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寅さん全作品解説/第17作『男はつらいよ寅次郎夕焼け小焼け』(1976年7月公開)

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本作をひとことで言うと

作品完成度シリーズNo.1

映画としての完成度はシリーズNo.1。寅さん初心者でも十分に楽しめる大傑作。あっと驚く意外性のあるストーリーは出色の出来栄えで、寅さんと老人のやり取りにはバディムービー的な趣もある。作品には珍しく悪役が登場するが、悪との決着は極めて男はつらいよ的であり、”勝たない”ラストが深い感動をもたらす。

マドンナ

太地 喜和子(当時 33歳)

役名:ぼたん
職業:芸者

いつもならマドンナを前にドギマギしてしまう寅さんも、今回のマドンナぼたん相手には「世帯を持とうな!」と珍しく軽口も叩ける。二人は仲のいい友だちのようで、あはは!と笑い合う姿は見ていて実に心地よい。次々と変わる粋な着物姿と、クシャクシャの笑顔が印象的なマドンナ。

第17作「男はつらいよ寅次郎夕焼け小焼け」評論

意外性あるストーリーで紡ぐ“日本的バディームービー”の大傑作

第17作『寅次郎夕焼け小焼け』は、単体映画として極めて完成度が高い。男はつらいよを見たことがないという人でも、シリーズ映画という前提を抜きにして十分楽しむことができる作品だ。

高い完成度を支えているのが、観客をあっと驚かせる意外性のあるストーリー。寅さんは先の展開が読める安心感が逆に魅力であり、ネタバレを用心する必要がそもそもないのが特徴。しかし、本作はシリーズ初のネタバレ注意作品といってもよく、予備知識の少ない方がより作品を楽しめるだろう。

本作は、寅さんとマドンナぼたん(太地喜和子)、寅さんと老人(宇野重吉)、この二つの関係を軸に物語が進んでいく。

龍野芸者のぼたんと寅さんは相性がよく、「いつか所帯を持とうな!」という冗談も飛び出すほどにウマがあう。しかし、二人の間には恋愛感情がほとんどないため、寅さんが失恋して旅に出るといういつものお約束に着地することがない。それゆえに、本作のドラマティックな結末に通じる伏線を張ることができたともいえる。

もう一人ドラマの結末に大きく関与するのが、名優・宇野重吉が演じる老人=池ノ内青観だ。ボロを着た青観の正体が明らかになるプロセスは出色の出来で、フーテンのテキ屋とその道の大家は、お互いの社会的地位に関係なく意気投合してしまう。

やがてぼたんの身に起こるトラブルがきっかけで二人は仲違いをするが、ぼたんを思う寅さんの熱い気持ちは静観の心を揺り動かし、大団円のラストに向けて集束していく。離れた場所にいる二人は言葉を交わすことはできないが、その友情に余計なセリフや説明は野暮というものだろう。本作は寅さん版バディムービーということもできるのだ。

男はつらいよシリーズには悪がほとんど登場しないが、本作にはわかりやすい悪役が登場する。この悪を直接的に打ち負かすことはないのだが、ただ敵をこらしめるよりもっと豊かな勝利を登場人物たちは手にすることができる。この「勝たない」ラストこそ男はつらいよシリーズの真骨頂である。

よく練られた脚本はハリウッド映画のようでもあるが、「勝たない」ラストがもたらすカタルシスはハリウッドとは全く別種のものだ。人とのつながり、厚い友情がもたらす深い感動を描いた、日本が誇る傑作映画である。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第17作「男はつらいよ寅次郎夕焼け小焼け」 作品データ

公開1976年(昭和51年)7月24日
上映時間109分
主な出演者【車寅次郎】渥美清
【諏訪さくら】倍賞千恵子
【ぼたん】太地喜和子
【池ノ内青観】宇野重吉
【志乃】岡田嘉子
【観光課長】桜井センリ
【観光係員・脇田】寺尾聡
【鬼頭】佐野浅夫
【大雅堂主人】大滝秀治
【車竜造】下條正巳
【車つね】三崎千恵子
【諏訪博】前田吟
【桂梅太郎】太宰久雄
【御前様】笠智衆
【源公】佐藤蛾次郎
【満男】中村はやと
同時上映忍術猿飛佐助(財津一郎)
観客動員数168万5,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Sunrise and Sunset

「男はつらいよ」全作品解説リンク

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