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『男はつらいよ大全』/中央公論新社

本書は、『男はつらいよ』1~48作(&特別篇)の劇場パンフレットを完全復刻し、上下巻に収録した寅さんマニア垂涎の一冊。

付録として、寅さん劇中の名言をそのまま収録したCD「寅さん大いに語る名セリフ集」や、山田洋次によるエッセイ「寅さんと私」などが収録されている。

この本、とにかくずっしりと重い。上下巻あわせて5キロほどの重みがある。パンフレットも49冊分積み重なると尋常でない重さとなるわけで、『男はつらいよ』シリーズの凄さを物理的な重みで感じることができる。

私は本書で初めて知ったが、男はつらいよ劇場パンフは第1~5作、7作、10作では製作されていない(本書では、パンフのない作品は当時のスチール写真やポスターを使い、パンフ風に構成されている)。つまり、男はつらいよシリーズは第6作『純情篇』から初めてパンフが製作されるのだが、この内容がとても興味深い。

例えば、第6作パンフレットの表紙には、大ナギナタをかまえて見栄を切る渥美清の写真が掲載されている。これは劇中にはない衣装で、こういったパンフ用撮り下ろし写真が表紙となるのは、第6作、第8作のみ。

第6作パンフには、”渥美清”とクレジットされたインタビューが掲載されているが、以降のパンフでは”車寅次郎”として登場するため、これは珍しい。シリーズ初のパンフということで、渥美清側も自身の見せ方や立ち位置がまだ定まっていなかったのだろう。

この他にも、1970年代までの初期作品パンフには、珍品がちらほらと登場。「寅さんTシャツ」「寅さんゲーム」など、販促用の寅さんグッズが何回か登場する中、第9作『柴又慕情』にはなんと「寅さん浴衣」に身を包む吉永小百合の写真もある。これはサユリスト必見の超激レア写真だろう。

スチール写真は総じていい味を出しており、特に第15作『寅次郎相合い傘』などは、寅とリリーの微笑ましい未見写真のオンパレード。

現在、男はつらいよ70年代作品のパンフには、2,000円から4,000円ほどの値がつくのが相場。加えて、もはや中古品がなかなか出まわらない作品もあるため、すべてコンプリートするのはなかなかの難易度だろう。

本書は5万円程度と値が張る買い物ではあるが、貴重なパンフを完全復刻、完全収録しており、値段以上の価値があると断言できる。一線を越えてしまった寅さんマニアであれば、手元に置いていてもよい一冊だろう。

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