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渥美清主演のテレビドラマ『泣いてたまるか』最終話は、映画『男はつらいよ』の原型である

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渥美清が様々な役柄を演じる一話完結のテレビドラマ『泣いてたまるか』。山田洋次が脚本を担当したドラマ最終話は、映画『男はつらいよ』シリーズの原型ともいうべき作品である。最終話のタイトルは、ズバリ『男はつらい』。

作品には、後年の『男はつらいよ』に登場する車寅次郎の原型ともいうべきキャラクターが登場する。また、彼をとりまく登場人物の相関関係や、ストーリー、演出など、その後の寅さん映画でくりかえし登場するパターンがすでに使用されている。

以下、『泣いてたまるか』の最終話『男はつらい』と、寅さんシリーズの類似について、具体的に検証していきたいと思う。

ストーリー

渥美清演じる主人公は、義理やメンツを重んじるトラックの運転手・源さん。源さんはある女性を好きになるが、自分の可愛がる舎弟もその女性を好きであることがわかると、恋よりも面子をとって、その女性から身を引いてしまう。

自分にとって身近な誰かが、同じ女性を好きだとわかった瞬間に身を引く寅さん。これは「男はつらいよ」で、何度となく繰り返されたストーリーの型である(第10作『寅次郎夢枕』第14作『寅次郎子守歌』第34作『寅次郎真実一路』など)。そして、身を引く際に彼がひとりつぶやくのが「はああ、男はつれえやなあ……」というセリフである。

もうお分かりだろう。これは後年、車寅次郎がつぶやく「そこが渡世人のつれえところよ」に極めて近い。そのセリフを言い放つ際のカメラアングル、演出までもとても良く似ている。

渥美清の演技

本作の渥美清はセリフのはしばしに、寅さんが使いそうな古めかしい日本語を織り交ぜている。その特異な言語センスを見るに、渥美清がセリフを自身の言語センスでアレンジしていると考えていいだろう。

たとえば、太ったウエイトレスと狭い通路で差し向かいになった彼は「邪魔だ、どいてくれ」ではなくこう言う。「幅とるなあ……。どいてくれ」。

ヒロインが勤めるキャバレーの喧騒が気になる彼は、ヒロインを外に誘い出そうとこう言う。「ここじゃ楽隊(がくたい)がうるさくって話にならねえや」。

『泣いてたまるか』は毎回渥美清が様々なキャラクターを演じる一話完結のテレビドラマであるが、他の回に比べると最終話・源さんを演じる渥美清はのびのびしている。山田洋次の描く「粗野ながら気のいい男」は、渥美清が得意とするキャラクターであり、二人のコンビが相性の良いものになることを示唆しているように思う。

演出・配役

演出にも、その後の『男はつらいよ』の原型が見てとれる。主人公の源さん、ヒロイン、そしてヒロインに想いをよせる舎弟が遊園地で遊ぶシーン。ジェットコースターやメリーゴーランドに興じる3人の楽しそうな映像の背景には、優雅なクラシック音楽が流れる。

第9作『男はつらいよ柴又慕情』にも、楽しく遊ぶ主人公達のBGMにクラシックが使用されるシーンがあり、演出がよく似ている。ここまで一致していると、山田洋次が執筆した脚本に、そのような演出指示が書かれていたのかもしれない。

また、源さんのトラック運転の助手として、いつも源さんといっしょにいるミノル(前田吟)だが、このキャラクターは『男はつらいよ』の源公とまったく同じキャラクターといっていい。源さんを「アニキ!」と慕いながらも、女に惚れるアニキをニヤニヤと笑う姿は源公そのまんま。

前田吟は『男はつらいよ』の博役をはじめ、まじめなキャラクターの印象が強いが、本作のチャラチャラしたミノル役はハマっている。とくに、源さんを冷やかすときのニヤニヤ顔の憎たらしさといったら、佐藤蛾次郎のそれとはまた違った良さがある。

テレビドラマ『泣いてたまるか』 最終話『男はつらい』のあらすじ

さあ、それではいよいよ『男はつらいよ』のルーツとも言うべきテレビドラマ『泣いてたまるか』の最終話、『男はつらい』のあらすじをご紹介したい。作品の中に寅さんの原型がいくつも認められることに、ぜひご注目いただきたい。


この物語の主人公は千葉源吉、通称源さん。働き盛りの36歳、長距離トラックの運転手である。

彼は、少しお調子者の助手のミノル(前田吟)といっしょにトラックでの荷運びに精を出す。物語は、どしゃぶりの雨の中、二人がいつものようにトラック運送をしているシーンからはじまる。

助手ミノルは、前を走る車の中で、若い女の子が乱暴されているのを見つける。やがてその車は速度を落として路肩につけるが、そこからその乱暴を受けていた女の子が逃げだそうと車を飛び出してきた。

源さんとミノルは女の子を助けようと、乱暴していた男たちと大立ち回りの乱闘を繰り広げる。見事男たちをぶん殴ってやっつけた源さんは、女の子をお姫様だっこで救出。男はつらいよシリーズではついぞ見ることができなかった、渥美清のアクションシーンである!


女の子の名前は弘子(川口恵子)という。弘子は幼い頃に両親に捨てられ、その後親類のおじさんの世話になっていたが、このおじさんはお金のために、弘子の縁談を勝手に決めてしまう。弘子はそれがイヤで家出をして東京にでてきたのである。

その道中のヒッチハイクでへんな男につかまってしまったというわけだが、源さんは弘子のそんな無鉄砲な生き方を叱る。バーやキャバレーなど、いざとなれば夜のお勤めでも食べていけると考えている弘子を、「そんな仕事はいけない、俺に任せとけ!」とピシャリ。彼女にふさわしい仕事を按配してやることになったのだ。

源さんはさっそく、知り合いのとんかつレストランの経営者であるおやじ(花澤徳衛)に電話をして、ウエイトレスとしての働き口を半ばムリヤリに約束させてしまう。「給料は二割がたはずんでくれよな!」と無理難題までふっかける源さん。このあたりはノリがほとんど寅さん。


さて、源さんが働き口を世話してやったとんかつレストランには、源さんを慕う見習いコックの一郎(小坂一也)が勤めている。レストランに弘子がやってきてから、一郎は弘子に心惹かれていく。

ある日、一郎は、源さんと弘子の仲がどうなっているのか、源さんにたずねる。源さんは弘子のことを好きなのではないか?源さんは答える。「馬鹿野郎!おれは人助けでやってるんだ、下心なんてこれっぽっちもないや!」。源さんはこうして威勢のいい啖呵をきり、それを聞いた一郎はひと安心、源さんに気兼ねすることなく、弘子のことを想うことができるとホッとするのであった。

でも源さんはわかっているのだ。自分が弘子に惚れてしまっていることを。

「まずいな……。こりゃまずいな……」。 源さんの美学としては、舎弟が惚れている女に自分も惚れてしまうわけにはいかないのである。男としての面体を重んじる源さんは、弘子を一郎に譲る決意をするのであった。


源さんのトラック仲間も、源さんと弘子はよろしくやってるんだろ?と茶化すが、源さんはそれムキになって否定する。弘子への気持ちは親切心だと見栄をはり、強がる源さんであったが、弘子への想いは日に日に募る。心の奥底で源さんは自分に語りかけるのであった。「弱ったぞ、源さん……」。

弘子への募る想いをいよいよがまんできなくなった源さんは、弘子へ愛の告白をしようと決意をする。なんとか気持ちを奮い立たせて弘子の勤めるレストランにむかうが、あいにくその日は弘子がお休みの日。なんとその日、弘子と一郎は2人仲よく連れ立ってデートに出かけていたのであった。

デート中、弘子の気持ちをたしかめようとする一郎。「おれのこと嫌いか?」「ううん、嫌いじゃないわ……」「じゃあ源さんのことが好きなのか?」「源さんはいい人だけど……おもしろい人よ」。

弘子の返答を聞いて、脈あり!と判断した一郎は、いよいよ弘子への想いを強くする。一方、弘子はそんな風にあいまいな返事をしていたが、その態度から源さんに想いを寄せていることは明白である。源さんと弘子は相思相愛の仲なのだ。


翌日、一郎は源さんに気持ちを打ち明ける。実は弘子を好きになってしまった、源さんは弘子のことをあきらめてくれないか?と。その話を聞いて源さんはショックを受ける。実は源さんもその時、「弘子を好きになってしまったからあきらめてくれ」と一郎に打ち明けようと思っていたのである。

でも、哀しき源さんはここでもまた見栄をはって強がってしまう。「弘子のことを好きになるのはお前の自由だい!おれに断ることなんかないぞ!」。この返事を聞いて、一郎はついに弘子と一緒になろうと決意をするのであった。

さて、源さんと一郎がこんなやり取りをしている最中、弘子は源さんの家を訪ねていたのであった。源さんの本当の気持ちを確かめるため、家までやってきたが、源さんは不在。ああ、なんとタイミングの悪い源さんと弘子であろうか。


弘子をあきらめた傷心の源さんは、しばらく弘子の働くレストランには顔を出さずにいた。やがて数週間が過ぎ気持ちの整理がつきはじめたころ、源さんは一郎と弘子の様子が気になり、久しぶりに一郎に電話をかけるが、ここで思わぬ知らせを聞く。なんと弘子が突然店を出て行ってしまったというのである。

弘子は、「別の店で働くことにした」「もう連絡をしないでほしい」「もし連絡をしてきたら絶交までする」と言い放ち、店を飛び出していったという。それを聞いた源さん、ここでもまた舎弟の面倒を見ようと一肌脱ぐのである。「ったくしょうがねえなあお前は!ここはひとつ源さんがうまく話をまとめてやらあ!」


弘子を説得しようと、弘子が勤めるキャバレーにやってきた源さん。仕事が終わる頃を見計らい、店の裏手に弘子を呼び出す。

弘子は「ひょっとして源さんは自分のことを好きだと言いに来たのではないか?」という淡い期待を持っている。しかし、源さんの口から出てきた「一郎はお前のことをどれだけ思っているか知っているのか?」という言葉で、その期待はあっさりと裏切られるのである。

弘子は思い切って、心に秘めた想いを打ち明ける。「わたし好きな人がいるの!やっと気がついたの、本当に好きな人のことを。そう、源さんなのよ!」

源さんは驚きと嬉しさと同時に、一郎のことが頭に浮かんで戸惑いの気持ちを隠せない。「ちょ、ちょっと待て!おまえの気持ちはわかるんだが、一郎に顔向けができねえ、おれの男が立たねえんだ、勘弁してくれ!この通りだ!」

源さんはこの期におよんでまで、男としての面体を通すために弘子の想いから逃げてしまう。そのやりとりを遠くから見ていたミノルも、あちゃあ~とがっくり。何やってんだよ源さん……。

「源さんのバカ!」。弘子はその場から立ち去る。途中、源さんが追いかけてきてくれることを期待して後ろを振り返るが、源さんは追いかけてくる素振りを見せない。そして弘子は泣きながら去っていくのであった。


その後、源さんは自分が受け持つトラック運送の路線もかわってしまったこともあり、弘子の働いていたレストランからは足が遠のき、かれこれ一年が過ぎようとしていた。そんなある日、源さんは久しぶりに一郎の様子を見に行こうと、レストランに顔を出す。

レストランにつくと、源さんとの再開を懐かしむ一郎は、弘子の近況を知っているかと源さんに尋ねる。ある日突然姿を消した弘子は、その後、男と結ばれて結婚したというのだ。弘子から届いたという手紙を源さんに読ませる一郎。

『ご無沙汰してすみません。実はわたくし、結婚するのです。とってもいい人なのです。いつぞやはわたくしのことを気遣ってくれて本当にありがとうございました。日本一のコックになってください。末筆ながら、源さんにもよろしくお伝えください』

手紙を読み終えた源さんは、サバサバした様子で一郎を励ます。「女は弘子だけじゃねえんだ、元気出せよ!」と。でも哀しいかな、それはまるで自分にいい聞かせているようにも聞こえるのであった。

その様子を見た一郎は、「源さん、やっぱり弘子のことを好きだったんじゃないか?」と尋ねる。しかし、源さんはこう答えた。「馬鹿野郎!大人をからかうんじゃないよ!仮にそうだったとしても、友達の女を取るなんてマネはしねえや!」。

一郎は答える。「でも源さん、おれがその立場だったら、本当に惚れているんだったらそうするかもしれないよ。それが男と女なんじゃないのか?」。源さんは怒って答える。「馬鹿野郎!なんでい、人の気持ちも知らねえでよ……。男はつれえやなあ……」。

弘子をめぐるやりとりはこうして決着し、ぐすんとこぼれ落ちそうになる涙をこらえながら、源さんは手をふり去っていく。

去っていく後ろ姿にあわせて主題歌である『泣いてたまるか』が流れ出し、あたかも、男はつらいよのエンディングシーンのような、泣き笑いの幕切れが訪れるのであった。

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