寅さん全48作品解説/第14作『男はつらいよ寅次郎子守唄』

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子連れ寅さん奮闘記

過去作品のアイデアが再利用され新味には欠けるが、脚本のよさとシリーズとしての安定感により平均点以上の面白さをきっちり担保する第14作。赤ちゃん騒動に、寅さんの恋愛指南など充実の面白さ。行きずりのストリッパー・春川ますみがいい味を出しており、作品の後味をさらに幸福なものにしている。

マドンナ/十朱幸代

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役名:木谷京子(看護婦)
どんな場所にいてもその場の空気を明るく変えてしまう、朗らかで優しい気さくなマドンナ。看護婦ジョークを繰り出しては茶目っ気たっぷりにおどけるなど、第14作の団らんシーンがいつもより楽しく見えるのは彼女の存在によるところが大きい。

第14作『男はつらいよ寅次郎子守唄』評論

春川ますみが爽やかな風を吹かせる、安定充実の面白さ

シリーズとして本格的にスタートを切った第6作『純情篇』以降、男はつらいよは毎作品新しい試みに意欲的に取り組んできた。

知的障害を持つマドンナ、フラれない寅さんにフる寅さん、「漂白と定住」という重厚なテーマ設定、さすらいのマドンナ・リリーの鮮やかな登場など。毎作品どこかに新機軸を打ち出しながら、それらをことごとく成功させ、常に映画として高い完成度を保ち続けてきたのだ。

そして迎えた第14作『寅次郎子守唄』。第1作からシリーズを見続けてきた方には、本作では新機軸がもたらす新鮮な印象より、いよいよ既視感の方を強く覚えることだろう。

マドンナ京子(十朱幸代)登場とともに寅の態度が豹変するのは12作『私の寅さん』のようだし、他人の恋愛成就に一肌脱ぐのは10作『寅次郎夢枕』だ。春川ますみ演じるストリッパーとの出会いは11作『忘れな草』のようで、無骨な青年の愛の告白は1作『男はつらいよ』の博、そのまんまである。

『寅次郎子守唄』には、かつての作品に登場したアイデアのいくつかが再利用されるためどうしても新味にかけてしまう。重厚なテーマ性もなく、マドンナも普通の一般女性であるから、なんとなく地味な印象の作品として記憶している方も多いだろう。

では、本作は駄作なのかというと、まったくもってそんなことはないのだ。赤ちゃん騒動にはじまる脚本は練りこまれておりムダがない。とりわけマドンナ登場後の寅さんの恋愛プロセスはよくできている。

片思い青年に寅が独自の恋愛説法を展開するシーンも見どころ。失恋したら「また別の角度のおオタフクを探し求めていけばいいんだ」とエキセントリックな語彙がポンポン飛び出す。渥美清のおかしさは相変わらずの安定感である。

出番は少ないが物語のキーパーソンとなるのがストリッパー役の春川ますみ。劇中における寅との2度の遭遇は、作品に爽やかな風を吹かせている。とりわけラストシーンでの再登場は、寅さん映画鑑賞後にしか味わえない独特の恍惚感をさら際立たせている。彼女なしでは本作の後味はガラリと違ったものになっていただろう。

新鮮な驚きや突出した名場面の少ない本作だが、それでも平均点以上の面白さを担保するのだからシリーズとしての頑丈さを感じる。

三代目おいちゃん・下條正巳は本作より出演。若き日の月亭八方が演じるダメ男も楽しい。

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第14作「男はつらいよ寅次郎子守唄」作品データ

公開 1974年(昭和49年)12月28日
併映 ザ・ドリフターズ極楽はどこだ!(ザ・ドリフターズ)
観客動員 226万7,000人
マドンナ 十朱幸代
ゲスト 上條恒彦/春川ますみ/月亭八方
洋題 Tora-san's Lullaby

      2017/04/24

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