寅さん映画をリアルタイムで知らない世代にとっては想像もつかないが、かつて寅さんは、大晦日あるいは初詣のついでに見る映画として、最新作の鑑賞が年中行事となっている観客が多く存在していた。
新作公開のたびに多くのファンが劇場に押し寄せ、映画会社・松竹を支える屋台骨となっていた「男はつらいよ」。そんな寅さん映画の観客動員数を、下記グラフとともにに振り返ってみたい。
各作品の観客動員数は「男はつらいよ寅さん読本」(寅さん倶楽部編/PHP文庫)を参考にした。
観客動員数トップは第12作「男はつらいよ私の寅さん」
観客動員数のトップ3は以下の通りである。
- 第12作 男はつらいよ私の寅さん 2,419,000人
- 第11作 男はつらいよ寅次郎忘れな草 2,395,000人
- 第30作 男はつらいよ花も嵐も寅次郎 2,282,000人
寅さんシリーズの観客動員数は、第1作「男はつらいよ」から、シリーズ最高の観客動員数を記録した第12作「私の寅さん」まで、右肩あがりの上昇を続ける。
それ以降の観客動員数はゆるやかに下降し、130万人から190万人あたりの幅で推移していくが、浅丘ルリ子3度目のマドンナ出演(第25作「寅次郎ハイビスカスの花」)、沢田研二の出演(第30作「花も嵐も寅次郎」)、三船敏郎の出演(第38作「知床慕情」)など、キャスティングに話題性のある回では観客動員200万人を突破している。
そして、ベストセラー『サラダ記念日』をモチーフにした第40作「寅次郎サラダ記念日」以降は、海外ロケ作品(第41作「寅次郎心の旅路」)、人気アイドル後藤久美子をフィーチャーした満男シリーズ(第42作~第48作)など、新機軸を打ち出すことで観客動員を回復していく。
動員に関してある程度の山や谷はありつつも、第8作「寅次郎恋歌」以降、一度も観客動員が100万人を下回ることがなかったということが驚異的である。