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寅さん全作品解説/第8作 『男はつらいよ寅次郎恋歌』(1971年12月公開)

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本作をひとことで言うと

漂泊と定住

「漂泊と定住」というテーマが明確な第8作。名優・志村喬による「りんどうの花」、旅芸人一座と寅さんのラストシーンなど、シリーズ屈指の名場面が満載。もはやただの喜劇作品とはいえない、重厚さすら感じさせる作品。本作ではフラれる前に自ら身を引き旅に出る”フラれない寅さん”も誕生する。

マドンナ

池内 淳子(当時 38歳)

役名:六波羅貴子
職業:喫茶店ロークの女主人

重ねた苦労が外面ににじみ出る女主人役を池内淳子が好演。今回の寅さんは、”薄幸な女性に尽くす”という古いヤクザ映画のパロディともいえる奮闘を見せており、その中心を担うマドンナとしてはぴったりのキャスティング。

第8作「男はつらいよ寅次郎恋歌」評論

「漂白と定住」というテーマ性が明確な、重厚感すら漂う名作

順調に作品を重ねる『男はつらいよ』だったが、第5作『望郷篇』の時点ですでにマンネリを懸念されていたという。

山田洋次「話として単純なんで会社じゃ心配して五作目ぐらいから少し変化をつけろっていいましてね。」

『映画をたずねて 井上ひさし対談集』138p

マンネリ懸念に対する回答か、第5作以降の作品では毎回少しづつ新たな試みがトライされる。そしてこの第8作では、後のシリーズ作品に大きな影響を与えるあるひとつの変化が寅さんに起きることになる。

今回の寅さんは、博の父・飄一郎(志村喬)からの薫陶を受け、家族と寄りそって暮らす定住生活に憧れを持つ。未亡人であるマドンナ貴子(池内淳子)と出会い、彼女とその暮らしを実現したいと願うが、放浪者と定住者の看過できない価値観の違いを悟り、貴子の元を去り旅に出る。

これまでの作品では、一方的な恋心を派手に打ち砕かれる失恋がほとんどだったが、本作の寅さんは己の分をわきまえて自ら身を引いていく。失恋は失恋なのだが、”フラれない寅さん”がここに誕生するのだ。

本作品はテーマ性が強いことも特徴で、そのテーマは「漂泊の悲哀と、定住への憧れ」といえる。この主題を軸としながら、それぞれの登場人物がおりなす印象的な名シーンが豊富にあり、話の筋よりもそれぞれの名場面で本作を記憶しているファンも多いのではないか。

なかでも、名優・志村喬による語り「りんどうの花」は物語展開上のキーポイントでもあり、作品に重厚なトーンを与えている。セリフ自体なんてことないのだが、志村喬の存在自体の重みにより、寅さんの生き方をコロリとかえてしまうほどの薫陶として成立しているのがすごい。

そして、この志村の名演を逆手にとり、重みゼロの寅さんが100%受け売りで語る「寅さん版・りんどうの花」を作り上げたアイデアはお見事。寅さんととらや一同のやり取りが実に楽しい。

冒頭とラストに登場する、寅さんと旅芸人・坂東鶴八郎一座とのふれあいも印象深い(坂東鶴八郎一座はつづく作品にも何回か登場する)。漂泊の悲しみに負けず、肩を寄せ合いながら旅をつづけるラストシーンはシリーズベストのヌケの良さであり、もはやただの喜劇作品とは言えない重厚な演出が続く本作に鮮やかな幕引きをもたらしている。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第8作「男はつらいよ寅次郎恋歌」作品データ

公開1971年(昭和46年)12月29日
上映時間113分
主な出演者【車寅次郎】渥美清
【諏訪さくら】倍賞千恵子
【六波羅貴子】池内淳子
【諏訪飈一郎】志村喬
【諏訪家の長男・毅】梅野泰靖
【諏訪家の次男・修】穂積隆信
【学(貴子の息子)】中沢祐喜
【板東鶴八郎一座の座長】吉田義夫
【大空小百合】岡本茉利
【車竜造】森川信
【諏訪博】前田吟
【御前様】笠智衆
【車つね】三崎千恵子
【満男】中村はやと
【桂梅太郎】太宰久雄
同時上映春だ!ドリフだ!全員集合!!(ザ・ドリフターズ)
観客動員数148万1,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Love Call

「男はつらいよ」全作品解説リンク

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