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寅さん全作品解説/第16作『男はつらいよ葛飾立志篇』(1975年12月公開)

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本作をひとことで言うと

寅さん、向学心に燃える

寅さんが学問の道を志す第16作。無学ながら本質を突いた言葉でインテリを感化してしまうくだりは痛快の面白さ。伊達メガネに至っては爆笑必至。寅さんの喜怒哀楽を豊かに描くテンポのよい脚本を得て、渥美清の至芸はいよいよ冴え渡る。ユーモアとペーソスの押し引きも実に巧みな、シリーズ中期の名作。

マドンナ

樫山 文枝(当時 34歳)

役名:筧礼子
職業:大学の考古学研究室助手

世間ずれしていない暖かな雰囲気のマドンナ。恩師・田所教授へのお世話ぶりや、寅さんへの優しい態度を見るに、男ウケがかなりいいタイプなのでは。樫山文枝の父は大学教授、祖父はあのオンワード樫山の創業者だというから、本作の役柄に近い育ちの良さである。

第16作「男はつらいよ葛飾立志篇」解説・評論

渥美清の奔放な演技を堪能できる、隠れた名作

第16作『葛飾立志篇』は、男はつらいよ人気投票における上位の常連作品ではない。しかし、本作は中期作品群の中でもかなり完成度の高い作品である。個人的には名作の評価高い15作目『相合い傘』17作目『夕焼け小焼け』に全く引けを取らない、寅さんシリーズ中期の傑作だと思う。

本作は寅さんを中心に展開していくエピソードが非常に多く、彼の喜怒哀楽がストレートに表出される。つまり、渥美清が持つ豊富な演技の引き出しの中から、様々な技がこれでもかと繰り広げられるのだ。寅さんシリーズの面白さを第一に主演・渥美清においている人にとって、本作は心ゆくまで彼の芸を堪能できる作品である。

今回の寅さんは、自身の無学を嘆き一念発起、学問の道を志す。きっかけは、寅さんを実父だと思いとらやを訪ねてきた少女(桜田淳子)と、その母であり寅さんのどん底時代を救った恩人・お雪さんの人情話。寅さん版「あしながおじさん」ともいえる心を温めるエピソードで、導入としては申し分ない。

その後、学問を志す寅さんの前に現れるのが、大学教授助手のマドンナ礼子(樫山文枝)と、その師である田所教授(小林桂樹)だ。無学でバカだともっぱら評判の寅さんが、物の道理をわきまえた簡潔な言葉でインテリ二人を見事に感化してしまうくだりには、痛快さを伴う面白さがある。

爆笑必至なのは「頭がいい=メガネ」という短絡すぎる思考が生み出した、寅さんのインテリメガネ姿。これはぜひ本編をご覧頂きたいが、御前様のマネをしながら、メガネ姿を笑う源公を「達磨じぇんし!」と叫んで蹴飛ばすシーンは無類のおかしさである。

アドリブによる言い回しの妙など、細かなものまで上げ出したらキリがないが、縦横無尽に繰り広げられる渥美清の芸を心ゆくまで堪能できるのが本作品最大の魅力である。

テンポのよい脚本には、要所要所できっちりと”泣き”の要素も押さえられており、ユーモアとペーソスの押し引きも実に巧み。極めつけは、どでかい富士山をバックに寅さんと田所教授が旅を続けるラストシーン。

哀しみのあとに訪れる晴れやかな後味はシリーズ独特のもので、やっぱり『男はつらいよ』はこうでなくっちゃ!と再認識させられる大満足作品である。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第16作「男はつらいよ葛飾立志篇」 作品データ

公開1975年(昭和50年)12月27日
上映時間100分
主な出演者【車寅次郎】渥美清
【諏訪さくら】倍賞千恵子
【筧礼子】樫山文枝
【田所教授】小林桂樹
【最上順子】桜田淳子
【住職】大滝秀治
【お巡りさん/夢の中の紳士】米倉斉加年
【車竜造】下條正巳
【車つね】三崎千恵子
【諏訪博】前田吟
【桂梅太郎】太宰久雄
【源公】佐藤蛾次郎
【満男】中村はやと
【御前様】笠智衆
同時上映正義だ!味方だ!全員集合!(ザ・ドリフターズ)
観客動員数213万1,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san, the Intellectual

「男はつらいよ」全作品解説リンク

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