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寅さん全作品解説/第21作『男はつらいよ寅次郎わが道をゆく』(1978年8月公開)

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本作をひとことで言うと

若き鉄矢の野暮ったさ!

結婚か?仕事か?で揺れ動くショーガールの人生を描く第21作。かつて実在した松竹歌劇団のショー風景を織り込むなど華やかな印象の作品で、マドンナ奈々子(木の実ナナ)のラスト公演に向けて盛り上がるプロセスは見事。渥美清と、野暮ったさ丸出しの田舎青年演じる若き日の武田鉄矢の珍師弟コンビは爆笑必至。

マドンナ

木の実 ナナ(当時 32歳)

役名:紅奈々子
職業:松竹歌劇団スター

ミュージカルを中心に舞台女優として出世してきた木の実ナナらしい役柄。どちらかというと古風なマドンナが多いシリーズの中で、彫りの深い顔立ち、派手な服装、大振りな仕草は異彩を放っている。

第21作「男はつらいよ寅次郎わが道をゆく」解説・評論

ショーガールの人生を描く、華やかなコメディ作品

男はつらいよには毎作品マドンナとゲスト俳優が出演するのが恒例。この第21作『寅次郎わが道をゆく』には、寅さんと絶妙な珍コンビぶりを見せる印象深いゲストが登場する。

そのゲストとは、本作の前年1977年に俳優デビューをしたばかりの武田鉄矢。本業のフォークバンド「海援隊」が鳴かず飛ばずの時期に、山田洋次監督に俳優として見出され、彼はデビュー作『幸福の黄色いハンカチ』でいきなりアカデミー最優秀助演男優賞を射止める。つづく二作目の映画出演となったのが本作である(ちなみに金八先生の大ヒットは本作の翌年)。

彼が演じる留吉の登場シーンには口琴による「ビヨンボヨ~ン」というマヌケなBGMが流れ、田舎青年の野暮ったさ丸出しで寅さんと繰り広げる師弟関係はまさにおかしさの極み。この頃の鉄矢には新人らしい必死さがあり、また必死になればなるほどさらにコミカルになるという、俳優として実に稀有な才能が開花していた。

「力強い見事なタッチですよ~!」「あげな男のどこがよかか~!?」「国際劇場のレビューば見たかあ~!」など、方言まる出しのイキんだシャウトには爆笑必至。今とはまるで別人である若き鉄矢の熱演は本作の見どころのひとつである。

この珍師弟コンビの一方で、作品の中心となるのが松竹歌劇団(SKD)の看板スター・紅奈々子(木の実ナナ)を巡る物語だ。

SKDは、かつて宝塚歌劇団と並び称されるほどの隆盛を誇った実在の歌劇団。本作には今はなき浅草国際劇場の風景やショーの様子がフィーチャーされており、全盛期のSKDを伝える貴重な映像資料にもなっている。

マドンナ奈々子は舞台スタッフの宮田(竜雷太)に求婚されているが、SKDの慣例として結婚とはすなわち退団を意味する。結婚と仕事の間で揺れ動きながらも、新しい人生を選び取るプロセスが、彼女の引退公演に向けて集束していく流れは見事だ。

クライマックスは奈々子がショーガールとしての半生を振り返る『道』というオリジナル曲の熱唱シーン。その晴れ姿を客席からそっと見守り、想いを秘めて旅立つ寅さんの後ろ姿が泣かせる。

華やかさ溢れるメインストーリーに、寅と留吉のコミカルな師弟関係が巧みに絡み合い、良質コメディに仕上がっている本作。夢のシーンにおける「異星人寅さん」や、「寅さんのとらや再建計画」など見どころも豊富だが、個人的見どころはやはり若き日の鉄矢の熱演、これに尽きる。

日本映画史に残るあの野暮ったさは、後にも先にも、あの頃の鉄矢にしかできないのだから。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第21作「男はつらいよ寅次郎わが道をゆく」 作品データ

公開1978年(昭和53年)8月5日
上映時間107分
主な出演者[車寅次郎]渥美清
[諏訪さくら]倍賞千恵子
[紅奈々子]木の実ナナ
[後藤留吉]武田鉄矢
[宮田隆]竜雷太
[留吉の母]杉山とく子
[松竹歌劇団]松竹歌劇団
[車竜造]下條正巳
[車つね]三崎千恵子
[諏訪博]前田吟
[桂梅太郎]太宰久雄
[御前様]笠智衆
[源公]佐藤蛾次郎
[満男]中村はやと
同時上映俺は田舎のプレスリー(勝野洋)
観客動員数189万7,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Stage-Struck Tora-san
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