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寅さん全作品解説/第4作『新・男はつらいよ』(感想・評論・あらすじ・出演者)

本作をひとことで言うと

寅さんハワイに行く?

前作に続き山田洋次以外がメガホンを取る4作目。本作は大慌てでの製作によりほとんどロケがなく、柴又でのドタバタに力点が置かれたTVドラマ的な作風。おいちゃん・タコ社長のキャラは冴え渡り、寅さんの失恋そして回復までの流れも盤石の安定感。人情味は薄いが、ハワイ騒動などたっぷり楽しめる喜劇作品である。

マドンナ/栗原小巻

役名:宇佐美春子(幼稚園の先生)

父親となんらかの確執があったと想像させるが、詳細不明のためいまひとつ感情移入できないマドンナ春子さん。しかし、上品な仕草には可愛らしさが満ち溢れ、「コマキスト」と呼ばれる熱狂的男性ファンの存在にも納得させられる。

目次

第4作「新・男はつらいよ」感想・評論

柴又のドタバタをたっぷり楽しめるテレビドラマ風の良質喜劇

TVドラマから映画化された男はつらいよは、続く2作『続・男はつらいよ』3作『フーテンの寅』でもそこそこの興行成績をあげ、いよいよ第4作『新・男はつらいよ』が製作されることになる。

小林信彦『おかしな男』でも指摘されているが、わずか半年の間に4作目まで封切られる超ハイペース。コンスタントにヒットする作品が他に何もなかった、松竹の苦しい台所事情がうかがえる。

【各作品の公開年月日】

1. 男はつらいよ (1969年8月27日)

2. 続・男はつらいよ (1969年11月15日)

3. 男はつらいよ フーテンの寅 (1970年1月15日)

4. 新・男はつらいよ (1970年2月27日)

『おかしな男』/小林信彦 286pより

本作は、TVドラマ版『男はつらいよ』の演出家である小林俊一が監督を務める。シリーズにおいて山田洋次以外が監督を務めるのは第3作『フーテンの寅』と本作のみ。

大慌てでの製作だったためか、本作にはほとんどロケがない。つまり、悠々と旅をする寅さんの描写が一切ないのだ。名古屋競馬場でひと山あてる寅さんこそあるが、それ以外はほとんどが柴又ロケかスタジオ撮影。暗い密室のとらやに泥棒が忍びこむなど筋立てのせいでもあるが、本作は他の作品に比べてスケール感がない。寅さんを中心とする人間関係のドタバタに力点が置かれており、テレビドラマ風の作りになっている。

マドンナの笑顔を取り戻す、という人情的な味付けもあるがこれは少し弱い。マドンナ演じる栗原小巻の人物像にほとんど焦点があたらず、盛り上がらないからだ。

後年のシリーズ作品では、マドンナの苦悩や葛藤にしっかりと光をあてるため、寅次郎の奮闘努力も涙を誘うものになる。山田洋次ではない別監督による第3作と本作は、その後の『男はつらいよ』が長く愛される人気シリーズになった理由を作品を通じて示してくれる。

しかし、喜劇作品としてはとびきりに楽しい本作。空気を読まない(読めない?)タコ社長のガサツさや、寅さんに怯える森川おいちゃんの狼狽ぶりはいよいよ冴え渡る。寅さんの失恋、そして回復までの流れも盤石の安定感。

1作目から4作目まで続けてみた人にとっては、ここらですっかり「ああもっと寅さんを観たい!」という気持ちになっていることだろう。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 小林俊一 (監督)
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第4作「新・男はつらいよ」作品データ

第4作「新・男はつらいよ」 予告編

第4作「新・男はつらいよ」 あらすじ

寅さんこと車寅次郎(渥美清)は、峠の茶屋でバスを待ちながら、叔父・竜造(森川信)、叔母・つね(三崎千恵子)に何か手土産でも持って帰りたいと考えていた。バスが来ると茶屋のおばあちゃんにお茶代を払い、「釣りはいらねえよ」とカッコよく決めた寅さん。しかし、金額が足りずに恥をかいてしまう。バスに乗って旅を続ける寅さんを映して物語は始まる。

柴又帝釈天の参道にあるだんご屋・とらやでは、共栄印刷の社長・梅太郎(太宰久雄)が「競馬場で寅さんに会った」と噂話していた。この時の競馬で寅さんはツキまくり、100万円の儲けを手にしたのである。その直後、名古屋からタクシーを飛ばして寅さんが帰ってきた。寅さんは万札でぎっしりの財布を見せびらかし、竜造とつねをハワイ旅行に連れていくと宣言。寅さんは得意気な様子で旅行代金を旅行代理店の営業マンになっていた舎弟・登(津坂匡章)に支払った。

ハワイ旅行当日。ご近所連中が見送る中、いざ出発という時に、寅さんは旅行代金が持ち逃げされたことを登から耳打ちされる。恥をかきたくない寅さんは、ひとまず空港に向かい、ハワイに旅立ったことにしようと画策する。竜造、つねに加えて、送迎係の博(前田吟)もこの計画に巻き込まれることになった。

その日の深夜、寅さんたちはこっそりとらやに帰宅した。数日間隠れて暮らし、ハワイに行ったことにしようと考えていた矢先、そこに泥棒(財津一郎)が入ってきた。寅さんたちは泥棒を捕まえたが、警察を呼べば自分たちの居場所が周囲にバレてしまう。寅さんは仕方なく、泥棒に口止め料を渡して逃がすことにした。しかし、泥棒は結局警察に捕まり、とらやに人がいたことを白状してしまう。こうして寅さんたちの計画は失敗に終わった。面子丸つぶれの寅さんは、涙ぐみながら葛飾柴又を飛び出していった。

ひと月後、とらやに寅さんが帰ってきた。寅さんは、自分の部屋が他人に貸し出されていることを知って拗ねるが、下宿人が若くて美しい幼稚園の先生・春子(栗原小巻)と知った途端に態度が豹変。一つ屋根の下で春子と一緒に暮らせる喜びから、寅さんは浮かれ気分の毎日を過ごす。

ある日のこと。春子は、幼い頃に生き別れた父親が病で亡くなったと報せを受けた。春子は父親の友人・吉田(三島雅夫)から、死ぬ前に一度会ってやってほしいと頼まれていたが、その頼みを断り続けていたのだ。良心の呵責に苛まれた春子は、とらやで突然悲しみの涙を流してしまう。

なんとかして春子を元気づけたい寅さんは、博の助言に従い、春子に恋愛小説を贈ろうと考えた。寅さんが竜造にお薦めを尋ねると、竜造は小説「婦系図(おんなけいず)」を紹介した。身振り手振りで小説の内容を熱演する竜造と、それを涙ながらに聞く寅さん。2人のやりとりがあまりに滑稽で春子は大笑いをしてしまう。暗く沈んでいた春子が笑顔を見せたことで、寅さんは天にも昇る幸せな気持ちに包まれる。

しかし、そんな幸せは長くは続かない。春子には会沢(横内正)という恋人がおり、春子の部屋で2人が仲良く過ごしている時に、タイミング悪く寅さんが帰宅し、鉢合わせしてしまう。春子に恋人がいたと知った寅さんはショックでとらやを飛び出していく。

その日の夜遅く。寅さんの帰宅を戦々恐々と待っていた竜造とつねは、寅さんが帰宅した音を聞きつけると、寝たふりをしてやり過ごそうとする。寅さんは竜造とつねの枕元で別れの言葉を告げて、葛飾柴又を飛び出していった。

場面変わって、ここは機関車の車内。寅さんは乗り合わせた乗客に向けて、自分の身に降りかかったハワイ騒動の顛末を面白おかしく話して笑いを誘っていた。元気よく旅を続ける寅さんの笑顔を映して物語は幕を閉じる。

第4作「新・男はつらいよ」 出演者

第4作「新・男はつらいよ」主要キャスト

【車寅次郎】渥美清
【車さくら】倍賞千恵子
【宇佐美春子】栗原小巻
【車竜造】森川信
【車つね】三崎千恵子
【諏訪博】前田吟
【川又登】津坂匡章
【御前様】笠智衆
【源吉】佐藤蛾次郎
【桂梅太郎】太宰久雄
【泥棒】財津一郎
【蓬莱屋】佐山俊二
【弁天屋】二見忠夫
【会沢隆夫(春子の恋人)】横内正
【吉田(春子の父親の友人)】三島雅夫

第4作「新・男はつらいよ」その他キャスト

[峠茶屋のおばあちゃん]村瀬幸子/[郵便配達員]関口銀三/[旅行会社社長]浜村純/[朝日印刷の工員1]東光生/[警官]山本幸栄/[釣り人]北竜介/[参道の旦那]園田健二/今井健太郎/小田草之介/小森英明/[ご近所]城戸卓/[参道の旦那]高木信夫/[朝日印刷の工員2]市川達巳/川島照満/尾和義三郎/[ご近所]谷よしの/[ご近所]大塚君代/[朝日印刷の工員3]みずの晧作/大久保敏男/[ご近所]江藤孝/[朝日印刷の工員4]長谷川英敏/[朝日印刷の工員5]羽生明彦/[朝日印刷の工員6]石井愃一/[とらやの店員・友ちゃん]脇山邦子/[機関車の乗客1]水木涼子/[機関車の乗客2]後藤泰子

※配役や役名は、書籍「みんなの寅さん from 1969」(著・佐藤利明)を参考にさせていただきました。

第4作「新・男はつらいよ」作品データ

公開1970年(昭和45年)2月27日
同時上映アッと驚く為五郎(ハナ肇)
観客動員数48万5,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Grand Scheme
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