第6作「男はつらいよ純情篇」といえば、寅さんが行きずりの子連れ女(宮本信子)と出会う、波止場のシーンが印象深い。
その後二人は安宿で一晩を共にするが、女は宿代を持ち合わせていない。女は一宿一飯の礼を体で支払おうとするが、我らが寅さんはその行為を静かに、しかし、凄みのある声で叱るのであった。
「俺の故郷にな、ちょうどあんたと同じ年頃の妹がいるんだよ。もし、もしもだよ?その妹が行きずりの旅の男に、たかだか二千円くらいの宿賃でよ、その男がもし、妹の体をなんとかしてえなんて気持ちを起こしたとしたら、俺はその男を殺すよ……」
第6作「男はつらいよ純情篇」
くぅーー!かっこいいぜ!これぞ寅さんのダンディズム!というわけで今回は、第6作「純情篇」の二人が初めて出会うシーンのロケ地を中心に巡ってきた。
今回巡礼した2か所はどちらもJR長崎駅からの徒歩圏内。長崎へ訪れる機会があればぜひお立ち寄りいただきたい。参考書籍は毎度おなじみ、寅さんロケ地巡礼者のバイブル「男はつらいよ 寅さんロケ地ガイド」。マジで名著!
今回の寅さんロケ地データ
作品名 | 第6作「男はつらいよ純情篇」 |
公開 | 1971年(昭和46年)1月15日 |
推奨移動手段 | 徒歩&タクシー |
到達難易度 | ★★☆☆☆ |
所要時間 | JR長崎駅から出発し、2~3時間程度 |
ロケ地1:「長崎港」遠景の撮影ポイント
せっかくなので、シーン冒頭「長崎港の遠景」を見に行こう
寅さんと宮本信子が出会うシークエンスは、高台から見下ろす長崎港の遠景で始まる。せっかく長崎まで来たのだから、この光景もぜひ見ておきたい!ということで、長崎駅の真正面にデーンとそびえる高台から攻めてみることにした。
こちらが長崎駅。今回はJR博多駅から特急かもめに2時間ほど揺られて長崎入りした。
改札を出ると真正面になかなかの高台が広がっている。これから目指すポイントはこの高台の中腹にある。
駅から一歩路地を入ると、長崎らしい光景が次々と広がる
寅さんロケ地に向けて細い路地を歩き始めると、早速長崎らしい光景が目に飛び込んできた。
どうよこのポスター。日本歌謡のソウルマスター前川清(長崎出身)の強烈なカウンターパンチを喰らいつつも、ロケ地を目指してぐんぐん進む。
ほんとに大丈夫?Googleマップ
Googleマップが指し示す方向へ素直に歩いていくと、複雑に入り組んだ細い路地へと誘われてしまった。ほんとにこの道で大丈夫?
長崎駅から最初のロケーションポイントまでは徒歩15~20分ほど。その間、写真のような坂道が延々と続く。
細い坂道は墓地の間を縫うように、まるで迷路のように続いてゆく。それにしても、寂れた墓地というものはどうしてこうも味わい深いのだろうか。人工の観光スポットなんかよりよっぽど味がある。
高台の斜面にはびっしりとお墓の迷宮が広がっていた。長崎駅からほんのすこし歩くだけで、こんなに日本的な光景にお目にかかれるとは思いもよらなかった。
目印はホテル「長崎にっしょうかん」
ようやく坂を登り切ると、道路沿いに立つ「長崎にっしょうかん」というホテルに到着。このあと紹介する写真は、長崎にっしょうかんの真正面にあった駐車場から撮影したもの。
長崎駅から徒歩20分 寅さんロケ地からの素晴らしい眺め!
ワオ!素晴らしい景色!劇中のスクリーンショットを片手に同じようなアングルを模索しつづけ、ようやく劇中の構図と近い写真を撮影することができた。
さすがに46年もの歳月が流れているので、港付近の建造物は様変わりしていたが、陽光を照り返す長崎港の美しさは見事にそのままであった。大満足。
ロケ地2:寅さんと宮本信子が出会う大波止橋周辺
JR長崎駅から路面電車で3分、大波止橋周辺に向かう
続いて向かったのは、寅さんと宮本信子が出会った大波止駅周辺の港。
第2のロケ地ポイントはJR長崎駅からは徒歩で10分ほど。長崎駅前駅から路面電車に乗れば3分ほどで目的地の大波止駅に到着する。路面電車には旅情があるなあ。
大波止駅から歩いてすぐの大波止橋周辺が、二人が出会うシーンのロケ地と思われる。実に港町・長崎らしい光景。
再開発により、寅さん撮影当時の面影はほとんどない
しかし、このあたりは再開発によってすっかり変わってしまったようで、どこでどう撮影したのか、当時の面影を見つけることはなかなか難しかった。
寅さんの背後に一瞬映る、なんらかの記念碑も現地には見当たらず。しかし、寅さんの遠くに見える山の稜線や堤防から推察するに、おそらく大波止橋のたもとが主な撮影場所と推測される。
寅さんの背後に映る電車はそのまま残っている
寅さんと宮本信子の出会いのシーンをよく見ると、寅さんの背景には電車が走っている。これは当時の長崎電鉄であろうか。おそらく、電車を背景に収めるために、先程の大波止橋のたもとからは少しずれたポイントで撮影が行われたと思われる。
この周辺でパシャパシャ写真を撮りまくっていると、二人の子供を連れたお母さんが道を歩いていった。劇中の宮本信子の対極をゆく幸せそうな親子連れ。思わず写真に収めてしまった。
おまけ:寅さんロケ地周辺には長崎観光の名所が密集!
今回紹介した第6作「男はつらいよ純情篇」ロケ地周辺には、長崎観光の名所が密集している。わざわざ遠方から巡礼するよ~!という方には周辺観光を強くおススメしたい。
私は1泊2日の旅程で、以下のスポットをたっぷり堪能させてもらった。
歴史で習ったぞ!「出島」
寅さんと宮本信子が出会った大波止橋から徒歩1~2分のところには、歴史の教科書で何度も見た、あの「出島」がある。
てっきり島のように海に浮かんでいるのかと思いきや、明治時代の埋め立て工事により、今は地続きのエリアになっている。江戸時代後期のモダンな暮らしが偲ばれる。
ゆけど切ない石畳~♪「グラバー園」&「オランダ坂」
長崎に来て最初に思ったこと、それは「雨、降ってないじゃん!」。
内山田洋とクール・ファイブの名曲『長崎は今日も雨だった』で刷り込まれた「長崎イコール雨」のイメージのせいで、快晴の長崎にはやや拍子抜けしてしまったが、もうひとつの長崎のイメージ「石畳」は、街のそこかしこでしっかりと確認ができた。
長崎観光の名所「オランダ坂」「グラバー園」は、そんな石畳で覆われた趣ある観光名所。こちらも寅さんロケ地の大波止橋から徒歩圏内にある。
時間がある方におススメ!世界遺産の「軍艦島」クルーズ
特におススメなのは、2015年に世界遺産にもなった「軍艦島」のクルーズ!
当時、軍艦島で働いていたというガイドさんの臨場感たっぷりの解説とともに、トータル3時間ほどで明治日本の産業革命遺産を堪能することができる。
古いもの、朽ち果てたものが持つ、枯れた味わいが大好きという方にとって、軍艦島クルーズは心のど真ん中にズドーン!とくる素晴らしいアトラクションになるはず。
ぜひ、男はつらいよ聖地巡礼とあわせてお立ち寄りいただきたい。