『旅と鉄道 増刊~寅さんの鉄道旅』/朝日新聞出版

鉄道ファン向けの鉄道雑誌『旅と鉄道』。2012年12月の増刊号サブタイトルはなんと、『寅さんの鉄道旅』である。

映画『男はつらいよ』に登場する鉄道にフォーカスを当てるという面白い企画で、生活にほとんど「鉄分」を含まない寅さんファンにとっても面白い内容になっている。

以下、本誌の内容をダイジェストでご紹介。

「対談!!山田洋次×川本三郎」

蒸気機関車をこよなく愛する山田洋次監督と、乗り鉄であり『男はつらいよ』フリークの評論家・川本三郎の対談。テーマはずばり「寅さんと鉄道」。

山田洋次監督が、男はつらいよ各作品に登場するSLについて、当時の思い出を語る貴重な対談となっている。以下は第5作『男はつらいよ 望郷篇』における”寅次郎とD51のカーチェイス”についての思い出。

山田:小樽機関区がありがたいことに初期型のD51を用意してくれたのです。鉄道ファンの間で「ナメクジ」と呼ばれるオールドタイマー。ところが機関区の人たちが総出でピカピカに磨いてくれたんですよ、親切に。それはうれしいんだけど、何だかお召し列車みたいで迫力がなくて閉口しました(笑)。

「寅さんが愛した町と鉄道へ」

『男はつらいよ』数々の名シーンを彩った駅と鉄道。ロケ地を巡りながらその現在の姿がレポートされています。

48作『紅の花』冒頭アバンタイトルに登場する因美線の美作滝尾駅。19作『寅次郎と殿様』で、寅さんが夢から目覚める下灘駅。8作『恋やつれ』と32作『口笛を吹く寅次郎』でロケ地に選ばれた備中高梁駅など。

読んでるだけでふら~っと旅に出たくなること必至。

「寅さんから昭和を学ぶ」

寅さんが身に付けているアイテム・食・住まいなどから、失われてしまった昭和を振り返るコーナー。

掛け守り:寅さんが、肌身離さず常に首から下げている(ときにはもてあそんだ挙句、わすれることもあるが…)掛け守り。昭和30年代の子供は(大人も)、掛け守りをよくぶら下げていた。

(中略)

経栄山題経寺(柴又帝釈天)のものだと思われているが、成田山新勝寺、あるいは渥美が個人的に親交していた入谷の小野照崎神社のものという説もある。

こんな具合に、「雪駄」「フェルト帽」「腕時計」「金の指輪」「革のトランク」「毛糸の腹巻き」など、寅さんの装備品について細かすぎる解説がついている。寅次郎コスプレイヤーなら必読。

「寅さんが乗った昭和の鉄道たち」

これが本誌の目玉企画。男はつらいよ全48作に登場する全列車、全鉄道路線のデータをまとめている。まだまだ現役の路線から、SL、そして現在は廃線となってしまったものまで、これぞ鉄道雑誌!と唸りたくなるほど詳細な解説と美しい写真が掲載されている。さすがに「永久保存版」と銘打つだけのことはある。

この一冊を片手に早速ロケ地めぐりに出かけられるほど、詳細かつ入魂の特集となっている。

「寅さんから人生を学ぶ」

寅さんの名セリフから、寅次郎の人生観を紐解くコーナー。恋愛・漂白・酒・学問・青春・処世術・触れ合い術など、最近の尻っぺたの青い若者にぜひ読ませたい内容になっている。

「『男はつらいよ』全48作品リスト」

これもまた『旅と鉄道』ならではの男はつらいよ全48作品紹介。ただの作品リストではなく、編集部の独自診断による各作品の「鉄分度」メーターが付いているのだ。

各作品の「鉄分度」をいくつかピックアップしてみよう。

  • 25作『寅次郎ハイビスカスの花』★☆☆☆☆
  • 35作『寅次郎恋愛塾』★☆☆☆☆
  • 9作『柴又慕情』★★★★★
  • 22作『噂の寅次郎』★★★★★
  • 48作『寅次郎紅の花』★★★★★

公開年、マドンナ、ゲスト、ロケ地、あらすじに加えて「鉄分度」と、これ一冊あれば男はつらいよ備忘録としては十分な内容になっている。

 

鉄道雑誌なのに『男はつらいよ』に関するリサーチと取材量が膨大、そして何よりも、作品に対する愛情がひしひしと伝わってくる素晴らしい一冊だ。

鉄道ファンのみならず、鉄道ノンケの寅さんファンにもおススメできる内容となっている。

      2016/05/31

 - 男はつらいよ書籍紹介