『男はつらいよ』を一度も見たことがないという人に「どの作品がオススメでしょうか?」と聞かれたら、何作をオススメするべきだろうか。
今回は『男はつらいよ』未体験の人におススメしたい3本を選定した。選定の基準はズバリ「映画として面白い」である。脚本(ストーリー)がよくできており、寅さんシリーズの前提を知らなくても、誰もが楽しめる3作品を選んでみた。
おすすめ1 第5作『男はつらいよ望郷篇』(1970年)
この作品は、葛藤→克服→挫折→また葛藤→また克服→また挫折…と、ひとつ問題を解決するたび、また新たな問題があらわれる、脚本のお手本のような見事なストーリー構成となっている。新たな葛藤があらわれるたびに、渥美清がおかしさと悲しさの入り混じった絶妙な演技でそれを克服していく様が小気味良い。
極めつけは、シリーズ中もっとも残酷かもしれない寅さんのフラレっぷり!このフラれっぷりも、泣き笑いを同時に含んだおかしい演技で、実に味わい深いワンシーンとなっている。
寅さんってフラれ続けるんでしょう?というイメージをお持ちの方には、もっとも期待どおりの一本とも言える作品である。
おすすめ2 第15作『男はつらいよ寅次郎相合い傘』(1975年)
寅さんの最愛の人、リリーがマドンナとして登場する2回目の作品。この作品、なんと言っても、船越英二演じるパパ、浅丘ルリ子演じるリリー、そして寅さんの3人で続ける旅路が面白い。
ある日偶然リリーに再開するシーンから、意気投合した3人が結託する詐欺まがいの商売、パパの過去の思い出を清算する冒険、そして寅とリリーの喧嘩別れと、根無し草の3人が肩寄せ合いながら繰り広げる珍道中がなんとも言えず心地良いのである。
そして、物語後半には、男はつらいよシリーズ屈指の名場面ともいえる「寅のアリア」「メロン騒動」「相合傘」の3本立てがぎゅっと詰まっている。リリーのことを心から思いやる寅さんのあたたかい気持ちに、胸打たれる作品である。
おすすめ3 第17作『男はつらいよ夕焼け小焼け』(1976年)
男はつらいよシリーズは、その人の趣味嗜好や人柄によって、ベスト作品がバラける印象があるが、この作品をシリーズベストに挙げる人は非常に多い。シリーズ映画ということを抜きにして、単体作品として極めて完成度が高く、どんな人にも安心しておススメできる作品である。
あっと驚く予想外の展開が複数用意されており、とりわけ物語のラストには驚きと同時に、なんともヌケのよい寅さんらしい結末が訪れる。作品鑑賞後にはきっと「寅さんっていいなあ!」と思っていただける作品だろう。
さて、ここまでおすすめした寅さん作品については、「ゴー!(5作) いこう!(15作) いいな(17作)寅さん!」と覚えていただきたい。寅さんシリーズ鑑賞の参考になればこれ幸い。
※でも本当のオススメは、第1作からの順番での鑑賞なのだが、これについてはまた別の機会に書きたいと思う。