
第1作「男はつらいよ」は完成度が高く、ケチの付け所がほとんどない。しかし、何回か繰り返し鑑賞しているうちに「はて?」と思う箇所が2点あった。それはどちらも中盤のヤマ場、博とさくらの結婚式シーンに関連している。
疑問1:結婚式シーンになぜかおいちゃん(森川信)がいない
1つめの疑問は、博とさくらの結婚式に、なぜかおいちゃん(森川信)がいないことだ。結婚式シーンは登場人物が多いうえに、存在感の強い新キャラクターとして博の父親・諏訪飈一郎[すわひょういちろう](志村喬)が登場するので、おいちゃんの不在に気が付かなかった人も多いのではないか(私も最近まで気が付かなかった)。
結婚式シーンにおいちゃんがいない理由について、寅さんの舎弟・登を演じた秋野太作は著書「私が愛した渥美清」の中でこう説明している。
難を言うなら、最後の結婚式の場面だけが少し破綻していた。それはおいちゃんこと、森川信さんの単純なスケジュールの都合で、代わりに関敬六氏がわけのわからない〈どこかの人〉 役で突然出てくるからだった。
「私が愛した渥美清」秋野太作 127P
おいちゃんが結婚式にいないのは、単純においちゃん役の森川信のスケジュールが合わなかったからなのだ。結婚式シーンには司会者として、渥美清の浅草ストリップ劇場時代からの盟友・関敬六が出演しているが、もし森川信の出演が可能であったらならば、結婚式の司会はおいちゃんが務めていたのかもしれない。
疑問2:博の父親を結婚式に呼んだのは一体誰か?
2つめの疑問は、博の父親・諏訪飈一郎を結婚式に呼んだのは誰か?という点だ。
結婚式に諏訪飈一郎が登場した瞬間、寅さん、博、媒酌人のタコ社長夫妻、マドンナなど、主要な結婚式参加者は一様に「え、お父さん来てるの!?」と驚きの反応を見せている。つまり、この中に諏訪飈一郎を招待したものはいないと思われる。
作品の中で真相は描かれていないが、状況から推測すると、私は「さくらが呼んだ説」が一番有力ではないかと考える。さくらなら、博の実家の住所を知り得て飈一郎に手紙を出すことが可能だろうし、なにより、面倒見のいい優しい性格のさくらなら、結婚式を機会に絶縁状態にある博と父を復縁させようと考えるのはごく自然なことのように思える。きっとさくらは、博に内緒で飈一郎に手紙を書き、結婚式に飈一郎とその妻を招待したのだろう。

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