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寅さん全作品解説/第24作『男はつらいよ寅次郎春の夢』(1979年12月公開)

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本作をひとことで言うと

寅さん meets American

初の海外ロケを含む第24作は、日米失恋男の哀しみを涙と笑いで描くビタースイートな恋物語。映画前半は寅さんVSアメリカ人のドタバタ喜劇、後半では叶わぬ恋に身を捧げる三枚目たちの哀しくも愛おしい奮闘努力が展開される。珍しく「女」として描かれるさくらなど、情感豊かな味わい深い恋愛作品。

マドンナ

香川 京子(当時 48歳)

役名:高井圭子
職業:翻訳家

シリーズ初期作品によく見られるタイプの清純派マドンナ。香川京子は当時48歳、マドンナにしてはやや高齢な印象もあるが、寅さんの加齢にしたがってマドンナも歳を取るのだ。

第24作「男はつらいよ寅次郎春の夢」解説・評論

日米失恋男の哀しくも愛おしい、ビタースイートな恋物語

第24作『寅次郎春の夢』には、アメリカ人版寅さんともいうべき、マイケル・ジョーダン(通称マイコー)という風変わりなアメリカ人が登場する。寅さんとマイコーそれぞれの失恋プロセスを通して、恋に破れる男の哀れさを涙と笑いで描くビターな恋物語が本作だ。

マイコーは、どう考えても売れそうにないビタミン剤を売るため日本にやってきた行商の男。大の嫌米家である寅さんとの遭遇は予想通りのドタバタ劇へと発展。梅干し攻撃やカンフーアクションなど、”寅さん meets American”をお気楽に楽しめるのが映画前半部分。

作品が俄然面白くなるのは寅さんとマイコーそれぞれの恋愛を描く中盤以降から。日米愛情表現の文化的差異を絡めながら、「想いを秘める寅さん」と「想いを打ち明けるマイコー」の対比で作品は進む。

寅さんの恋は「日本の男は目で言うよ!」の爆笑恋愛論でスタートし、最終的には失恋に至るおなじみの展開。”古風な清純派マドンナ(香川京子)への岡惚れ”は、初期作品に見られるクラシカルな失恋パターンだが、寅さんのみじめな心境をまさしく目で語る渥美清のビターな演技は、初期とは明らかに違うもの。潤んだ瞳の寅さんが哀しくも愛おしい。

一方のマイコーは、なんと人妻であるさくらに恋をしてしまう。突然の告白に驚いたさくらの米国式回答”This is impossible.(不可能!)”は男にとって実にツライ一言だが、マイコーは切ない想いをぐっと胸に秘め、言葉少なにさくらに別れを告げる。アメリカ人のマイコーが「目で想いを語る」寅さんイズムを体得するところに脚本の面白みがある。

二人の恋愛努力はどちらも無様で滑稽で、他者から見れば三枚目以外の何者でもない。しかし、本人たちは至って真面目に純度の高い想いを抱えており、その落差がなおさら哀しみを呼ぶ。叶わぬ恋に身を捧げる寅さん&マイコーの奮闘努力は、今まさに失恋中の諸氏にとっては身につまされるものがあり、本作を涙なしで観ることはできないだろう。

日米失恋男の一方で、本作では珍しくさくらが「妹・妻・母」ではない一人の「女」としても描かれる。マイコーのド直球”I love you.”に少なからず心が揺さぶられる描写など、女性視点の心の機微が織り込まれることで作品の情感がぐっと増しているのも見逃せない。

このビタースイートな質感は長いシリーズの中でも唯一のものと言ってもよく、本作は極めて味わい深い、絶妙なバランスの恋愛作品に仕上がっている。

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第24作「男はつらいよ寅次郎春の夢」 作品データ

公開1979年(昭和54年)12月28日
上映時間104分
主な出演者[車寅次郎]渥美清
[諏訪さくら]倍賞千恵子
[マイケル・ジョーダン]ハーブ・エデルマン
[高井圭子]香川京子
[高井めぐみ]林寛子
[柳田]梅野泰靖
[大工の棟梁・茂]犬塚博
[板東鶴八郎]吉田義夫
[大空小百合]岡本茉莉
[車竜造]下條正巳
[車つね]三崎千恵子
[諏訪博]前田吟
[桂梅太郎]太宰久雄
[源公]佐藤蛾次郎
[満男]中村はやと
[御前様]笠智衆
同時上映神様のくれた赤ん坊(桃井かおり)
観客動員数184万1,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Dream of Spring
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