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寅さん全作品解説/第31作『男はつらいよ旅と女と寅次郎』(1983年8月)

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本作をひとことで言うと

寅さん版ローマの休日

当時の人気演歌歌手・都はるみをフィーチャーした第31作。心労から突如失踪した都はるみが寅さんとつかの間の休日を楽しむ「寅さん版ローマの休日」ともいえる作品。劇中では彼女の歌唱をたっぷりと楽しむことができる。さしづめ「都はるみの新宿コマ劇場公演with寅さん」といった風情の作品である。

マドンナ

都 はるみ(当時 35歳)

役名:京はるみ
職業:演歌歌手

都はるみは本作の翌年「普通のおばさんになりたい」と突如引退宣言をする。本作にはそんな彼女の苦悩が反映されていたのかもしれない。映画本篇では『涙の連絡船』『アンコ椿は恋の花』など彼女のヒット曲をたっぷり楽しむことができる。

第31作「男はつらいよ旅と女と寅次郎」評論

さしずめ「都はるみの新宿コマ劇場公演 featuring 寅さん」

男はつらいよシリーズには、現実離れした突拍子もない設定の作品がいくつかある。寅さんが旅先でスター演歌歌手・都はるみに出会う第31作『旅と女と寅次郎』は、そのパターンの典型的な作品といえる。(※作品の中では「京はるみ」という役名になっているが、京はるみは都はるみとほぼ同じキャリアの設定で、なおかつ、都はるみの持ち歌がバンバン登場するので、本記事ではあえて「都はるみ」とする。)

仕事の過密スケジュールに加え、恋人との私生活がうまくいかないマドンナ都はるみは、心労から全国ツアーの真っ最中に突然失踪する。その後、ひょんなことから寅さんに出会うが、世事に疎い寅さんは相手が天下の大スターだとは露知らず、いつもの調子で”傷心のワケあり女”に優しく接する。

寅さんの飾らない態度は、やがてはるみの心をほだしていき、彼女は本来の自分を取り戻す。はるみは素性を隠しながら寅さんとつかの間の休日を楽しむのであるが、その点では「寅さん版ローマの休日」ともいえる作品である。

「もしも寅さんが都はるみに出会ったら」という着想一本勝負の作品であるため、ストーリーにはあまり語るべきことがない。せめて演技に見るべきものがあればよいのだが、都はるみにオードリー・ヘプバーンを求めるのはやはり酷である。彼女はあくまで演歌歌手であり、素人臭さの残る演技はプロ俳優たちの中でやや浮いている。

クライマックスこそ都はるみの本業である歌唱シーンとなるのだが、そこに至るまでの物語が弱いため、第24作『寅次郎わが道をゆく』のように、ラストソングに向けてすべてが集約していくような感動が薄い。「都はるみ」を題材にしたアイデアまではよかったが、マドンナ女優としての力量が問われる映画というフォーマットでは、彼女の良さを生かしきれなかった。本作がもし、座長・都はるみによる歌謡演劇であったならば、印象はガラリと違っただろう。都はるみも伸び伸びと芝居を楽しめたはずである。

しかしながら、演歌ファン、都はるみファンにとっては豪華な作品といえるだろう。劇中では『アンコ椿は恋の花』『涙の連絡船』など彼女のヒット曲をはじめ、寅さんとのアカペラデュエットによる『矢切の渡し』や、『佐渡おけさ』など数々の歌が楽しめる(チョイ役だが細川たかしも出演)。

映画としてやや物足りなさは残るが、盆暮れなどの機会に、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に楽しむ作品としてはいい塩梅の作品である。年配の寅さんファンへのプレゼントとしてもおすすめできる作品だ。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第31作「男はつらいよ旅と女と寅次郎」 作品データ

公開1983年(昭和58年)8月6日
上映時間101分
主な出演者[車寅次郎]渥美清
[諏訪さくら]倍賞千恵子
[京はるみ]都はるみ
[京はるみの事務所の社長]藤岡琢也
[京はるみの事務所の従業員]桜井センリ
[京はるみのマネージャー吉岡]ベンガル
[京はるみの付き人]木ノ葉のこ
[矢切の渡しで逃げる男]細川たかし
[車竜造]下條正巳
[車つね]三崎千恵子
[諏訪博]前田吟
[桂梅太郎]太宰久雄
[源公]佐藤蛾次郎
[諏訪満男]吉岡秀隆
[御前様]笠智衆
同時上映いとしのラハイナ(アパッチけん)
観客動員数151万1,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Song of Love

「男はつらいよ」全作品解説リンク

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