今回の「寅さんの聖地を巡るシリーズ」は、第30作「男はつらいよ花も嵐も寅次郎」(1982年12月公開)のロケ地を巡礼する。
第30作「花も嵐も寅次郎」には、当時歌手・俳優として大人気だったジュリーこと沢田研二が出演している。山田洋次監督は「天下の二枚目と寅さんを対決させたい」と考え、ジュリーのキャスティングを決めたという。
本作の寅さんは、ジュリーが演じる恋愛下手の青年・三郎に恋愛の手ほどきをする。その甲斐あって三郎青年はマドンナ螢子(田中裕子)と結ばれるのだが、寅さんは二人が結ばれたと聞いた時はじめて、自分が螢子に恋をしていたことを悟るのだった。そして、寅さんは最後にこうつぶやいて旅に出る。
寅「さくら。やっぱり、二枚目はいいなぁ。ちょっぴり妬けるぜ」
第30作「男はつらいよ花も嵐も寅次郎」
その後、寅さんは大分県に向かい、お正月の人混みで賑わう別府市の鉄輪(かんなわ)温泉で商売に精を出す。今回巡礼したのはこのラストシーンのロケ地である。
巡礼のガイドは、毎度おなじみ寅さんのロケ地ガイドブックの決定版「男はつらいよ 寅さんロケ地ガイド」である(絶版のため中古価格が高騰中!)
今回の寅さんロケ地データ
作品名 | 第30作「男はつらいよ花も嵐も寅次郎」 |
公開 | 1982年(昭和57年)年12月28日 |
住所 | 〒874-0041 大分県別府市風呂本1組(永福寺 付近) |
推奨移動手段 | バス・タクシー&徒歩 |
到達難易度 | ★★☆☆☆(かんたん) |
所要時間 | JR別府駅から1時間程度 |
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第30作「男はつらいよ花も嵐も寅次郎」ロケ地・鉄輪温泉へのアクセス
ロケ地の鉄輪温泉エリアと言えば、別府観光の定番である「地獄めぐり」が楽しめるメジャーな観光スポット。アクセスにはバスが便利で、JR別府駅からはバスで30分程度、JR亀川駅からはバスで20分程度でたどり着ける。私は別府駅から亀の井バスに乗り現地に向かった。
撮影は鉄輪温泉のメインストリート「いでゆ坂」で行われた
亀の井バス「鉄輪」停留所を降りると、すぐそこに「いでゆ坂」の入り口が見える。ロケ地はこの風情ある坂道を下って2分ほどの場所にある。
石畳で整備された路の上には排水溝があり、写真ではわかりにくいがここから温泉の湯気が立ち上っていた。
いでゆ坂には、地元の人々が運営する共同浴場や、観光客向けの足湯などがある。温泉の蒸気熱を利用した蒸し料理を提供するレストランもあった。時間があればこれらに立ち寄ってみるのもいいだろう。
寅さんの啖呵売シーンは永福寺の石碑の前で行われた
鉄輪停留所から、いでゆ坂をまっすぐ下ると、寅さんが縁起物の飾り物やすずを売るシーンのロケ地に辿り着く。作品内では1時間45分20秒あたり。作品内ではものすごく賑わいのある通りのように見えるが、平日の現地は観光客も少なく落ち着いた佇まいだった。
さあ!鉄輪温泉に御滞在の皆さま。新年明けましておめでとうございます。ねっ、おじいちゃん、どう?こういう景気のいいもの、ねっ。
角は一流のデパートで、紅おしろい付けたお姉ちゃんから、くださいちょうだいでお願いしますと、1000円から2000円は下らない品物。今日はそれだけくださいとは言いません!
第30作「男はつらいよ花も嵐も寅次郎」
寅さんの背景に立っている石碑には「再興之碑」と彫られており、作品当時から変わっていないようだ。こういった石碑や石仏の類がロケ当時のまま残っているのは「寅さんロケ地巡りあるある」である。
この石碑は永福寺の敷地内に建てられている。永福寺は、鉄輪温泉を開湯した一遍上人ゆかりのお寺だという。
寅さんがマドンナ螢子と話した公衆電話はなくなっていた
永福寺を過ぎて、さらにいでゆ坂を下っていくと、寅さんがマドンナ螢子に電話をした交差点に辿り着く。作品内では1時間45分00秒あたり。公衆電話は無くなっており、寅さんの背景にあった「たつみや」の看板は「辰巳屋」に表記が変わった。作品内ではアスファルトだった道路も風情のある石畳に変わっている。
このシーンも作品内では多くの人で賑わっていたが、なんでもない平日の昼下がりにはご覧の通り閑散としていた。おそらく、撮影当時は近隣の住民をエキストラに総動員して撮影を行ったのではないか。
大衆演劇の一座とともに映っていた「ヤングセンター」は閉館
作品の1時間45分10秒あたりで、大衆演劇の一座が通行人に正月公演の案内をする場面が映る。この場所は、鉄輪温泉にかつて存在していた「ヤングセンター」という名の温泉旅館だ。ここには大衆演劇の劇場も併設されていたという。
しかし、ヤングセンターは残念ながら2020年3月に閉館しており、現在は写真の通り更地になっていた。時の移ろいを感じる。
ラストシーンの湯煙は、鉄輪温泉の至るところで見られる
いでゆ坂から、一筋奥に足を踏み入れると、あちらこちらに地中の温泉を汲みだす機械が据え付けてあり、もうもうと湯煙を吐き出していた。第30作「花も嵐も寅次郎」のラストシーンと同じ光景がいたるところで見られる。実に別府らしい風景である。
おまけ:鉄輪温泉周辺のおすすめスポット
別府と言えばやっぱり「べっぷ地獄めぐり」
最後に、鉄輪温泉周辺にある観光スポットをご紹介したい。鉄輪温泉周辺の観光スポットいえば、やはり「べっぷ地獄めぐり」になるだろう。
別府観光の定番といえば個性豊かな7つの地獄をめぐる「べっぷ地獄めぐり」。(中略)べっぷ地獄めぐりは、コバルトブル一で98度もある海地獄、酸化鉄の成分で噴気までが赤い血の池地獄、一定の間隔で熱湯と噴気を噴出する龍巻地獄、白池地獄、鬼石坊主地獄、鬼山地獄、かまど地獄の7つの地獄をめぐることをいいます。
べっぷ地獄めぐりWebサイトより
「血の池地獄」「龍巻地獄」の2つは少し離れた場所にあるが、残る5つの地獄は今回巡礼したロケ地から歩いて15分圏内にあるので観光しやすい。
下記は「海地獄」の写真だ。岩と岩の間から、熱湯が「ブシャァァァ!」と猛烈な勢いで吹き出していた。人生において一度見ておいて損はないだろう。
地元民が自宅の風呂代わりに利用する温泉施設「渋の湯」
鉄輪温泉エリアには、地元の人々がお金を出し合って運営する普段使いの温泉施設がある。ロケ地のすぐ近くにあったこちらの「渋の湯」もそんな温泉施設の一つ。基本的には地元民の生活のための温泉だが、渋の湯は観光客の利用も許可しており、なんと100円で入浴することができた。
地元の方は、カゴにシャンプーやせっけんを入れてやってきて、ご近所同士で世間話などをしながら、サァーッとお湯を浴びて帰っていった。私が話しかけた地元のおじさんは、「自分の家にも風呂はもちろんあるよ?だけど、めんどくせぇからここにしょっちゅう来てるよ」と話してくれた。
昔ながらの伝統技術で「湯の花」を作る「明礬(みょうばん)温泉」
別府駅から鉄輪温泉方面に向かうバスの中には、観音温泉を過ぎたあと、明礬(みょうばん)温泉に向かうバス系統がいくつかある。私は、せっかく別府に来たのだからと、寅さん聖地巡礼の前にどこかでひとっ風呂浴びたいと考え、明礬温泉に足を延ばしていた。
「地蔵湯前」停留所を降りて5分ほど歩くと、立ち寄り温泉施設のある「みょうばん湯の里」に着く。ここには貸し切りの家族湯のほか、誰でも利用できる露天風呂がある。独特の乳白色のお湯が広がる露天風呂は開放感あり、大変気持ち良かった。
ひとっ風呂浴びたあとは、温泉の高熱蒸気で蒸したとうもろこし、千巻、温泉たまごをいただいた。売店で売っている生ビールとともに流し込む。ん~実にうまい。
明礬温泉一帯は温泉成分を固めて作る天然の入浴剤「湯の花」の産地である。明礬温泉に江戸時代から伝わる湯の花製造技術は国の重要無形民俗文化財に指定されている。
以上、第30作「男はつらいよ花も嵐も寅次郎」のシーンのロケ地巡礼レポートでした。次回の聖地巡礼もどうぞお楽しみに!
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