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東大の入試問題にも登場した「寅さんの名言」

東京大学の国語入試問題に、『男はつらいよ』寅さんのセリフが問題文として登場したことがある。

書籍『東大入試 至高の国語「第二問」』は、東京大学の国語入試問題の中でも、とりわけ難易度が高いとされている第二問目の過去問題を取り上げ、東大が求める人物像について考察する本。

さっそくこの本から、寅さんの名言が問題文に使用された、1992年の国語入試問題を引用してみよう。

【問題】 次のア・イ・ウは、同じ主人公が登場するシリーズものの映画のセリフである。ア・イ・ウのいずれかを選び、それを手掛かりとして、感じたこと、考えたことを、160字以上200字以内で記せ。

ア 「インテリというのは自分で考えすぎますからね、そのうち俺は何を考えていただろうって、分かんなくなってくるんです。つまり、このテレビの裏っ方でいいますと、配線がガチャガチャにこみ入っているわけなんですよね、ええ、その点私なんか線が一本だけですから、まァ、いってみりゃ空っポといいましょうか、叩けばコーンと澄んだ音がしますよ、なぐってみましょうか」

イ 「寅さん、人はなぜ死ぬのでしょうねえ」
「人間?そうねえ、まァ、なんて言うかな、結局あれじゃないですかね、人間が、いつまでも生きていると、陸の上がね、人間ばかりになっちゃう、うじゃうじゃうじゃうじゃメンセキが決まっているから、みんなでもって、こうやって満員になって押しくらマンジュウしているうちに、足の置く場がなくなっちゃって、隅っこに居るやつが、アアなんて海の中へ、パチャンと落っこって、アップ、アップして『助けてくれ!助けてくれ!』なんてね、死んじゃう。そういうことになってるんじゃないですか、昔から。そういうことは深く考えないほうがいいですよ」

ウ 「梅の花が咲いております。どこからともなく聞こえてくる谷川のせせらぎの音も、何か春近きを思わせる今日この頃でございます。旅から旅へのしがない渡世の私共が、粋がってオーバーも着ずに歩いておりますが、本当のところ、あの春を待ちわびて鳴く小鳥のように、暖かい陽ざしのさす季節に、恋い焦がれているのでございます」

東大入試 至高の国語「第二問」 / 朝日新聞出版社

私も本問にトライをしてみた。以下回答例である。

【選択】イ
文中に登場する”寅さん”という人物は、自分独自の視点を持ち世の中を捉えている。「死」という事象についても、突飛ではあるがなんとも腑に落ちる理解をしており、そこには他人の考えや借り物の言葉が一切ない。人は世間を意識するあまり身の丈にあわない他人の考えをあたかも自分独自のものであるかのように執着しがちだが、彼のように気取らず気負わず、自分を基準に生きることが豊かな人生を送る秘訣なのではないかと感じる。

寅さんマニアの受験生であれば、各セリフがどの作品からの引用かもあわせて回答したいところである(点数があがるかどうかはさておき)。

さて、問題文に登場した各セリフの出典元作品は以下のとおり。

セリフ【ア】=第3作『男はつらいよフーテンの寅』

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 森﨑東 (監督)
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マドンナ志津が、大学生である実弟のことを寅さんに相談した際に発せられたセリフ。この時の寅さんは、ノイローゼを「イロノーゼ」と勘違いしたまま自説を朗々と披露し、逆に学の無さを丸出しにしてしまう。バカだねぇ……。

セリフ【イ】=第18作『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 山田洋次 (監督)
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自らの死期を悟ったマドンナ綾が、死の不条理について寅さんにこぼすシーンから。寅さんには「死」という根源的な問いに対して、哲学的な回答を返せるほどの学がない。しかし、学が無い分、全身全霊で道化を演じることによって精一杯の慰めを綾に捧げる。マドンナ綾は、そんな寅さんの飾らない言葉に深い癒しを得て、余命幾許もないわずかな日々に、生まれてはじめて愛の喜びを得ることになるのである。

セリフ【ウ】=第4作『新・男はつらいよ』

渥美清 (出演), 倍賞千恵子 (出演), 小林俊一 (監督)
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松竹映画のマークが登場した直後、アバンタイトルでの寅さんのモノローグから。うら寂しい山村で、ひとり茶屋を営むおばあちゃんの姿を見ながら、しみじみとつぶやく寅さんの言葉である。「つりはいらねえよ」の名言が男はつらいよシリーズではじめて飛び出すのがこのシーン。

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