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寅さん全作品解説/第33作『男はつらいよ夜霧にむせぶ寅次郎』

本作をひとことで言うと

私たちの知らない”裏社会の寅さん”

タイトル通り、どこか霧に覆われたような暗さを持つ作品。数十年ぶりに寅さんの弟分・登も登場するがそこに明るさはなく、むしろ寅さんの後悔そして懺悔に焦点が当てられる。マドンナをめぐって対峙するトニーとの語らいは、裏社会に生きる寅さんの素顔が垣間見えるシリーズ唯一のシーン。通好みの作品。

マドンナ/中原理恵

役名:小暮風子(美容師)

中原理恵は1978年『東京ららばい』で歌手デビュー。TV番組『欽ドン!良い子悪い子普通の子』でお茶の間の人気者となり、その後は女優・歌手として活躍。マドンナ風子は、寅さんにとって恋愛対象というより、危なっかしい生き方を支えてあげたい庇護の対象だったかもしれない。

第33作「男はつらいよ夜霧にむせぶ寅次郎」評論

裏社会に生きる寅さんの素顔が垣間見える、通好みの作品

第33作『夜霧にむせぶ寅次郎』は、寅さんの後悔そして懺悔をテーマにした作品だと個人的には思う。本作をより深く味わうにはシリーズの過去作品に触れておく必要があるため、シリーズ入門者にはややお薦めしづらい、通好みの作品と言えるかもしれない。

物語はシリーズファンにはおなじみのあの人の登場から始まる。初期作品の準レギュラーで、寅さんの弟分である登(秋野大作)である。

登との再会そして意気投合は過去何度も繰り返されたおなじみのパターンで、シリーズファンならば懐かしさに胸が踊る。しかし、登がいまや堅気になったと見るや、寅さんは過去の友情とは冷徹に一線を引く。二人の昔を知っていればなおさら際立つ寅さんのダンディズムが格好いい。

その後、寅さんはフーテンを名乗るマドンナ風子(中原理恵)と出会う。風子は寅さんと一緒に旅をしたいとせがむが、寅さんは定職につき真面目に暮らせと彼女を諭す。このシーン、熱心なファンなら寅さんが妹さくらに説教される第5作のシーンを想起することだろう。若くて、ギラギラして、やぶれかぶれだった昔の寅さんを知っていればこそ、悔恨とともに我が人生を振り返る寅さんにしみじみとしてしまう。

「まだやってんのかいこんなこと」。寅さんと再会した登はこう言った。確かにその商売や外見は十年前とほとんど変わらない。しかし彼の内面は、登と陽気につるんでいた初期作品の頃から大きく変化している。 さくらの説教を反芻できるほどに覚えていながら、 ヤクザな自分を変えようとする涙ぐましい奮闘努力は回を重ねるごとに薄れていった。相変わらずのテキ屋稼業に身をやつす暗い表情の寅さんには、変われない自分への諦念すら垣間見える。

しかし、その諦念によって寅さんが自暴自棄に陥ってしまうわけではない。かつての弟分・登や、マドンナ風子に対する行為は、これまで自分が堅気の人間に散々かけてきた迷惑に対する彼なりの罪滅ぼしなのだろう。本作のテーマを「無頼を気取ってきたフーテン男の悔恨そして懺悔」として捉えれば、作品をより深く理解できることだろう。

本作最大の見どころは、同業者であるトニー(渡瀬恒彦)との対峙シーン。風子から手を引けと穏やかに凄む寅さんは、私たちがこれまで一度も見たことのない裏社会に生きる寅さんの顔をしている。鮮やかな青空の下、波打ち際で静かに語り合う二人の姿は詩的ですらある。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第33作「男はつらいよ夜霧にむせぶ寅次郎」 作品データ

第33作「男はつらいよ夜霧にむせぶ寅次郎」 予告編

第33作「男はつらいよ夜霧にむせぶ寅次郎」 あらすじ

準備中

第33作「男はつらいよ夜霧にむせぶ寅次郎」 作品データ

公開1984年(昭和59年)8月4日
同時上映ときめき海岸物語(富田靖子)
観客動員数137万9,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Marriage Counselor Tora-san
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