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寅さん全作品解説/第23作『男はつらいよ翔んでる寅次郎』(1978年8月公開)

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本作をひとことで言うと

金持ちボンボンの恋愛&成長物語

マリッジブルーに悩むマドンナが幸せな結婚に辿りつくまでを描く第23作。異色のマドンナ桃井かおりが寅さん的世界観に意外にマッチしており、ウェディングドレスのまま結婚式を逃亡するシーンの熱演は必見。現代劇の風合いが強く、いまひとつ人気のない作品ではあるが、未成熟な若い二人が成長するプロセスには心が温まる。

マドンナ

桃井 かおり(当時 28歳)

役名:入江ひとみ
職業:田園調布のお嬢様

寅さんを逆ナンする、結婚式を突如逃げ出すなど、エキセントリックな行動が目立つ世間知らずのお嬢様。当時の流行語で言うところの「翔んでる」マドンナか。キリリとした洋装に黒髪のボブ、アンニュイな表情には桃井かおりの魅力がよく表れている。

第23作「男はつらいよ翔んでる寅次郎」評論

異色のマドンナ・桃井かおり登場。幸せな結婚に辿りつく若い二人の成長物語

第23作『翔んでる寅次郎』は、マリッジブルーに悩むマドンナが、婚約者と自分自身に正面から向き合うことで、本当の幸せとは何かを発見していく成長物語である。今回の寅さんは第20作『寅次郎頑張れ!』の恋愛コーチに続き、仲人として若い二人の後見人を務めている。いわゆる”コーチもの”作品の一つである。

マドンナひとみは田園調布に住むお金持ちの令嬢で、演じる桃井かおりのパーソナリティーを反映しているのか、当時の流行語でもあった「翔んでる女」(=自立を求める自由な女性)として描かれている。親の決めた結婚に反発して北海道を一人旅、その道中では行きずりの寅さんを逆ナン(?)するなど、これまでの古風なマドンナとは描かれ方がかなり異質。

結婚式をウエディングドレス姿のまま逃亡し、とらやに駆け込む仰天のシークエンスは本作一番の見どころで、涙ながらに胸の内を訴える桃井かおり迫真の演技が、寅さん的世界観の中で予想外の融和を見せている。

物語後半では、マドンナひとみとフィアンセ邦夫(布施明)の恋愛を青春群像劇風に描くが、テンポは緩く、二人の人物造形や行動にツッコミどころも多々あって、いまひとつ感情移入しきれないのが玉にキズ。

しかし、かつては華美ながら心の通わない結婚式を挙げた二人が、紆余曲折の末に質素ながら真心溢れる結婚式を迎え、等身大の幸せに辿りつくプロセスには心が温まる。邦夫がクライマックスで歌う自作曲の一節「♪きらびやかなものに惑わされないで」に本作のテーマが象徴されている。

本作では、軽薄すぎるチンピラを演じる湯原昌幸のコメディーリリーフも見どころ。寅さんのシビれる見せ場をうまく作り出し、笑いのアクセント作りに貢献している。強姦未遂をネタにした寅さんのゆすりたかりなどは、ほとんど渥美清の地が出ているようでもう最高である。

異色の演技派マドンナ桃井かおりを迎え、これまでのシリーズ作品よりも現代劇の風合いが色濃く出ている本作。いまひとつ人気のない作品ではあるが、「世間知らずの金持ちボンボン二人が、寅さんの支えにより自分を発見していく成長物語」ということを念頭に置き、登場人物の心中をしっかり解釈しながら観れば、十分に楽しめる作品である。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第23作「男はつらいよ翔んでる寅次郎」 作品データ

公開1979年(昭和54年)8月4日
上映時間107分
主な出演者[車寅次郎]渥美清
[諏訪さくら]倍賞千恵子
[入江ひとみ]桃井かおり
[小柳邦男]布施明
[入江絹子(ひとみの母)]木暮実千代
[松田礼吉]松村達雄
[旅館の若旦那]湯原昌幸
[車竜造]下條正巳
[車つね]三崎千恵子
[諏訪博]前田吟
[桂梅太郎]太宰久雄
[源公]佐藤蛾次郎
[満男]中村はやと
[御前様]笠智衆
同時上映港町紳士録(友里千賀子)
観客動員数172万6,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san, the Matchmaker

「男はつらいよ」全作品解説リンク

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