寅さん全48作品解説/第4作『新・男はつらいよ』

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寅さんハワイに行く?

前作に続き山田洋次以外がメガホンを取る4作目。本作は大慌てでの製作によりほとんどロケがなく、柴又でのドタバタに力点が置かれたTVドラマ的な作風。おいちゃん・タコ社長のキャラは冴え渡り、寅さんの失恋そして回復までの流れも盤石の安定感。人情味は薄いが、ハワイ騒動などたっぷり楽しめる喜劇作品である。

マドンナ/栗原小巻

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役名:宇佐美春子(幼稚園の先生)
父親となんらかの確執があったと想像させるが、詳細不明のためいまひとつ感情移入できないマドンナ春子さん。しかし、上品な仕草には可愛らしさが満ち溢れ、「コマキスト」と呼ばれる熱狂的男性ファンの存在にも納得させられる。

第4作「新・男はつらいよ」評論

柴又のドタバタをたっぷり楽しめるテレビドラマ風の良質喜劇

TVドラマから映画化された男はつらいよは、続く2作『続・男はつらいよ』3作『フーテンの寅』でもそこそこの興行成績をあげ、いよいよ第4作『新・男はつらいよ』が製作されることになる。

小林信彦『おかしな男』でも指摘されているが、わずか半年の間に4作目まで封切られる超ハイペース。コンスタントにヒットする作品が他に何もなかった、松竹の苦しい台所事情がうかがえる。

【各作品の公開年月日】
1. 男はつらいよ (1969年8月27日)
2. 続・男はつらいよ (1969年11月15日)
3. 男はつらいよ フーテンの寅 (1970年1月15日)
4. 新・男はつらいよ (1970年2月27日)
(『おかしな男』/小林信彦 286pより)

本作は、TVドラマ版「男はつらいよ」の演出家である小林俊一が監督を務める。シリーズにおいて山田洋次以外が監督を務めるのは3作目と本作のみ。

大慌てでの製作だったためか、本作にはほとんどロケがない。つまり、悠々と旅をする寅さんの描写が一切ないのだ。名古屋競馬場でひと山あてる寅さんこそあるが、それ以外はほとんどが柴又ロケかスタジオ撮影。暗い密室のとらやに泥棒が忍びこむなど筋立てのせいでもあるが、本作は他の作品に比べてスケール感がない。寅さんを中心とする人間関係のドタバタに力点が置かれており、テレビドラマ風の作りになっている。

マドンナの笑顔を取り戻す、という人情的な味付けもあるがこれは少し弱い。マドンナ演じる栗原小巻の人物像にほとんど焦点があたらず、盛り上がらないからだ。

後年のシリーズ作品では、マドンナの苦悩や葛藤にしっかりと光をあてるため、寅次郎の奮闘努力も涙を誘うものになる。別監督による3作目と本作は、『男はつらいよ』が愛される人気シリーズとなった理由を逆説的に示唆している。

しかし、喜劇作品としてはとびきりに楽しい本作。空気を読まない(読めない?)タコ社長のガサツさや、寅さんに怯える森川おいちゃんの狼狽ぶりはいよいよ冴え渡る。寅さんの失恋、そして回復までの流れも盤石の安定感。

1作目から4作目まで続けてみた人にとっては、ここらですっかり「ああもっと寅さんを観たい!」という気持ちになっていることだろう。

<3作「フーテンの寅」 トップ 5作「望郷篇」

第4作「新・男はつらいよ」作品データ

公開 1970年(昭和45年)2月27日
併映 アッと驚く為五郎(ハナ肇)
観客動員 48万5,000人
マドンナ 栗原小巻
ゲスト 財津一郎
洋題 Tora-san's Grand Scheme

      2017/04/23

 - 男はつらいよ作品紹介