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寅さん全作品解説/第48作『男はつらいよ寅次郎紅の花』

男はつらいよ 寅次郎紅の花〈シリーズ第48作〉 4Kデジタル修復版 [Blu-ray]
本作をひとことで言うと

そして、奇跡の大団円

満男の恋の相手に泉(後藤久美子)が復帰、マドンナには寅さん最愛の人リリー(浅丘ルリ子)が23作ぶりに登場し、ファン待望のキャストが揃った第48作。公開の翌年、渥美清の死去によって事実上のシリーズ最終作となってしまうが、万が一を想定した山田洋次の作品づくりのためか、シリーズ完結篇としても見事に成立している奇跡の作品。

マドンナ

浅丘 ルリ子(当時 55歳)

役名:リリー松岡
職業:元・旅回りの歌手

浅丘ルリ子はリリー役でシリーズ最多となる4度目のマドンナ出演。前回登場から15年の間に、リリーは年上の男と結婚そして死別し、現在はその遺産で悠々自適に暮らす未亡人という設定に。劇中で寅さんに浴びせる啖呵「つっ転ばしてグニャチンで、トンチキチンのオタンコナス!」が最高。

第48作「男はつらいよ寅次郎紅の花」評論

さよならの予感が導いた、奇跡のハッピーエンド

さあ、いよいよ寅さんシリーズ最終作『紅の花』である。本作では満男の恋の相手として3作ぶりに後藤久美子が登場、さらに過去3回マドンナ出演し、寅さんと抜群の相性でファンを楽しませてきたマドンナ・リリー(浅丘ルリ子)も登場する。

二人はこれからどうなるの?とファンをやきもきさせてきた2つのカップルが、加計呂麻島と柴又を舞台にいよいよ結ばれる。砂浜でじゃれる満男と泉、それを見守る寅とリリー。クライマックスとなる砂浜シーンの多幸感をぜひお楽しみいただきたい。

本作の幸せな結末が成立した背景には、渥美清の深刻な体調不良があったに違いない。山田洋次監督は本作公開の翌年、渥美清に捧げた弔辞でこう述べていた。

「5年前に渥美さんの病気を知り、予断を許さないのは知っていました。体の衰えが目立ち始めて、小島の急な坂を登る時はとても辛そうだった。この時、この陽気な男が映画から手を引く日も近いと思っていました」。

渥美清が元気なうちに、寅さんシリーズに残された課題を解決しておきたい──本作製作前に、山田監督がそう考えたことは想像に難くない。

消化不良のまま終わっていた満男と泉の関係に落とし前をつけ、寅さん最愛のマドンナ・リリーのその後を描き、さらには我らが寅さんの恋愛恐怖症も克服してしまおう。仮に本作が最後の寅さん映画となっても、誰もが晴れやかな気持ちでその終焉を受け入れられるように──。こうした意図が、本作のキャスティングと幸せな結末を導いたとみて間違いないだろう。

注目すべきは寅さん最後のセリフ「本当にみなさんご苦労さまでした」である。本作が渥美清の遺作となり、寅さんシリーズが終焉したこと知る後年の私たちにとって、このセリフに宿る意味は重い。この一言は、車寅次郎という架空の人物に役者人生の大半を捧げた俳優・渥美清に向けてこそ捧げられるべき一言である。

ある人は言った。「『紅の花』は単体の映画作品ではなく、48節に分割された長い長い1本の映画のラストシーンである」と。またある人は言った。「寅さんシリーズは、車寅次郎の奮闘努力を描いたフィクションであると同時に、長い年月をかけて変わりゆく日本の風景、そして、俳優・渥美清の人生を克明に収めたドキュメンタリー映画である」と。

寅さんシリーズを巡るこうした様々な視座、そして、俳優・渥美清の数奇な人生をまるごと包み込むかのように、神戸被災地の青年団がつくる踊りの輪──まさに「大団円」を遠景に映しながら、寅さんシリーズは長い長いシリーズの歴史に幕を閉じる。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第48作「男はつらいよ寅次郎紅の花」 作品データ

第48作「男はつらいよ寅次郎紅の花」 予告編

第48作「男はつらいよ寅次郎紅の花」 あらすじ

準備中

第48作「男はつらいよ寅次郎紅の花」 作品データ

公開1995年(平成7年)12月23日
同時上映サラリーマン専科(三宅裕司)
観客動員数170万人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san to the Rescue
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