋の風景が彼女の薄幸を際立たせている。物語の終盤、柴又駅のシーンでも黄昏に包まれる彼女は、斜陽が実によく似合うマドンナだ。本作の哀愁は音無美紀子によってもたらされている面も多分にあるだろう。

そんな哀愁漂う作品における唯一の明るさが、当時21歳の岸本加世子である。家出娘の愛子を演じる彼女には、人懐っこい野良猫のような可愛さがある。兄役の地井武男と繰り広げる激しい喧嘩は成瀬巳喜男『あにいもうと』のオマージュであり、この場面における岸本の熱演は本作の見どころの一つである。

さて、物語は光枝と愛子、二人のエピソードが絡み合い進行していくが、やはり光枝パートの物悲しさが作品の主調となっている。今ひとつ盛り上がりに欠ける脚本に、加齢の影響が出始めた寅さん、黄昏が似合う薄幸のマドンナ、そしていたずらに美しい晩秋の風景と、物悲しさを誘う種々の要素が折り重なった結果、おそらく製作者側も意図していない、強烈な哀愁が漂う作品として完成した。

「初めて見る寅さん作品」としてはお薦めできない作品だが(そのような人も少ないと思うが)、寅さんシリーズ全体を一つの長い映画として捉えると、人生の折り返し地点を過ぎながらも、無頼な生き方を変えられない寅さんの苦悩が上手く表現されているのが本作だ。過渡期の寅さんを語る上で欠かすことのできない作品と言える。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第28作「男はつらいよ寅次郎紙風船」作品データ

第28作「男はつらいよ寅次郎紙風船」 予告編

第28作「男はつらいよ寅次郎紙風船」 あらすじ

準備中

第28作「男はつらいよ寅次郎紙風船」 作品データ

公開1981年(昭和56年)12月28日
同時上映シュンマオ物語(アニメ)
観客動員数144万8,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Promise
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