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寅さん全作品解説/第13作『男はつらいよ寅次郎恋やつれ』(1974年8月公開)

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本作をひとことで言うと

吉永小百合、再び登場

9作『柴又慕情』の続編、マドンナ吉永小百合が再登場。寅さんの喜劇性よりマドンナ歌子を中心に据えたドラマ性が強調される本作、静かな展開ゆえ各場面で山田演出のきめ細やかさが際立つ。父と娘の和解がテーマだが、寅次郎の失恋がやはり見所。浴衣姿の美しい吉永は美人画の世界を具現化したかのよう。

マドンナ

吉永 小百合(当時 29歳)

役名:鈴木歌子
職業:図書館勤務

第9作『柴又慕情』と同じ歌子ちゃん役としてシリーズ2度目の登場。前作では若々しい娘という印象だったが、本作ではややスリムになって、ほんのり大人の雰囲気を醸し出している。艶やかな浴衣姿で縁側から夏の花火を楽しむ様子は、ほとんど美人画の世界。実に美しい。

目次

第13作「男はつらいよ寅次郎恋やつれ」評論

ドラマ性が強調された、きめ細やかな美しい工芸品のような作品

第13作『寅次郎恋やつれ』は、9作『柴又慕情』の続編。マドンナ歌子を演じるのは前作同様、吉永小百合である。

同一マドンナの再登場について、山田監督は書籍『寅さんと麗しのマドンナたち』の中でこう語っている。

「はじめてつき合う女優さんとは、一つの作品が終わる頃に、やっと心が通い合うようになるものなんです。」「なにかもったいなくなるんですよ、せっかくあのキャラクターをつくり上げておいて。もっとふくらませて、もっと活躍させたいと……。」

『寅さんと麗しのマドンナたち』

前作で父親の反対を押し切って結婚を決め、家を飛び出した歌子はその後どうしているのだろうか……。確かに想像をたくましく刺激するお題目であり、山田監督が吉永小百合を再登場させたのも十分頷ける。

『恋やつれ』は寅さんの喜劇性より、マドンナ歌子を中心に据えたドラマ性が強調されている。歌子が夫との死別をしっとり告白するシーンなど、登場人物たちの静かな語らいによって物語が進展していくのが特徴だ。シリーズ作品を”静”と”動”の二種類にわけるとすれば、完全なる”静”の作品といえる。

派手なシーンが少ない作品であるがゆえ、各シーンでは山田演出のきめ細やかさが際立つ。桜吹雪舞い散るオープニングにも顕著なように、作品全体が非常に丁寧に作られた、美しい工芸品のような味わいなのだ。

物語の山場はマドンナ歌子と父の和解シーンだが、その後に訪れる寅次郎の恋の顛末こそが本作の真のクライマックスといえよう。

「今、幸せかい?」。寅の一言がきっかけで、抑圧の日々を過ごす歌子は笑顔を取り戻すことができた。最初はそれだけで十分だったはずの寅次郎だが、次第に歌子と過ごす幸せな未来を夢見てしまう。

しかし、歌子が思い描く未来予想図におそらく寅次郎の姿はない。二人が縁側にならんで夜空の花火を眺めるシーン、歌子は遠く花火を見つめているが、寅次郎はただひたすら歌子の美しい横顔に見とれている。夜空に輝く花火が”歌子の未来・希望”を象徴しているとすれば、二人が見つめる先はあまりに違い、寅の片思いを物哀しく暗示している。

美人画の世界を具現化したような情景に、吉永小百合の美しさがよく映える。吉永以外では成立しえないこのシーンに、山田洋次の美意識が凝縮されているといえよう。本作の中核を成している必見のワンシーンだ。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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第13作「男はつらいよ寅次郎恋やつれ」作品データ

公開1974年(昭和49年)8月3日
上映時間104分
主な出演者【車寅次郎】渥美清
【諏訪さくら】倍賞千恵子
【鈴木歌子】吉永小百合
【高見修吉】宮口精二
【絹代】高田敏江
【みどり】高橋基子
【マリ】泉洋子
【歌子の姑】小夜福子
【諏訪博】前田吟
【車竜造】松村達雄
【車つね】三崎千恵子
【御前様】笠智衆
【源公】佐藤蛾次郎
【桂梅太郎】太宰久雄
【満男】中村はやと
同時上映超能力だよ全員集合!!(ザ・ドリフターズ)
観客動員数194万4,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san’s Lovesick

「男はつらいよ」全作品解説リンク

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