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寅さん全作品解説/第9作『男はつらいよ柴又慕情』(1972年8月公開)

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本作をひとことで言うと

スター・吉永小百合、登場

大スター吉永小百合をマドンナに迎えた9作。吉永をいかに美しく撮るか?に力点が置かれており、演出・脚本ともに華やぎのあるお伽話のような楽しい作品。初期寅さんの荒々しさは作品ごとに少しづつ変質し、本作ではいよいよ”愛される寅さん”の領域に達している。2代目おいちゃん松村達雄は本作より出演。

マドンナ

吉永 小百合(当時 27歳)

役名:高見歌子
職業:OL

国民的大スター・吉永小百合がついに登場。江戸川土手でのお花摘み、恥じらいながらの恋愛相談など、他の女優が演じたら無残で見ちゃあいられないような痛いシーンも、吉永小百合が演じると可憐なお嬢さんとして成立するから不思議。

第9作「男はつらいよ柴又慕情」評論

これぞマドンナ!吉永小百合の純情可憐な魅力が弾ける楽しい作品

第9作『男はつらいよ柴又慕情』には、10代からすでに大スターであった吉永小百合が満を持してマドンナとして登場する。

男はつらいよシリーズは第5作あたりから作品のテーマ性が明確になるが、本作のテーマはズバリ「吉永小百合」といっても過言ではない。吉永小百合の純情可憐な魅力が最大限に弾ける楽しい作品だ。

山田洋次は役者の個性やイメージにあわせて脚本を書く、いわゆる当て書きをスタイルにしていたと思しい。1971年の渥美清との対談で山田洋次はこう話している。

「目の前にいる俳優さんが、これを演じたら、どういうことになるか、というところで、映画が生まれてくるんです」

『キネマ旬報2008年9月下旬号』キネマ旬報社

吉永小百合をマドンナに迎え、山田監督の創作意識は「吉永小百合をもっとも美しく見せる映画とはどんなものか?」というテーマに向かったようだ。

たとえば、美しい調べの「歌子のテーマ」にのせて、歌子と寅さんが花摘みに興じて戯れるメルヘン風のシーンがある。仮に他の女優が演じたら、凡庸かあるいは無残で見てはいられないシーンになっても不思議ではないが、吉永小百合が演じるとその魅力がさらに輝きを増す。本作の山田監督は、美しい女優を美しく見せることをシンプルに追求しており、シリーズ中もっともマドンナという呼称がふさわしいマドンナとなっている。

その意識は脚本にも影響を与えているようだ。マドンナは父親(宮口精二)との関係に悩むが、そこに生活感やリアルさはほとんどない。流れ星を見ながらの失恋というロマンチックなシーンにも顕著なように、作品全体が「吉永小百合姫」を中心とするお伽話のような趣である。

初期作品に見られた粗々しさは、作品を重ねるごとにグラデーションを描くように変質し、本作ではいよいよ愛される寅さんの領域に達している。初期寅さんファンには物足りなさも残るが、シリーズはいよいよ国民的映画としての第一歩を踏み出すことになったのだ。

なお、TVドラマ版からおいちゃん役を演じた森川信の死去により、本作から松村達雄が2代目おいちゃんとして登場する。寅さんとの掛け合いには漫才のような面白さがあり、キャスト変更によるパワーダウンは微塵も感じられない。吉永小百合を中心とした、華やぎのある作品に上手く溶け込んでいる。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第9作「男はつらいよ柴又慕情」作品データ

公開1972年(昭和47年)8月5日
上映時間107分
主な出演者【車寅次郎】渥美清
【諏訪さくら】倍賞千恵子
【高見歌子】吉永小百合
【高見修吉】宮口精二
【みどり】高橋基子
【まり】泉洋子
【車竜造】松村達雄
【車つね】三崎千恵子
【諏訪博】前田吟
【桂梅太郎】太宰久雄
【川又登】津坂匡章
【源公】佐藤蛾次郎
【御前様】笠智衆
【1件目の不動産屋】青空一夜
【2件目の不動産屋】桂伸治
【3件目の不動産屋】佐山俊二
同時上映祭りだお化けだ!全員集合!!(ザ・ドリフターズ)
観客動員数188万9,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Dear Old Home

「男はつらいよ」全作品解説リンク

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