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寅さん全作品解説/第5作『男はつらいよ望郷篇』(1970年8月公開)

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本作をひとことで言うと

寅さん、勤労に励む

第3作第4作を別監督に譲った山田洋次がシリーズ完結の意気込みで作る渾身の一作。テンポのよいストーリーは映画脚本のお手本ともいえる出来栄え。圧巻は失恋シーンにおける渥美清、稀代の名演。第1作から積み上げられてきた作品の諸要素がいよいよシリーズものとして完成した屈指の名作。金字塔的作品。

マドンナ

長山 藍子(当時 29歳)

役名:三浦節子
職業:
美容師
TVドラマ版寅さんで妹さくら役をつとめた長山藍子がマドンナとして登場。若々しいミニスカートから溢れ出る肉感的な魅力は他のマドンナにはないもの。寅さんへの思わせぶりな態度はまさに悪女。節っちゃん、あんたワルい女やで~。

第5作「男はつらいよ望郷篇」感想・評論

「男はつらいよ」のシリーズ化を決定づける金字塔的大傑作

男はつらいよは、どの作品がお薦めでしょうか?──そう問われたら迷うことなくお薦めしたいのが本作『望郷篇』。初期作品の中では、第1作第2作と並ぶ文句なしの名作である。

3作4作を別の監督に譲った山田洋次。しかし、出来上がった作品にどうしても納得がいかない。当初意図した通りの世界観を描き切り、本作にてシリーズ有終の美を飾ろうとする山田監督の気合がこもった作品だ。

まず、映画の出来不出来を大きく左右する脚本が素晴らしい。映画とは、登場人物のドラマ上の欲求がいかに叶えられるかの物語であり、よい映画とは例外なくその欲求を叶えんとする過程における悪戦苦闘が面白いものである。

その意味で『望郷篇』の脚本はお手本ともいえる出来映えだ。「地道な暮らし」を求める寅さんの前に、次から次へと障害があらわれる。やれやれ一段落と思うと、すぐまた別の障害が巻き起こり、観客は息もつかせぬまま物語に惹きこまれていくのだ。

よい脚本を得て渥美清の演技もいよいよ冴え渡る。この稀代の喜劇役者の演技も本作品みどころの一つである。

テキ屋親分の息子を探す旅で見せる哀しみと、兄弟の盃を割る際のドスが効いた凄みは映画をギュっと引き締める。かと思えば一転、「労働に行ってくるからな!」と陽気なバカをクルクルと演じわける。

極めつけは、シリーズの中でも一二を争う見事なフラレっぷりを見せる失恋シーンだ。今回の失恋で寅さんは喜びの絶頂から急転直下絶望のどん底へ。それでもなんとか無理をして「顔で笑って腹で泣く」を貫こうとする。

見方によっては、今回のマドンナ節子は、自分が好きな男と一緒になるため、寅さんの好意を利用した悪女だと言うことができるかもしれない。いずれにしろ、寅さんが可哀そうなフラれ方をすることで、第3作『フーテンの寅』、第4作『新・男はつらいよ』ではあまり感じられなかった寅さんへの同情と共感が生まれており、長く愛されるシリーズに向けての変化が始まっている。

山田洋次が渾身の力を込めて放った本作品はやはり大ヒット。本作で完結するはずだった『男はつらいよ』は、こうして本格的なシリーズ化の道を歩むこととなる。

第1作から積み上げてきたシリーズとしての様々な試みはここに完成を迎え、シリーズ黄金時代の幕開けを告げる金字塔的な作品なった。文句無しの名作といえる。

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第5作「男はつらいよ望郷篇」作品データ

公開1970年(昭和45年)8月26日
上映時間88分
主要出演者【車寅次郎】渥美清
【諏訪さくら】倍賞千恵子
【三浦節子】長山藍子
【三浦富子】杉山とく子
【木村剛】井川比佐志
【石田澄雄】松山省二
【竜岡正吉親分】木田三千雄
【御前様】笠智衆
【車竜造】森川信
【車つね】三崎千恵子
【諏訪博】前田吟
【川又登】津坂匡章
【桂梅太郎】太宰久雄
【源吉】佐藤蛾次郎
同時上映なにがなんでも為五郎(ハナ肇)
観客動員数72万7,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Runaway

「男はつらいよ」全作品解説リンク

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