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寅さん全作品解説/第10作『男はつらいよ寅次郎夢枕』

本作をひとことで言うと

寅さん、告白される

寅さんがマドンナをフる初パターンが成立する本作。温かみのあるマドンナを八千草薫が好演、幼なじみの関係を軸にした微笑ましい作風に貢献している。寅の意地悪なインテリいじりも楽しいが、なんといっても八千草薫の切ない告白シーンが最大の見どころ。シリーズ初の「恋の切なさ」を感じさせる作品。

マドンナ/八千草薫

役名:志村千代(美容院の女主人)

寅さんシリーズには好き嫌いの別れるマドンナも多いが、本作のマドンナ・お千代坊を「嫌いだ」というファンにお目にかかるのはちょっと難しい。あの優しさ、温かみはきっと八千草薫本人の人柄からにじみ出ているもの。

第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」評論

男はつらいよシリーズ初めての「恋の切なさ」を感じさせる作品

第8作『寅次郎恋歌』では、フラれる前に自ら身を引く”フラれない寅さん”という新しいパターンが確立された。

本作『寅次郎夢枕』でも、寅さんの恋の顛末に新たなバリエーションが生まれる。”フラれない”どころか、”マドンナをフる寅さん”がいよいよ誕生するのだ。シリーズのお約束ごとを踏まえながらも、寅さん映画に新風をもたらさんとする山田洋次の血の滲むような努力の跡がうかがえる。

本作の立役者は、なんといってもマドンナ千代を演じる八千草薫だろう。上品で清純、おっとりとした微笑みには陽だまりのような優しさがあり、シリーズ中もっとも人好きのするマドンナといってもいい。

寅さんと千代は幼なじみで、再会後すぐに「寅ちゃん」「お千代坊」と呼び合い意気投合する。千代ととらや一同はご近所であり、お互いの店を気軽に行き来しあう付き合いもある。このホームドラマのような設定と、八千草薫の愛嬌ある美しさがぴたりとハマり、作品には可愛らしい雰囲気が満ち溢れている。

見どころはなんといっても、寅さんがマドンナをフってしまうクライマックスシーンだ。

八千草薫が揺れ動く女心を、絶妙な表情で演じる。可愛らしくいじらしい少女のような姿を見せたかと思えば、情念を感じさせる女の表情で寅さんの気持ちにぐぐっと迫る。その迫力に怖気づいた寅さんを見るや今度は一転、あきらめと優しさの入り混じった悲しげな表情を見せる。

千代の感情を、手すりの木目を指でなぞる仕草で表現する演出もお見事。泣いたりわめいたり、学芸会のような恋愛映画の対極をゆく、演者と演出の力が結集された素晴らしいシークエンスだ。

男はつらいよは、寅さんの恋愛を中心とするストーリーであるにもかかわらず、これまで「恋の切なさ」とは、まるで無縁の映画シリーズであった。しかし、本作では八千草薫の名演の甲斐あって、これまでのシリーズ作品では皆無に近い「恋の切なさ」が生まれている。その切なさは、涙がじわりと滲むか滲まないか程度のあっさりしたものだが、極上のダシがきいたお吸い物をいただくかのような味わいがある。

マドンナお千代に惚れてしまう、大学教授・岡倉先生(米倉斉加年)をいじめ倒すいじわる寅さんも見どころ。演者全員が勢いに乗っており、シリーズの上り調子がまだまだ続くことを予感させる作品だ。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」作品データ

第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」予告編

第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」あらすじ

準備中

第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」作品データ

公開1969年(昭和44年)8月27日
同時上映『喜劇・深夜族』(伴淳三郎)
観客動員数54万3000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題It’s Tough Being a Ma
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