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寅さん全作品解説/第3作『男はつらいよフーテンの寅』(感想・評論・あらすじ・出演者)

本作をひとことで言うと

森崎東版・異色の寅さん

山田洋次以外が監督を務めることで、シリーズ中最も異色作となった第3作。力強い作風、生々しい底辺の暮らし、徹底してバカとして描かれる寅さんなど、他作品にはない独特の質感。人情味は薄めだが、バイタリティ豊かに生きる寅さんは極めて痛快で、本作の寅さんが一番好き!という人の存在も頷ける佳作。

マドンナ/新珠三千代

役名:志津(温泉旅館の女主人)

ホットな寅さんに対するクールな反応に、やや冷たさを感じてしまう損な役回りのマドンナ。独特のセリフまわし、着物姿の所作の美しさを見るに、現代にはこういう女優がすでに絶滅してしまったのではないかと思う。

目次

第3作「男はつらいよフーテンの寅」感想・評論

寅さんを「バイタリティ豊かなバカ」として描く、異色の森崎東ワールド

『男はつらいよ』は第2作で終わると考えていた山田洋次の予想を裏切り、松竹はさらなる続編の製作を決定。そこで山田洋次は、脚本は書くが監督は他をあたってほしいと会社に訴え、本作は森崎東が監督を務めることになった(代表作は『塀の中の懲りない面々』『ペコロスの母に会いに行く』)。シリーズ中、山田洋次以外がメガホンを取るのは本作と第4作『新・男はつらいよ』のみである。

監督が変わることで『フーテンの寅』は他の作品と比べて明らかに異色の作品となった。しかし、本作をベストにあげる人もおり、森崎東節とも言うべき独特の魅力を持った一本に仕上がっている。

まず、力強いテイストが特徴だ。真っ赤に彩られた『フーテンの寅』のタイトルバックに、煙を吹き上げ爆走するSLの映像が差し込まれる。セリフ、演出、映像の随所に、荒々しさが感じられる。劇中には何度も「貧乏人」という言葉が飛び出し、半身麻痺に侵され酒びたりとなった元テキ屋の哀しい姿も映しだされる。底辺の暮らしをオブラートに包まず見せることも、他のシリーズ作品ではあまり見られない。

そして、異色作である最大のポイントは、寅次郎を見つめる視点が、山田洋次作品とは大きく違うこと。本作の寅さんは、徹底して「バカ」として描かれているのだ。

失恋に至る流れを見れば明らかだが、本作の寅さんには共感できるポイントがほとんどない。現役テキ屋として、元テキ屋の先輩に見せる人情のシーンは見どころのひとつだが、それはアウトロー社会に生きる人間のものであって、一般市民が共感を覚えるのは難しい。

男はつらいよを熱心に見ている我々ファンは、寅さんをどこか自分たちの仲間、友達、味方、あるいは良き理解者として見ている。それは取りも直さず、各作品で繰り広げられる寅さんの奮闘努力に揺るぎない「共感」を覚えるからだ。

一方、本作における寅さんは、徹底して「バカ」な「あちら側」の人間として描かれており、笑いこそすれ「共感」するまでには至らない。これが本作を異色作たらしめている最大の要因であろう。

しかしながら、他の作品以上に力強くバイタリティ溢れる寅さんは、やっぱり魅力的だ。ラストシーンにおける「おまえのケツはクソだらけ!」の大合唱は実に痛快。このラストシーンにも本作の魅力が象徴されている。

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 森﨑東 (監督)
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第3作「男はつらいよフーテンの寅」 作品データ

第3作「男はつらいよフーテンの寅」 予告編

第3作「男はつらいよフーテンの寅」 あらすじ

寅さんこと車寅次郎(渥美清)は、信州(長野県塩尻市)を旅していた。旅館の女中(悠木千帆 その後、樹木希林に改名)に身寄り頼りを尋ねられて、妻と子供がいると嘘をついてしまう寅さん。「落ち目だなあ……」。今にも崩れそうなボロボロの安宿で、自身の不遇を嘆く寅さんから物語は始まる。

柴又帝釈天の参道にあるだんご屋・とらやに帰郷した寅さんは、共栄印刷の社長・梅太郎(太宰久雄)から縁談を勧められる。張り切って縁談に臨む寅さんだったが、お見合いの相手は旧知の仲である駒子(春川ますみ)。「お前亭主いたじゃねえか?」と寅さんが問うと、駒子は亭主に捨てられた顛末を涙ながらに話し始めた。同情した寅さんは一転、駒子の復縁に向けて一肌脱ぐことになった。

駒子とその夫・為吉(春乃ピーチク)をとらやに呼び寄せた寅さんは、2人の復縁をまとめ上げ、そのまま宴会を開くことになった。料理、酒、芸者を大量に手配し、最後は駒子と為吉をハイヤーに乗せて新婚旅行に行かせてしまう。寅さんがこれらの費用をすべてとらや持ちにしたことで大喧嘩が勃発。激しい口論の末、博(前田吟)の鮮やかな一本背負いが決まり、寅さんは翌朝、葛飾柴又を飛び出していった。

ひと月後。寅さんの叔父・竜造(森川信)と叔母・つね(三崎千恵子)が休暇を取って三重県・湯の山温泉に出かけると、寅さんは滞在先の旅館でなんと番頭をしていた。女中の話によると、旅館の美人女将・志津(新珠三千代)が、文無しの寅さんを見るに見かねて泊めてあげたところ、寅さんは志津に惚れてそのまま居着いてしまったのだという。滞在を終え、竜造とつねは頭を抱えながら柴又に帰っていった。

ある日のこと。志津の弟・信夫(河原崎建三)が、東京からバイクに乗って湯の山温泉に帰ってきた。帰郷の理由は、志津の旅館で働く染子(香山美子)の気持ちを確かめるため。信夫は染子と恋仲にあったが、染子が芸者をやめて金持ちの妾(愛人)になるという噂を聞き、信夫は矢も楯もたまらず帰ってきたのである。強圧的な態度で染子に迫る信夫を静止した寅さんは、逆上した信夫にナイフで脅され、橋の上から川に落っこちるなど散々な目に遭う。

寅さんは、志津が信夫の事で悩んでいることを知ると、信夫を「イロノーゼ」から救うべく一肌脱ぐことにした。信夫とともに染子の家に向かい、染子が妾になる本当の理由を確かめることにしたのである。染子が住むあばら家には、身体・言語障害を抱えた元テキ屋の父親・清太郎(花沢徳衛)が住んでいた。染子が妾になるのは、信夫が嫌いになったからではなく、この父親を養うためだったのだ。寅さんは、“おとっつぁんは染子が信夫と一緒になることを喜んでいる、俺の事は気にせず2人で暮らせと言いなすっている”、と清太郎の気持ちを代弁し、清太郎もそれにうなずく。こうして、信夫と染子は東京で新しい暮らしを始めることを決心した。

信夫の決心を知った志津は、自身も新しい暮らしを選ぶことを決心する。親から譲りうけた温泉旅館を売り払い、大学教授の吉井(高野真二)と再婚することを決めた。志津の気持ちを知った寅さんは、志津の部屋の障子越しに、まるで任侠映画の侠客のように別れの言葉を告げ、ひっそりと湯の山温泉を去っていくのであった。

ところ変わって、ここは新年を迎えたばかりのとらや。一同が寅さんの噂話をしていると、テレビの街頭中継になんと寅さんが写った。アナウンサーから「ご家族に向けてひと言どうぞ」と振られた寅さんは、「お志津よ、元気でやってるかい?新年おめでとう」。とカメラに向かって話しかけた。

数日後、寅さんは渡し船に乗って元気に旅をしていた。乗り合わせた乗客に啖呵売のセリフを披露し、最後は乗客一同でこのセリフを合唱して物語は幕を閉じる。「大したもんだよカエルのしょんべん、見上げたもんだよ屋根屋のふんどし、結構毛だらけ猫灰だらけ、お前のケツは糞だらけ!」。

第3作「男はつらいよフーテンの寅」 出演者

第3作「男はつらいよ フーテンの寅」主要キャスト

【車寅次郎】渥美清
【諏訪さくら】倍賞千恵子
【お志津】新珠三千代
【染奴】香山美子
【信夫】河原崎建三
【駒子】春川ますみ
【お澄】野村昭子
【徳爺】左卜全
【千代】佐々木梨里
【信州の女中】悠木千帆
【坂口清太郎(染奴の父)】花沢德衛
【車竜造】森川信
【車つね】三崎千恵子
【諏訪博】前田吟
【梅太郎】太宰久雄
【御前様】笠智衆
【源吉】佐藤蛾次郎

第3作「男はつらいよ フーテンの寅」

[吉井(お志津の夫)]高野真二/[為吉]晴乃ピーチク/[茂造]晴乃パーチク/[宴会の客]山本幸栄/[宴会の客]土田桂司/高杉和宏/[ハイヤーの運転手]高木信夫/[餃子屋の主人]大杉侃二郎/花井緑太郎/石井愃一/[アナウンサー]山内光男/光映子/白河恵子/水木涼子/秩父晴子/藤間恵美/[とらやの店員・友ちゃん]脇山邦子/坂田多恵子/[道子(お志津の娘)]酒井久美

※配役や役名は、書籍「みんなの寅さん from 1969」(著・佐藤利明)を参考にさせていただきました。

第3作「男はつらいよフーテンの寅」 作品データ

公開1970年(昭和45年)1月15日
同時上映ひばり森進一の花と涙と炎(美空ひばり、森進一)
観客動員数52万6,000人
※『男はつらいよ』寅さん読本/寅さん倶楽部[編]より
洋題Tora-san, His Tender Love
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