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寅さん全作品解説/第6作『男はつらいよ純情篇』(感想・評論・あらすじ・出演者)

本作をひとことで言うと

寅さん、故郷を思う

前作の成功で本格的にシリーズ化へと歩み出した第6作。森繁久彌と渥美清の共演は一瞬だが、名優の競演は作品に強い印象を残す。寅とさくら、柴又駅での別れはシリーズ中もっとも泣かせるもので、こちらは倍賞千恵子の名演が光る。葛飾柴又の日常を中心とした控えめな脚本ながら、名優たちの活躍で要所はしっかりと押さえている佳作。

マドンナ/若尾文子

役名:明石夕子(おばちゃんの遠縁)

大映のスター、若尾文子(わかおあやこ)がマドンナに登場。和服の美しさを最大限に引き出す艶やかな所作には思わず唸るばかり。寅さんがどう逆立ちしたって落とせっこない、まさに高値の花。お美しや。

目次

第6作「男はつらいよ純情篇」感想・評論

森繁久彌を筆頭に、名優たちの競演に酔いしれる第6作

山田洋次がシリーズ完結のつもりでのぞんだ前作『望郷篇』は大ヒット。この結果を受けて松竹は「男はつらいよ」を本格的にシリーズ作品として打ち出す決断をする。

当時を振り返る山田洋次の言葉。

<じゃ、五作目でお終いということで、もう一回だけ僕が作るって撮ったら、やっぱり思いがこもるんじゃないでしょうか。とても力のあるものができて、ドーッとお客が増えて、それでやめられなくなっちゃった(笑)>

『おかしな男』/小林信彦 308p

こうして製作された第6作『純情篇』は、前作でほぼ出来上がった作品のフォーマットにのっとり展開される。寅さんは旅先で威勢よく商売に励み、源ちゃんは寺坊主または柴又の情報屋として暗躍、そして美しいマドンナ(若尾文子)は心に悩みを抱えている。あとに続く作品の定番となる要素がここに完成するのだ。

前作の寅さんは次から次へと葛藤を乗り越えたが、シリーズ化を意識したと思しき本作ではエピソードを詰め込まず、柴又の日常を寅次郎の愉快な振る舞いでもたせており、若干の出し惜しみすら感じさせる。

しかし、力加減を調整していたとしても、シリーズ化による様式美と、要所をおさえた作品づくりで、及第点を軽く超える作品に仕上がっている。その要所というのが、ひとつは名優・森繁久彌と渥美清の競演を中心とする映画冒頭部分。もうひとつが寅次郎とさくらによる、柴又駅での美しい別れのシーンだ。

映画冒頭。ひとり旅を続ける寅次郎は、幸薄げな子連れの女と出会い、故郷への里帰りを共にする。渥美清と宮本信子の抑えた演技は哀愁に満ちたロードムービーといった風情で、心を掴まれる。つづく渥美と森繁の共演はほんの束の間であるが、その道の達人同士は刀を合わせずとも対峙する構えだけで魅せてくれる。もっと見たいなあ!と思うところでシーンは終了。ここまでが映画の導入部分。

そして終盤。寅次郎とさくらは幼き日の思い出をたどりながら、柴又駅で涙の別れをする。シリーズ中、二人は何度も同じ別れを繰り返すのだが、幼年期のエピソードとともに、さくらの寅次郎への想いがもっとも強く溢れ出すのが本作での別れ。こちらでは倍賞千恵子の名演が光る。

思わず涙がにじむこのシーンと、冒頭部分が強く印象に残る第6作『純情編』。とくに冒頭部分は何度見ても、いや見れば見るほど心に沁み入る、味わい深い名場面だ。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第6作「男はつらいよ純情篇」作品データ

第6作「男はつらいよ純情篇」 予告編

第6作「男はつらいよ純情篇」 あらすじ

寅さんこと車寅次郎(渥美清)は夜汽車に乗って旅をしていた。対面に座る子連れの女性に、妹・さくら(倍賞千恵子)の姿を思い出して涙ぐむ寅さん。故郷を思う寅さんのしんみりしたモノローグから物語は始まる。

柴又帝釈天の参道にあるだんご屋・とらやを紹介するテレビ番組を旅先で偶然見かけた寅さんは、故郷を懐かしく思いながら、長崎県の大波止港に着いた。ここで寅さんは、行きずりの子連れ女・絹代(宮本信子)から、今晩宿に泊まるためのお金を貸してほしいと頼まれる。絹代は、暴力を振るう夫から逃げ出し、実家のある五島に向かう途中だった。寅さんは幸薄げな絹代の里帰りに付き添うことにした。

絹代の実家には、父・千造(森繫久彌)が一人で住んでいた。絹代は、夫と別れてここで暮らしたいと言うが、千造はそれを認めずこう言った。「3年間便りもよこさず、俺が死んでいたらどうするつもりだったのか。俺が死んだらもう故郷には帰れないのだぞ」。この話が骨身に染みた寅さんは、いつでも故郷に帰れるという甘えのせいで自分は一人前になれないと反省する。しかし、柴又のことを思うと帰りたい気持ちが沸々と湧き上がってしまう寅さんは、結局「やっぱり帰るなぁ!」と宣言し、葛飾柴又に向けて飛び出していった。

その頃、とらやは新たな下宿人・夕子(若尾文子)を迎え入れていた。夕子はつねの遠縁にあたる人妻で、夫と別居するためとらやを頼ったのだった。夕子が買い物のため外出すると、入れ替わるように寅さんが帰ってきた。寅さんは、自分の部屋が他人に貸し出されていることを知り拗ねるが、外出から帰った夕子を見た瞬間に一目惚れ。態度を180度豹変させて、とらやに滞在することを決めた。夕子とひとつ屋根の下で暮らせる喜びから、いつにも増して大騒ぎする寅さんだった。

ある日のこと。朝日印刷の社長・梅太郎(太宰久雄)は、従業員の博(前田吟)が会社を辞めてしまうといって大騒ぎをしていた。博には独立して自分の工場を持ちたい夢があった。事情を聞いた寅さんは、退職を認めさせるため梅太郎の家に乗り込むのだが、逆に梅太郎から、博を慰留してほしい、一生のお願いだ、と懇願される。2人の板挟みにあった寅さんは、梅太郎と博のそれぞれに、話はうまくまとまったと嘘をついてしまう。

博が退職を撤回したと信じた梅太郎は、とらやでお祝いの宴を開くが、宴会の最中に寅さんのいい加減な嘘はバレてしまう。宴会は一転してただならぬ雰囲気となるが、さくらが博を説得して、博は独立の考えを改めるのだった。夕子は、感情を素直にぶつけあう柴又の人々の姿を見て、自分と夫がいかに心の通わない生活をしていたかと涙を流していた。

博の独立騒動後も、寅さんの夕子に対する恋心は日増しにエスカレートしていく。そんなある日のこと、夕子の夫・恭介(垂水悟郎)が突然とらやを訪ね、夕子に「戻ってきてほしい」と頭を下げた。夕子は謝罪を受け入れ、恭介の元に帰る決心をした。こうして、寅さんの恋はあっけなく終わり、その夜、寅さんは旅に出ることにした。

ここは京成電鉄・柴又駅のホーム。寅さんとさくらは電車を待ちながら、寅さんがはじめて家出をした時のことを思い出していた。やがて電車がホームに着くと、さくらは「辛いことがあったらいつでも帰ってきて」と寅さんに声をかける。寅さんは感極まった様子で、「そのことだけどよ、そんな考えだから俺はいつまでも一人前に……故郷ってやつはよ、故郷ってやつはよ……」と答えた。さらに寅さんが何かを言おうとした時、ドアが閉まり、電車は走り去っていった。

数日後、新年を迎えたとらやに、夫と子供を連れた絹代が訪れた。とらや一同に勧められ、絹代は千造に遠距離電話をかける。夫と復縁したことを伝えると、電話の向こうの千造はひとり涙を流していた。一方、寅さんは浜名湖のほとりで源公(佐藤蛾次郎)と一緒に商売に励んでいた。澄み切った青空の元、元気よく声を張り上げる寅さんを映して物語は幕を閉じる。

第6作「男はつらいよ純情篇」 出演者

第6作「男はつらいよ純情篇」主要キャスト

【車寅次郎】渥美清
【明石夕子】若尾文子
【諏訪さくら】倍賞千恵子
【絹代】宮本信子
【千造(絹代の父)】森繫久彌
【夕子の夫(明石恭介)】垂水悟郎
【医師山下】松村達雄
【諏訪博】前田吟
【車竜造】森川信
【車つね】三崎千恵子
【堤梅太郎】太宰久雄
【御前様】笠智衆
【源公】佐藤蛾次郎

第6作「男はつらいよ純情篇」その他キャスト

[五島行きの船で出会うテキ屋]北竜介/[ご近所]大杉侃二郎/[ご近所]大塚君代/[絹代の亭主]城戸卓/[梅太郎の妻]水木涼子/[長崎の旅館の女中]谷よしの/[ご近所]山本幸栄/竹田昭二/[朝日印刷の工員1]みずの晧作/[朝日印刷の工員2]市山達巳/長谷川英敏/源勇介/松原直/[ご近所]高木信夫

※配役や役名の一部に関しては、書籍「みんなの寅さん from 1969」(著・佐藤利明)を参考にさせていただきました。

第6作「男はつらいよ純情篇」作品データ

公開1971年(昭和46年)1月15日
同時上映やるぞみておれ為五郎(ハナ肇)
観客動員数85万2,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Shattered Romance

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