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寅さん全作品解説/第26作『男はつらいよ寅次郎かもめ歌』

本作をひとことで言うと

寅さん、父親気分を味わう

キャンディーズ解散後の伊藤蘭が女優として本格復帰を果たした第26作。父親代わりとして奮闘する寅さんを筆頭に、登場人物たちがマドンナの成長を温かく見守る。夜間学校というモチーフとマドンナ伊藤蘭の好演により、作品全体が優しいまなざしに満ちあふれ、派手さはないが根強いファンを持つ作品である。

マドンナ/伊藤蘭

役名:水島すみれ(奥尻のスルメ工場勤務→学生)

当時トップアイドルだった彼女がマドンナを好演したことに当時驚いたファンも多かったのでは。劇中における彼女の喜怒哀楽、特に泣き顔を見れば寅さんでなくてもなんとかしてあげたくなること必至。

第26作「男はつらいよ寅次郎かもめ歌」評論

山田洋次『学校』シリーズに続く、優しいまなざしに溢れた佳作

第26作「寅次郎かもめ歌」には、人気絶頂のまま解散したアイドルグループ、キャンディーズの伊藤蘭がマドンナして登場する。1978年の解散後、一時は芸能界を引退した彼女が女優として本格復帰した作品の一つであり、それゆえ、この作品の注目度は当時非常に高かったものと思われる。

整備されたアスファルトの道路を歩く寅さん、セブンイレブン、劇中に流れる長渕剛『順子』など、現代に続く諸要素が作品に登場することも特徴で、男はつらいよシリーズがいよいよ80年代に突入したことを強く印象づける作品でもある。

さて、本作のテーマをひと言で表すとすれば、個人的には「誰かがあなたを見守っている」として差し支えないと思う。

亡くなったテキ屋仲間の娘を父親になりかわって支えたい寅さんを筆頭に、試験勉強を手伝う博とさくら、恒例のお百度参りに行ずるおばちゃん、ワケあり臭漂う実の母親、北海道から追いかけてきた彼氏、そして夜間学校の教師役として味のある演技を見せる松村達雄など、マドンナを囲むあらゆる関係性の人々がそれぞれの立場から彼女を見守り、支援する。

その中心にいる肝心のすみれを伊藤蘭が好演することで、この子を守りたいという切なる気持ちがわれわれ観客の側にまで及んでくるのだから大したものだ。本作における伊藤蘭の貢献は極めて大きい。

シリーズ初期の第7作『奮闘篇』に近い印象を抱かせるが、かの作品の寅さんはマドンナ花子に対して恋心の入り混じった同情心を抱いていた。寅さんも花子と同様に純粋無垢な存在であるから、子供が子供を見守る構図だったといっても過言ではない。

一方、本作における寅さんはマドンナに対して父親代わりの立場を取っている。なるほど時は流れ、寅さんの精神にもある程度の成熟が訪れたのだとも解釈できるし、寅さんが二回り年下の伊藤蘭に恋をする設定に無理が生じたのだとも解釈できる。いずれにしろ、主役俳優の加齢が作品にじわり影響を与えはじめていることに、われわれ観客が気付きだすのも本作あたりからではないだろうか。

恋に暴走する寅さんや、喜劇性の高い寅さんを期待する向きには、いささか地味な印象の作品として映ることだろう。しかし、夜間学校というモチーフと伊藤蘭の好演を得て、作品全体に優しいまなざしが満ちあふれている。後年の山田洋次『学校』シリーズへと続く萌芽ともいえるもので、派手さはないが根強いファンを持つ作品である。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第26作「男はつらいよ寅次郎かもめ歌」作品データ

第26作「男はつらいよ寅次郎かもめ歌」 予告編

第26作「男はつらいよ寅次郎かもめ歌」 あらすじ

準備中

第26作「男はつらいよ寅次郎かもめ歌」 作品データ

公開1980年(昭和55年)12月27日
同時上映土佐の一本釣り(田中好子)
観客動員数188万9,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Foster Daddy, Tora!
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