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「男はつらいよ」寅さん語辞典(寅さんがよく使う言葉・名言・決めセリフ・慣用句リスト)

「男はつらいよ」シリーズの主人公・車寅次郎こと寅さんは、独特な言語感覚を持っている。「男はつらいよ」シリーズ作品をたくさん見ているうちに、彼のユニークな話し方に影響を受けて、いつの間にか口調が寅さんになっていた…という方も多いはずだ。

本サイトでは、そんな“寅さんらしい言葉づかい・言い回し”の数々を「寅さん語」と名付け、以下にまとめた。日常生活における普段の言葉を、以下の寅さん語に置き換えてみるだけでアラ不思議。あなたの立ち居振る舞いは寅さんにグッと近づくことだろう。「寅さん語」は随時更新されるので、お楽しみに!

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目次

これであなたも寅さんになれる!?「寅さん語辞典」(随時追加予定)

相変わらずバカか?

主に葛飾柴又界隈の友人に対して使われる寅さんの挨拶。要らぬ確執を生まないよう、愛情を込めて、極めて明るい表情で言い放ちたい。

例)

蓬莱屋、相変わらずバカか?
第4作「新・男はつらいよ」より

あっし

私、自分、の意味。

例)

御前様、お久しゅうござんす。あっしですよ、寅ですよ。
第1作「男はつらいよ」より

あばよ

さようなら、またな、の意味。

例)

さくら、幸せになるんだぞ。これから寒くなるからな、赤ん坊には風邪ひかすんじゃねえぜ。あばよ。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

油にまみれて労働してるかい?

寅さんが主に義理の弟・博に向かって放った言葉。現代において使うのであれば、相手がオフィスワーカーでも特に気にせず「油にまみれて」と言い放ちたい。

例)

おめえ相変わらず、油にまみれて労働してるかい?
第2作「続・男はつらいよ」より

案配する

物事をいい感じに整える、適当な具合に処理を施す、の意味。

例)

俺はちょいと用事があって千住の方に行ってくるからな、タクシー代を案配してくれ。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

イチコロ

一撃でコロリと相手を仕留める、の意味。

例)

ゆんべの卵酒でもって、風邪のほうはもうイチコロよ、ハハハ。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

いにしえ

昔の、古い時代の、の意味。

例)

ほら、緑は異なるものよ、味なるものよって、いにしえの言葉にあるだろう?
第7作「男はつらいよ奮闘篇」より

色きちがい

性的な欲望を抑えられない人、の意味。

例)

最初からお前、ジーっとこんな風にして見ちゃだめだよのっけから、色きちがいと思われちゃうから。
第1作「男はつらいよ」より

イロノーゼ

ノイローゼ(感情面に問題があり、日常生活に支障を来している状態)の意味。しかし、寅さんはノイローゼを「イロノーゼ」と間違って覚えている。

例)

ははあ、そら完全なイロノーゼですよ。ええ。尻っぺたの青いインテリが、とかくかかりがちなイロノーゼってやつですね。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

インテリ

本来は「知識、学問、教養のある人」を指す言葉だが、寅さん的にはやや侮蔑的な意味合いも含んだ「頭でっかちの秀才」といったニュアンスでこの言葉を使う。寅さんは自身の学歴コンプレックスのためか、インテリを毛嫌いしている。

例)

おう?てめぇさしずめインテリだな?ああそうか!そのインテリが暴力を振るったわけだ。
第2作「続・男はつらいよ」より

印堂(いんどう)

ヨガでは、眉と眉の間のこと印堂と呼ぶ。寅さんは占い本を売りさばく際に、聴衆の一人を指して「失礼ですがあなた、眉と眉の間、すなわち印堂に陰りがある!」とかなんとかいってうまく本を売りつけるのである。

例)

見てみろよ、なあ? 眉と眉の間、これを人相学で印堂と言うんだよ。ほら、ここにちょっと陰りがあるだろう?な? 俺は初めてこの子を見た時にピーンと感じたな、その不幸せさを。
第9作「男はつらいよ柴又慕情」より

インドの通りゃんせ

寅さんは早稲田大学の授業に潜り込んだ際、富永教授(三国一朗)が話す「インダストリアルレボリューション(工業革命)」が聞き取れず、「それだよ、えー、“インドの通りゃんせ”っての? それ分かんない」と図々しく質問をした。

例)

教授「そもそも、インダストリアルレボリューションという用語は……」寅「はい!あの、その、それだよ、えー、インドの通りゃんせっての?それ分かんない」
第40作「男はつらいよ寅次郎サラダ記念日」より

煙太(えんた)

タバコ、を意味する古い隠語。劇中で寅さんが言うように「モク」と表現することもある。

例)

私が不良仲間とね、ヤツデの植え込みの陰でもって、エンタをふかして……あ、失礼。モクをふかしていたわけです。スパッ、フーッ。
第32作「男はつらいよ口笛を吹く寅次郎」より

おあにいさん、おあねえさん

「おあにいさん、おあねえさん」は、寅さんが仁義の中で使う常套句である(テキヤ、博徒、渡世人などが初対面の際に自己紹介代わりに挨拶することを「仁義」という)。

辞書によると「阿(あ)」という言葉には、人の姓や名前の頭につけて親しみを表す使い方がある(例:阿兄、阿父、阿母)。寅さんの「おあにいさん、おあねえさん」はおそらく、「阿兄さん、阿姉さん」にさらに相手を敬う「御」をくっつけて「御阿兄さん、御阿姉さん」になったのではないかと推測する。

例)

とかく、土地土地のおあにいさん、おあねえさんにご厄介かけがちなる若造でござんす。
第1作「男はつらいよ」より

おかめ

あまり器量が良くない女性、の意味。本来は「丸い顔、広い額、低い鼻の女性」のことを指す言葉。

例)

ヘッヘッヘッ、とんでもねえ。あんなみっともねぇおかめ、とても人前には…。
第5作「男はつらいよ望郷篇」より

お多福

あまり器量が良くない女性、の意味。寅さんは第14作「寅次郎子守唄」でマドンナに恋する大川弥太郎青年に「別の角度のお多福を探し求めていけ」とアドバイスした。

例)

しかし無駄ではないんだよ。お前がそれで諦めることができるから、な?また別の角度のお多福を探し求めていけばいいんだ。わかったか青年?
第14作「男はつらいよ寅次郎子守唄」より

おっかさん

お母さん、の意味。

例)

おっかさんよう!あんたの息子は本当に親孝行モンだよ。

男の端くれ

「〇〇の端くれ」とは、自分がある分野に通じた人物のひとりであることを謙遜しつつもアピールする際の言葉である。寅さんは自身の男らしい言動を誇りたい時にこの言葉を使う。寅さんの専売特許とも言うべき寅さん語だ。

例)

寅「だから俺がさ、そんなことしたらお前元も子もなくなるから、生活費は俺が見るからぶらぶら遊んでろってこう言ったんだ」タコ社長「粋なことを言うねぇ」寅「ええ?そりゃお前、俺だって男の端くれよ。」
第25作「男はつらいよ寅次郎ハイビスカスの花」より

おとっつぁん

お父さん、の意味。

例)

おとっつぁんよう!本当に良かったなぁ!

押っぺする

相手を押す、の意味。

例)

ちょっと押っぺしただけだよ、殴ったりなんかしやしねぇよ。
第2作「続・男はつらいよ」より

風の吹くまま、気の向くまま

これからどこに向かうかを訪ねられた時の、寅さんの返し文句。寅さんはこの言葉を巧みに用いて「粋な旅人」である自分をセルフプロデュースする。第23作で「気の向くまま、風の吹くまま」という言葉が初登場し、第27作以降は「風の吹くまま、気の向くまま」という表現が定着する。旅人の寅さんらしい言葉である。

例)

近藤「どちらへいらっしゃるんですか?」寅「んなこと俺にもわからねえよ。風の吹くまま気の向くままってやつだよ。道の真ん中でよ、こうやって指につばきつけるだろ?でこうやって出すわけだよ。で風が吹いてきたなってほうへ一緒につられてふわふわふわふわーっと行っちゃうわけだ」
第29作「男はつらいよ寅次郎あじさいの恋」より

キッス

キス、接吻、の意味。

例)

交際だろうとキッスだろうとペッチングだろうと、お好きなようにしなさいよ。
第1作「男はつらいよ」より

喫茶店(きっちゃてん)

寅さんは、喫茶店のことを「きっちゃてん」と言う。古めかしい言葉、難しい言い回しをたくさん知っている寅さんらしからぬ言い間違いである。

例)

表行ってコーシーでも飲んでこようと思ってよ。今来がけに見たら、なかなかしゃれた喫茶店(きっちゃてん)ができてたんで。
第8作「男はつらいよ寅次郎恋歌」より

キーパン

キーパンチャー、の意味。この言葉が登場した寅さん第1作の頃(1969年)には、電子計算機と呼ばれる古代のパソコンを操作する事務担当者のことをキーパンチャーと呼んだ。しかし、キーパンチャーをキーパンと略すのは世界広しと言えども寅さんしかいない。

例)

キーパン?なるほどねぇ。
第1作「男はつらいよ」より

向後万端(きょうこうばんたん)引き立って、よろしくお頼み申します

初対面の相手(寅さんの場合、主に同業のテキヤ屋仲間)に対して、かしこまった挨拶をするときの言葉。「向後万端」とは「これから先、あらゆる事柄について」といった意味合い。

例)

以後お見知りおかれまして、向後万端引き立って、よろしくお頼み申します。
第1作「男はつらいよ」より

具合

調子、様子、の意味。

例)

時計がちょっと具合が悪いから、修理してくらぁ。
第1作「男はつらいよ」より

クソして寝ろい!

文字通り「クソして寝ろ」の意味。第12作「私の寅さん」で、マドンナりつ子と最悪の初対面を果たした寅さんは、その夜イライラがMAX状態に。どんなものにも当たり散らす状態で、とらやにフラッとやってきたタコ社長を見るなりこの言葉を放った。

例)

うるせえタコ、クソして寝ろい!
第12作「男はつらいよ私の寅さん」より

苦労かけたなぁ

相手の苦労をねぎらう時の言葉。ねぎらいの気持ちをしっかりと込めて、しみじみと言い放ちたい。

例)

さくら、苦労かけたなぁ。
第1作「男はつらいよ」より

結構毛だらけ、猫灰だらけ、お尻のまわりは糞だらけ

最も有名な寅さん慣用句。何か不満を感じた際に相手に対する捨てゼリフとして、もしくは、寅さんが上機嫌な時に場を盛り上げる景気づけの言葉として使われることが多い。語呂の良い言葉を並べた慣用句で、特に意味はない。

例)

結構結構!結構毛だらけ猫灰だらけお尻のまわりは糞だらけ!
第6作「男はつらいよ純情篇」より

御一統様(ごいっとうさま)

ここにいらっしゃるみなさん、の意味。

例)

これはこれは、御町内の御一統様、長らくご無沙汰いたしました。
第1作「男はつらいよ」より

コーシー

コーヒー、の意味。

例)

なんとなく気分がすっきりしねえんでね、表行ってコーシーでも飲んでこようと思ってよ。
第8作「男はつらいよ寅次郎恋歌」より

腰掛うんち

洋式トイレ、の意味。トイレに限らず寅さんは洋風のものが全般的に苦手である。特にビジネスホテルについては「独房にいるみたい」で塩梅が悪いらしい。

例)

巡視「ビジネスでよろしゅおまんな?」寅「ああそりゃだめだ、勘弁して。俺ベッドってのはダメなんだ、ね? それと、小さな風呂、腰掛うんち、あれ全部ダメなんだよ。狭くってもいいから、畳の敷いた宿頼むよ。」
第39作「男はつらいよ寅次郎物語」より

コブつき

子連れであること、を意味する俗語。結婚相手に求める条件を語った寅さんは、「大それた希望は言わない、いっそ子連れの再婚女性でもいい」という文脈でこの言葉を使った。

例)

堅気のお嬢さんを嫁にもらいてえなんて大それたバカなことは考えちゃいねえよ、うん。いっそのことね、コブつきでもいいと俺はこう思ってるんだよ。
第8作「男はつらいよ寅次郎恋歌」より

ごめんなすって

これで失礼します、さようなら、の意味。寅さんは、初対面の人や目上の人に対して別れの挨拶をする際、この言葉を使うことがある。

例)

ふじ子「じゃあ寅さん、奥様にどうぞよろしく」寅「そういう面倒なものは持ち合わしちゃあおりません」ふじ子「あら、ごめんなさい」寅「いいえ、えへへ……。それじゃあ、ごめんなすって」
第34作「男はつらいよ寅次郎真実一路」より

今夜はこの辺でお開きにして

寅さんが家族とひと通り会話を楽しみ、良い気持ちになった時に放たれる寅さん語。この一言が出ると語らいは終了となり、寅さんは大抵寝床に向かう。「今夜はこの辺でお開きにして」の他に、「じゃあ今日はこの辺でお開きにして」「さて、今夜はお開きにして休みましょう」など、若干言い回しが異なるバリエーションがある。

例)

今日はいろんなことがあったんでね、どっと疲れちゃったよ。じゃあ今日はこの辺でお開きにして、ねっ? はぁ~疲れた疲れた。
第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」より

サ行の寅さん語(17)

最後の晩酌

レオナルド・ダ・ヴィンチの有名な絵画「最後の晩餐」を、寅さんは間違って「最後の晩酌」と覚えている。寅さんは、第18作「寅次郎純情詩集」のマドンナ・柳生綾の家に夕食に招かれた際に、壁に掛けられた「最後の晩餐」を初めて見た。

例)

こっちの窓際には大きな花瓶があって、そこに花がいっぱいだよ。こっちの壁にはキリストとその弟子がご飯を食べている。知ってるかあの絵?「最後の晩酌」。
第18作「男はつらいよ寅次郎純情詩集」より

さくら、止めるなよ?

家族と喧嘩をした寅さんが、さくらに仲裁に入ってほしい、喧嘩を止めてほしい時に使う寅さん語。本当は相手と和解をしたいが、自分のメンツを立てるため、自分からは謝ることができないシチュエーションで使う。なお、ダチョウ倶楽部のギャグ「押すなよ、押すなよ、絶対に押すなよ」の元ネタはこの寅さん語ではないかと考えられる。

例)

さくら、止めるなよ。俺はもう二度とこの家に帰って来ねえからな。ええ?こんな心の冷てえ人間の住むところによ。さくら、止めるなよ。
第5作「男はつらいよ望郷篇」より

女工

工場で働く女性労働者、の意味。寅さんは「若くて素朴な女性はたいてい工場で働いている」という先入観を持っている。

例)

近所の紡績の女工でもやってんのか?
第1作「男はつらいよ」より

しち面倒くせぇ

とても面倒くさい、の意味。

例)

しち面倒くせぇのなんのって、へへへ。
第1作「男はつらいよ」より

シャーゲー

芸者、の意味。

例)

いいか?相手はシャーゲーだよ?芸者は芸者らしく座敷で口説いたらいいんだよ。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

シャボン

石鹸、の意味。石鹸は鉄砲とともにポルトガルから日本に持ち込まれ、江戸時代末期まで「シャボン」と呼ばれていた。寅さんはなぜか古めかしい言い回しを好む。

例)

ナベさん、シャボンとこれ、どうもありがとう。
第18作「男はつらいよ寅次郎純情詩集」より

ジャンズ

ジャズ、の意味。

例)

あんたさんとご同様、東京の空の下、ネオンきらめきジャンズ高鳴る花の都に仮の住居まかりあります。
第6作「男はつらいよ純情篇」より

上等だよ!

相手と口論をしている際、相手の言葉を受けて立ち、言い返す時に出てくる反撃の言葉。

例)

上等じゃねえかよ。血の雨降らしてやるよ。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

職工

工場で働く労働者、の意味。寅さんはタコ社長が経営する朝日印刷の従業員を十把一絡げに「職工」と呼ぶ。なお、「職工」は主に寅さんの機嫌が悪い時に使われる言葉で、寅さんの機嫌が良い時には「労働者諸君」という言葉に変わる。

例)

おい職工!なんだよ朝っぱらからガタガタガタガタ機械回しやがって!
第15作「男はつらいよ寅次郎相合い傘」より

シンリガキー

心理学、の意味。寅さんは義理の弟・博から「これは心理学の言葉です」と言われるが、心理学という単語を知らなかったため、「シンリガキー」という英単語を想像してしまった。さらに博に対して「英語なんか使うんじゃないよ!」と怒ったのである。

例)

「いや、心理学の言葉ですけどね」「何だい、シンリガキーって」「つまりそういう学問なんです」「馬鹿野郎、ひとが真面目に話してるときにね、英語なんか使うんじゃないよお前は」
第6作「男はつらいよ純情篇」より

スッと言ってみな?

平易な言葉で結論から述べよ、の意味。寅さんは回りくどい言い回しや、カタカナ英語、難解な単語が大嫌いである。第37作「男はつらいよ幸福の青い鳥」において、葛飾区結婚相談員の近藤(笹野高史)がグダグダと長い説明をした際にこの言葉を放った。

例)

いや、ようよう、ようよう。あの、そう難しく言わないで、な? 分かりやすい言葉で、スッと言ってみな?スッと言ってみなよ?
第37作「男はつらいよ幸福の青い鳥」より

スパゲッチー

スパゲッティ、の意味。

例)

馬鹿野郎!あのお嬢さんがラーメンなんか作るかい。決まってるじゃねえか、スパゲッチーよ。
第2作「続・男はつらいよ」より

青年

若い人、の意味。寅さんは若い男性を見かけるとたいてい「青年」と呼ぶ。名前を知っている親しい間柄でも、冗談めかして「おい、青年」と呼ぶこともある。

例)

そこだよ!そこで最後のセリフを言う。アイ・ラブ・ユー…。できるか、青年!
第20作「男はつらいよ寅次郎頑張れ!」より

そうかそうか、草加、越谷、千住の先だ

江戸時代の奥州街道の宿場町は、日本橋から始まり千住、草加、越ケ谷と続く。このことから「そうか」という言葉のあとに「草加、越谷、千住の先だ」と続ける言葉遊びが生まれた。

例)

ほいきた梅の間。そうかそうか、草加、越谷、千住の先だと。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

造糞機(ぞうふんき)

寅さんが生み出した日本言語史上最強のパワーワード、それがこの「造糞機(ぞうふんき)」である。第30作「花も嵐も寅次郎」にて、沢田研二演じる三郎青年から「寅さんは恋をしたことがありますか?」と尋ねられた寅さんは、なかば呆れ気味に「俺から恋を取ってしまったら何が残るんだ。三度三度飯を食って屁をこいて糞をたれる機械。つまりは造糞機だよ」と答えた。準備段階での脚本では「ただ飯を食って屁をたれるだけのうすみっともない獣」という表現だったが(参考:『男はつらいよ 推敲の謎』著・杉下元明、ここにおそらく渥美清のアドリブが加わり、見事「造糞機」という言葉が生まれた。

例)

俺から恋を取ってしまったら何が残るんだ。三度三度飯を食って屁をこいて糞をたれる機械。つまりは造糞機だよ。
第30作「男はつらいよ花も嵐も寅次郎」より

そこが渡世人のつれえところよ

渡世人とは、各地をさすらいながら博打で生計を立てる人のこと。寅さんは往年の任侠映画の主人公を気取りながら、辛い状況の時にこのセリフを吐く。

例)

「兄貴、この家じゃ、のけ者にされてんじゃないのかい?」「……そこが、渡世人のつれえところよ」
第5作「男はつらいよ望郷篇」より

それを言ったらおしまいだよ

寅さんととらや一同が喧嘩をしている時、耐えかねた叔父ちゃんが「おまえなんか帰って来ない方がよかった。出ていけ!」的な発言をすることがある。この「出ていけ!」が飛び出した時に、寅さんがカウンターとして放つ常套句が「それを言ったらおしまいだよ」である。

ちなみに、第1作では「俺に出てけって言うのかよ?おいちゃんの口からそれが出たんじゃおしまいだよ?」という発言になっている。

例)

そうか、おいちゃんそういうことを言うかい。それを言ったらおしまいだよ?
第8作「男はつらいよ寅次郎恋歌」より

タ行の寅さん語(20)

大学出

大学出身者、大卒、の意味。寅さんは堅気の女性が結婚する相手は「大学出」であるべきだと考えている模様。

例)

あいつは大学出のサラリーマンと結婚させるんだい!
第1作「男はつらいよ」より

大したもんだカエルの小便、見上げたもんだ屋根屋のふんどし

頻出する寅さん慣用句。相手の発言や行動が、自分の想像を超えた時の感嘆を表すセリフとして使われる。ポジティブな感嘆としても使われるし、相手への皮肉を込めて挑発的に使われることも多い。なお、「大したもんだ~」は、正式には「田へしたもんだカエルの小便」である。

例)

ああそうか!そのインテリが暴力を振るったわけだ。へぇ~大したもんだカエルの小便、見上げたもんだ屋根屋のふんどしだよ
第2作「続・男はつらいよ」より

タコはイボイボ、ニワトリゃハタチ、イモムシ十九で嫁に行く

啖呵売の際に使用される寅さん慣用句。語呂が良い単語を七五調にまとめただけの慣用句で、特に意味はないと思われる。「イモムシ十九で」の部分は、「イモムシゃぁ十九で」と「シゃぁ」に気を付けて寅さんっぽく発音したい。

例)

結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻のまわりは糞だらけってね。タコはイボイボ、ニワトリゃハタチ、イモムシ十九で嫁に行くと来た!
第6作「男はつらいよ純情篇」より

ダチ公

友達、友人、の意味。

例)

おいちゃん、俺はちょっとダチ公んとこ行ってね、洋ラン借りてくるよ。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

達者でいたかい?

しばらく会っていなかった、親しい人に対して使われる挨拶。おいちゃん、おばちゃんに向けて使われることが多い。

例)

おいちゃん、達者でいたかい?
第2作「続・男はつらいよ」より

だるまじぇんし

達磨禅師、のこと。寅さんの「己について考え事をしていた」という発言に感心した御前様は、寅さんに達磨禅師の話を聞かせてやろうとする。「昔中国に、達磨禅師というお坊さんがいてな……」。寅さんは御前様の「達磨禅師」のイントネーションを真似して「だるまじぇんし」とおどけながら、近くにいた源公を思い切り蹴飛ばした。

例)

達磨禅師……だるまじぇんし!(源公を蹴飛ばす)なるほどなるほど。
第16作「男はつらいよ葛飾立志篇」より

旦那

見知らぬ成人男性を敬って呼ぶ際の呼称。

例)

ちょっとそこの旦那!流石いいところに目をつけたねぇ。

チョンガー

独身男性、の意味。現代ではほとんど使われない侮蔑的表現。

例)

さて皆さん、こうやってここで話をしておりますチョンガーの身の上のこのわたくしも、いついかなる時絶世の美人とばったり出会うということも…
第2作「続・男はつらいよ」より

ツバクロ

燕(ツバメ)、の意味

例)

夏になったら鳴きながら、必ず帰ってくるあのツバクロさえも、何かを境にぱったり姿を見せなくなることも、あるんだぜ?
第6作「男はつらいよ純情篇」より

つばきのついた汚ぇ食いカス

かの有名な「メロン騒動」第15作「寅次郎相合い傘」)より。貰い物のメロンをとらや一同で食べている時、突然寅さんが帰ってくる。寅さんの分を切り分けるのを忘れており、ヤバい!と思ったとらや一同は次々に「これ一口しか食べてないから(さくら)」「あの、私のを(おば)」「僕のをどうぞ(博)」「これ食べろよ(おじ)」と食べかけのメロンを寅さんに差し出す。ムっとした寅さんは嫌味たっぷりに差し出されたメロンを「つばきのついた汚ぇ食いカス」と言い放った。

例)

訳を聞こうじゃねえかよ。どうして、みんなのつばきのついた汚ぇ食いカスを俺が食わなきゃならねえんだい。俺のはどうしたの?俺のぉ!
第15作「男はつらいよ寅次郎相合い傘」より

釣りはいらねえよ

お店で会計をする時に言い放たれる寅さん語。しかし、寅さんは請求金額を確認せず、足りない紙幣を差し出しておきながら、「釣りはいらねえよ」と言ってしまうことが多々ある。

例)

釣りはいらねえよ、ばあさん。おめえさんのかわいいお孫さんが送ってくれた電気アンカの電気代の足しにでもしてくれたら嬉しいぜ。
第4作「新・男はつらいよ」より

連れ込み旅館

ラブホテル、の意味。ちなみに寅さんの母親・お菊(ミヤコ蝶々)は、京都で「グランドホテル佛蘭西ハイツ」という名前のラブホテルを経営している。

例)

当節はな、ちょいとした連れ込み旅館だって生意気にホテルだい。
第1作「男はつらいよ」より

てめぇ生きてたか?

しばらく会っていなかった、仲の良い友人に対して使う挨拶。寅さんは久しぶりに柴又に帰ってくると、近所の馴染みに向けて明るくこの言葉を言い放つ。

例)

てめぇ生きてたか?
第1作「男はつらいよ」より

出物腫れ物所嫌わず(でもの はれもの ところきらわず)

思わずオナラをしてしまったり、ニキビなどのデキモノができてしまった相手に対してかけてあげる、慰めの慣用句。

例)

お便所?あぁ行ってらっしゃい、出物腫れ物所嫌わず。我慢しちゃいけねえや、爆発しちゃうからな。
第1作「男はつらいよ」より

電気

コンピューター、の意味。寅さんは第28作でゲームウォッチを路上販売している際に、聴衆のおばあちゃんに向かって「今ねえ、電気のことを英語で持ってコンピューターって言うの」と自信満々に言い切った。実に味わい深い寅さん語である。

例)

よく知ってるねおばちゃん。今ねえ、電気のことを英語でもってコンピューターって言うの。そういうことしらなきゃ孫に笑われちゃうからあ。
第28作「男はつらいよ寅次郎紙風船」より

電子

精密機器や、テクノロジー全般のことを指す寅さん語。寅さんにとっては、なんとなく時代の先端技術っぽいものはすべて「電子」になる。よって、スマートフォンも、インターネットも、SNSも「電子」。

例)

電子やってるの?そりゃ大したもんだよ、今の世の中なんたって電子だからね。
第1作「男はつらいよ」より

当節

最近、近頃、の意味。

例)

博、お前んとこは2人でどのぐらいかかるんだ?当節は。
第7作「男はつらいよ奮闘篇」より

灯台の根元は暗いよ

灯台下暗し(とうだいもとくらし)、の意味。

例)

俺もなんだって初めからこのことに気が付かなかったかなぁ。ほれ、昔からよく言うじゃねえか。えー、灯台の根元は暗いよって。
第7作「男はつらいよ奮闘篇」より

トルコ

ソープランド、の意味。ソープランドはかつて「トルコ風呂」と呼ばれており、寅さんはこれを略して「トルコ」と言った。ちなみに「トルコ風呂」が「ソープランド」に改称されるのは1984年から。第21作「寅次郎わが道をゆく」が公開された当時(1978年)には「ソープランド」という単語が世の中に存在しなかった。

例)

寅「じゃあいいよ、俺案内するから。なっ?一緒に行こう。どこがいい?国会議事堂か?靖国神社?(中略)」留吉「あの実は、どうしても行きたかとこがあるとです。」寅「お前?ふーん……キャバレー?トルコ?トルコ?」
第21作「男はつらいよ寅次郎わが道をゆく」より

どん百姓(どんびゃくしょう)

相手を田舎者として蔑む際の言葉。

例)

田舎でも行ってどん百姓でもしてろよ。
第2作「続・男はつらいよ」より

ナ行の寅さん語(1)

菜っ葉服

工場労働者などが着る、薄青色の作業服、の意味。「職工」とセットで使われる。

例)

てめえらみたいな菜っ葉服の職工には高嶺の花だい。
第1作「男はつらいよ」より

ハ行の寅さん語(18)

バイ

商売、の意味。

例)

もっとマシなバイができねえのか、マヌケ!
第1作「男はつらいよ」より

はい、笑ってぇ~(はい、泣いてぇ~)

第8作「寅次郎恋歌」における寅さんの名言。寅さんは博のお母さんのお葬式で記念写真を撮影する際、本来はしめやかな場であるにも関わらず「はい、笑ってぇ~」と朗らかに言ってしまう。その直後、誤りに気づいてやり直すが、今度は「はい、泣いてぇ~」と言ってしまい、さらに顰蹙を買うのだった。いつか記念写真の撮影を行うチャンスが来たら、ぜひとも使ってほしい寅さん語。

例)

じゃあみんな、はい、写しますよ。はい、笑ってぇ~。

どうもすみません、ついうっかりしちゃいまして。すみません、もういっぺんやります、はい。はい、泣いてぇ~。
第8作「男はつらいよ寅次郎恋歌」より

バタァ~

寅さんは、記念撮影をする際の掛け声「チーズ!」を間違えて「バタァ~」と言ってしまう。元々は第1作で御前様が「バタァ~」と言ったことがきっかけ。

例)

あっ、俺バターって言った?あっ間違えちゃった!あれチーズなんだよね!
第9作「男はつらいよ柴又慕情」より

ハチの頭だとか、アリの金玉だとか

主に口論や議論の場で、相手に対して反論する際に使われる寅さん慣用句。口から泡を飛ばしながら、勢い良く最後までまくし立てて使いたい。「アリの金玉」は「アリのおちんちん」に変わる時もある。

例)

この野郎、女だとか愛だとかハチの頭だとかアリの金玉だとか御託ならべやがって!
第1作「男はつらいよ」より

お前もふうけん主義者だよ?今時人情とかさ、ハチの頭だとか、アリのおちんちんなんてのは古いんだよ。
第6作「男はつらいよ純情篇」より

パーマネント屋

美容院、の意味。寅さんは第10作「寅次郎夢枕」にて、幼馴染のお千代坊が美容院をやっていると聞いた時、「あぁパーマネント屋か」と言った。

例)

病院に勤めてるの? 看護婦か? あぁあぁ、パーマネント屋か。
第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」より

早メシ、早グソ、芸のうち

食事や用足しが早いことは立派な特技である、といった意味の寅さん慣用句。さくらのお見合い会場(第1作)にて泥酔した寅さんが一座に対して朗々と言い放った。

例)

早メシ、早グソ、芸のうちってね、見せたいぐらいだな。座ったと思ったらペロっとケツ拭いちゃうの。
第1作「男はつらいよ」より

ハローじゃないかあ!

第24作「寅次郎春の夢」にて、寅さんはアメリカ人のマイケル・ジョーダン(通称マイコー)に対してこう呼びかけた。「ハロー=外国人」というわけである。ちなみに、御前様もマイコ―に対して「ハロー!ハロー!」と呼びかけていた。

例)

おお!ハローじゃないかあ!
第24作「男はつらいよ寅次郎春の夢」より

ハンケチ

ハンカチ、の意味。寅さんはハンケチよりも手ぬぐいの方が好みのようである。

例)

ちょっとハンケチ出してハンケチ…(中略)汚いハンケチだなあおまえは。ったく…。きれいなのもってこい。おばちゃん新しい手ぬぐい一本出してくれ。
第30作「男はつらいよ花も嵐も寅次郎」より

ヒガイモーソ

被害妄想、の意味。寅さんは義理の弟・博から「それは被害妄想ですよ」と言われるが、被害妄想という単語をを知らなかったため、「ヒガイモーソ」という英語単語を想像してしまった。

例)

「そりゃ兄さんの被害妄想じゃないのかなぁ」「え?何だい、ヒガイモーソって」
第6作「男はつらいよ純情篇」より

BG(ビージー)

働く女性、現代で言う「OL」、の意味。語源は「business girl(=BG)」。なお「business girl」は売春婦を想起させるという理由で、NHKは1963年に放送禁止用語に指定している。ちなみに、寅さんがこの言葉を発した第1作は1969年の公開。

例)

妹を紹介するよ、これ見ろ、綺麗だろ?丸の内でもってBGやってんだよ。
第1作「男はつらいよ」より

ビチビチうんこ

下痢便、の意味。

例)

いや、あんまり戻ってくんの遅いからさ、うんこ行ってんだなぁと思って。ほら言ってただろソーセージにあたってビチビチうんこが止まらないって。
第41作「男はつらいよ寅次郎心の旅路」より

ビルヂング

ビルディング、ビル、のこと。寅さんは英語の発音が総じて古めかしい。

例)

おい、博。お前な、早速仕事の心配してやれ。な、お前のあのみすぼらしい工場じゃダメだぞ。もっと立派なビルヂングのOLでなきゃ。なっ?
第27作「男はつらいよ浪花の恋の寅次郎」より

東(ひんがし)

寅さんはなぜか、方角の東を「ひんがし」と言う。同様に、方角の南は「みんなみ」と言う。

例)

おお!いま東(ひんがし)に日が昇る。朝日まで私たちきょうだいの前途を祝福するようだ!
第24作「男はつらいよ寅次郎春の夢」より

ふうけん主義

考え方や行動が保守的である、の意味。「封建主義(ほうけんしゅぎ)」の言い間違え。

例)

それじゃお前なにかい?お見合いってのはふうけん主義だとこう言うのか?
第1作「男はつらいよ」より

不義密通(ふぎみっつう)

夫のある女性が他の男性と通じること。今でいう不倫の意味(参考:imidas 時代劇用語指南第24作「寅次郎春の夢」にて、居候のアメリカ人・マイコ―がさくらに抱き着いた際、それを見た寅さんはさくらとマイコ―が実は不倫関係にあるのではないかと疑い、この言葉が飛び出した。

例)

てめえあんなことされて平気なのか?てめえ博の目を盗んで、この野郎、不義密通してるんだろう?
第24作「男はつらいよ寅次郎春の夢」より

払底(ふってい)

入れ物の底を払っても何にも無い、ということから、物やコトがすっかりとなくなること。寅さんがタコ社長の工場を揶揄する時に使われた言葉。

例)

こんな田舎芝居にひと役買うようじゃ、よっぽど仕事が払底してるな?てめえの工場はとうとう潰れたか!
第8作「男はつらいよ寅次郎恋歌」より

不良(ふりよう)

文字通り、不良の意味であるが、注目したいのは発音である。寅さんはなぜか不良のことを「ふりよう」と発言する。

例)

おじ「とんでもない。こんなのに預けたら不良(ふりょう)になっちゃいますよ」寅「不良(ふりよう)はそっちだろう?何だい、雨の晩に若い娘手込めにしやがって。なあおばちゃん?」
第32作「男はつらいよ口笛を吹く寅次郎」より

ペッチング

ペッティング、の意味。

例)

交際だろうとキッスだろうとペッチングだろうと、お好きなようにしなさいよ。
第1作「男はつらいよ」より

マ行の寅さん語(6)

見せもんじゃねえぞ!

寅さんが葛飾柴又に帰ってくると、とらや(くるまや)では何かと騒動が起き、ご近所さんが「何事か?」と集まってくる。そんな時寅さんは決まって「見せもんじゃねえぞ!」とハリのある声で一喝し、ご近所さんを散らすのであった。

例)

おいこら!見せもんじゃないんだ帰れ帰れ!ほらっ!行きなって向こうの方へ。おいちゃん、今日はもう商売閉めだから閉めて閉めて。
第23作「男はつらいよ翔んでる寅次郎」より

みどり

醤油、の意味。醤油のことを「むらさき」と言うが、寅さんはこれを間違えて「みどり」と覚えてしまっている。第10作「寅次郎夢枕」にて、とらやの食卓でご飯を食べている時、さくらに「みどりを取ってくれ」と言ってしまった。

例)

寅「さくら、そこのみどりを」
さくら「ん?」
寅「みどりを取ってくれ」
博「(小声で)むらさき」
さくら「ああ、はい」
第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」より

民情視察

奈良で偶然御前様に会った寅さんは、御前様に「民情視察ですか?」と言った。本来は、為政者が人民の暮らしぶりを視察することを指す言葉だが、それを御前様に使うところがおかしい。

例)

また何ですか?こんなところへ、民情視察ですか?
第1作「男はつらいよ」より

もうろくジジイと歯抜けババア

故郷のおいちゃん、おばちゃんを他人に紹介する際の呼び方。おいちゃんのことを「口をフガフガさせてるもうろくジジイ」、おばちゃんのことを「浴衣着て腫れぼったくなってんの」(いずれも第11作「寅次郎忘れな草」より)とさらにヒドい呼び方をすることもあった。

例)

俺んとこだんご屋だよ。「とらや」ってんだ。俺、寅次郎っていうんだけど、また行くようなことがあったら寄んなよ。俺に聞いたって。まあ、もうろくジジイと歯抜けババアで、ろくな挨拶もできねえ連中だけど、気はいいからさ。
第19作「男はつらいよ寅次郎と殿様」より

モッツァルト

モーツァルトのこと。寅さんは第41作「寅次郎心の旅路」でオーストリアに行くまでモーツァルトのことを知らなかった。というか、モーツァルトが誰なのか、いまだにわかっていない可能性が高い。

例)

あのー、お話の途中ですけどもね、あの、モッツァルトって人は、そんなに偉いんですか? 偉い、うーん。日本で言うと偉さはどのぐらいなんだろうね。銅像になってくるぐらいだから、西郷隆盛ぐらいだろうな。
第41作「男はつらいよ寅次郎心の旅路」より

文部省選定

文部省がお墨付きを与えるほど立派な、素晴らしい、の意味。

例)

文部省もしかしなんだってこんな孝行娘を文部省選定にしねえのかなあまったくなあ。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

ヤ行の寅さん語(3)

湯布院

寅さんは、オーストリアの首都「ウィーン」と「湯布院」を聞き間違えたことがある。旅の途中で出会ったサラリーマン坂口(柄本明)に、どこか行きたい場所はないか?と問うたところ、「ウィーンです」と回答されたのに対し、ごく当たり前のように「ああ湯布院か」と言い放った。しかも二度。衝撃的な聞き間違いだが、何かと早合点の多い寅さんならばあり得る話だ。

例)

寅「お前これからどこ行くんだい?」(中略)坂口「はあ。あることはあるんですが、少し遠いんです」寅「いいよ構わねえ、言ってみな。どこ行きてえんだい?」坂口「ウィーンです」寅「ああ湯布院か。あれは遠いな」坂口「いえ、ウィーンなんです」寅「うん、湯布院だろ?九州のな。知ってるよ、あれ遠いよやっぱり」坂口「いえ、あのー、九州じゃなくてウィーンなんです」
第41作「男はつらいよ寅次郎心の旅路」より

ゆんべ

昨晩、昨夜、の意味。

例)

おかげさまで治ってな。ゆんべの卵酒でもってイチコロだよ、ハハハ。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

洋ラン

西洋の服、スーツ、の意味。

例)

おいちゃん、俺はちょっとダチ公んとこ行ってね、洋ラン借りてくるよ。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

ラ行の寅さん語(3)

理屈じゃねえんだ

寅さんは「自分が思うこと・感じることのみが真実・正義である」と暴走することがある。特に、愛するマドンナが窮地に陥った時にはそれが顕著である。そんな暴走モードの寅さんと会話をすると、どんなに筋が通っている話でも「理屈じゃねえんだ!」の一言で一蹴されてしまうのである。

例)

お前と俺とは別な人間なんだぞ? 早え話がだ、俺が芋食ってお前の尻からプッ!と屁が出るか? どうだ? ざまあみろい、人間はね、理屈なんかじゃ動かねえんだよ、ええ?
第1作「男はつらいよ」より

寅「知らねえ人間だったら、どんなに苦労しても構わねえってのかよ!」おじ「馬鹿だなてめえは!世の中にはな、行方不明になった人間は何万人といるんだ!その連中捜すのにいちいちこの俺が金出すのか馬鹿!」寅「こういうことは理屈じゃねえんだ!金よこせこの野郎」
第34作「男はつらいよ寅次郎真実一路」より

労働者諸君!

各作品に頻出する重要な寅さん語。寅さんはとらや(くるまや)の裏手に建つ朝日印刷の従業員一同を相手に、しばしば「労働者諸君!」の一言とともにメッセージを投げかける。放たれる言葉は下記用例の通り作品によって様々だが、総じて寅さんの機嫌が良い時にこの「動労者諸君!」が飛び出す。寅さんの機嫌が悪い時には「労働者諸君!」は「やい職工!」という呼び方に変わる。

例)

おはよう!労働者諸君!今日から僕は君たちの仲間だぞ。共に働き、共に語ろう。ハハハハハハ!
第5作「男はつらいよ望郷篇」より

労働者諸君!今夜は飲み、かつ、大いに語りたまえ!酒は社長さんからの提供です!
第11作「男はつらいよ寅次郎忘れな草」より

よし、俺もいよいよここに学びのペンを持つかあ。おい、労働者諸君!君らもハンマーを捨てペンを取れ!聞こえているのか!
第16作「男はつらいよ葛飾立志篇」より

ロハ

タダで、無料で、の意味。漢字の「只(ただ)」を分解すると、カタカナの「ロ」「ハ」になることから。

例)

いいかい?あんな薄汚え物置きみてえな部屋、俺だから我慢してロハで住んでやってんだよ。
第4作「新・男はつらいよ」より

【特別篇】寅さんの比喩表現(10)

寅さんは「あるモノ」を何か「別のモノ」に例えて表現することが実に巧みだ。その比喩表現はおよそ常人には考えつかないもので、寅さんならではのエキセントリックな言語感覚に我々はしばしば魅了される。「寅さん語」の特別篇として、寅さんの秀逸な比喩表現をまとめてみた。

アイスクリームをねじりうんこみたいにかぁーっと山盛りにしたヤツ

第20作「寅次郎頑張れ!」より。寅さんはワット君(中村雅俊)にデートの進め方を指南している際、ソフトクリームという言葉が出てこず、「アイスクリームをこうねじりうんこみたいにかぁーっと山盛りにしたヤツ」と言ってしまった。

例)

いまの若い娘はよく食うからねえ。あのガラスの器に入ったあれ、なんていうんだ、アイスクリームを、こうねじりウンコみたいにかぁーっと山盛りにしたヤツ。
第20作「男はつらいよ寅次郎頑張れ!」より

浦島太郎みたいな格好してアヒルの首にゴムテープつけて引っ張ってるやつ

第19作「寅次郎と殿様」より。「浦島太郎みたいな格好してアヒルの首にゴムテープつけて引っ張ってるやつ」と聞いて、みなさんは何を想像するだろうか? これは、寅さんが郷土の伝統漁法・鵜飼(うがい)を表現した際の言葉である。アヒルでもないし、ゴムテープでもないけど、なんとなく鵜飼であることは伝わってくる。

例)

ウガイ?あーあーあー!あの浦島太郎みたいな格好して、アヒルの首にあの、ゴムテープつけて引っ張ってるやつか?
第19作「男はつらいよ寅次郎と殿様」より

ウンコ食べたみたいな顔

第29作「あじさいの恋」より。人間国宝・加納作次郎(片岡仁左衛門)と仲良くなった寅さんは、記念撮影の際、硬い表情を崩さない加納に対してこの言葉を言い放った。人間国宝相手にこんな一言を平気で言える寅さんのメンタルの図太さが羨ましい。

例)

ダメだよ先生そんなウンコ食べたみたいな顔してたんじゃさあ。ねえ、もうちょっと愛嬌出して!にっこり笑って先生!
第29作「男はつらいよ寅次郎あじさいの恋」より

サルガニ合戦の臼みたいなアゴ

第11作「寅次郎忘れな草」より。とらやを初めて訪れたマドンナ・リリー(浅丘ルリ子)に家族一同を紹介する寅さん。博(前田吟)を紹介する際に「サルガニ合戦の臼みたいなアゴしてんのあれが(妹・さくらの)亭主だ」とものすごい比喩表現をした。言われてみれば、博は「臼」という表現がしっくりくる台形の輪郭をしている。ところで、おばちゃんの「浴衣着て腫れぼったくなんてんの」も相当ヒドい。

例)

口をフガフガさせてるもうろくジジィが俺のおじきでね。こっちの浴衣着て腫れぼったくなってんのがおばちゃんだ。まえっ面で口ぱかっと開けてんのが妹のさくら。その向こうでサルガニ合戦の臼みたいなアゴしてんのあれが亭主だ。その向こうは見た通り、タコ!
第11作「男はつらいよ寅次郎忘れな草」より

幸せの塊みたいなツラ

第10作「寅次郎夢枕」より。恋愛について語り合う寅さんととらや一同は、次第に軽い言い合いになり、お互いが幸せか不幸せかを言い争い始める。「俺は不幸せよ」と言う2代目おいちゃん(松村達雄)に対するカウンターとしてこの言葉が放たれた。何かと不幸自慢をする人にピシャリと言ってやりたい寅さんの至言である。

例)

なに言ってやがんだい、幸せの塊みたいなツラしやがって、不幸せぶるなっつってんだよ。
第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」より

出るもんが3日も出ねえようなツラ

第9作「柴又慕情」より。賃貸物件を探す寅さんに、よりによってとらやを紹介してしまった不動産屋(佐山俊二)と口論になる寅さん。「出るとこへ出るか」という不動産屋へのカウンターとしてこの言葉が放たれた。似たような表現で「鳩がフン詰まりしたようなツラ」というものがある。寅さんは相手を罵る際、「お通じが悪そう」という揶揄の仕方を好むようだ。

例)

寅「俺が俺の家に帰ってきてどうしてお前に6,000円払わなきゃならねえんだ、ふざけるない!」不動産屋「ほぉ~。じゃあ払えないって言うの?そんなら出るとこへ出ましょ?ねえ」寅「出るとこへってツラかこの野郎。出るもんが3日も出ねえようなツラしやがって」
第9作「男はつらいよ柴又慕情」より

テレビの裏っ方で言いますと、配線がガチャガチャ

第3作「フーテンの寅」より。寅さんはマドンナ志津(新玉三千代)から弟の信夫(河原崎建三)について相談された際、「彼は物事を難しく考えすぎる」という事を表現するのに、「テレビの裏っ方でいいますと、配線がガチャガチャに込み入ってる」という秀逸な例えを使った。ちなみに、寅さん自身の頭の中は「線が一本」だけで「叩けばコーンと澄んだ音」がするのだと言う。

例)

インテリというのは自分で考えすぎますからね。そのうち俺は何を考えていたんだろうって、分かんなくなってくるんです。つまり、このテレビの裏っ方でいいますと、配線がガチャガチャに混み入っているわけなんですよね。
第3作「男はつらいよフーテンの寅」より

夏の日のドブ板じゃねえけどもな、そり返ってるじゃねえか!

第10作「寅次郎夢枕」より。寅さんはとらやに居候する岡倉教授(米倉斉加年)と口論になった際、岡倉教授の少し張り出たアゴの特徴をとらえて、「夏の日のドブ板」と失礼過ぎる比喩表現を使った。寅さんは相手の外見・容姿をいじることが多いので、現代のコンプラと相容れない。

例)

てめえなんだい。夏の日のドブ板じゃねえけどもな、そり返ってるじゃねえか!しゃくれてりゃいいってもんじゃないんだよ!ええ!?
第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」より

鳩がフン詰まりしたような顔

第7作「奮闘篇」より。寅さんは、実の母親・お菊(ミヤコ蝶々)に無理やり会いに行かされることになる。道中、車の中で悪態をついているとその態度をさくらに注意され、そのカウンターとしてこの言葉が放たれた。っていうか、「鳩がフン詰まりしたような顔」って一体どんな顔?

例)

なんだよぉ…。鳩がフン詰まりしたような顔しやがってよぉ。そんなツラしてえのはこっちの方なんだい。
第7作「男はつらいよ奮闘篇」より

目まで毛糸がほつれて垂れ下がっちゃった犬

第6作「純情篇」より。朝日印刷からの独立を考える博(前田吟)に、独立すれば裕福な暮らしができると話す寅さん。その際、裕福な暮らしの象徴として「目まで毛糸がほつれて垂れ下がっちゃった犬」という秀逸な表現が飛び出した。おそらくプードルのような犬のことを指していると思われる。ちなみに、第15作「寅次郎相合い傘」に登場するサラリーマン兵頭の家庭は、まさにこのような犬を飼っている。

例)

さくらはさしづめ社長夫人だよ!こんな狭っくるしいアパートでもってよ内職なんかするこたあねえんだよ。芝生のある庭の大きなお屋敷で目まで毛糸がほつれて垂れ下がっちゃった犬かなんか抱いてよ、「あら奥様ごきげんよう」なんてよ!
第6作「男はつらいよ純情篇」より

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