浅草フランス座時代の渥美清は、台本を無視したアドリブ芸を繰り出し、共演者をセリフにつまらせることが多々あったという。共演するコメディアンをそうやって蹴落とすことで、自分がより多くのスポットライトを浴びようと、斬ったはったの演技合戦を繰り広げていたのだ。
『男はつらいよ』においても、渥美清のアドリブ芸が顕在であったのは有名な話である。共演者が演技とは思えないマジ笑いしている時、ひょっとしてここで渥美清のアドリブが炸裂していたんじゃないかと思うことが、シリーズ作品中多々ある。
下記動画は第30作『男はつらいよ花も嵐も寅次郎』の予告篇映像であるが、渥美清のアドリブと思われる箇所がある。2分17秒からの寅次郎のセリフと、そのあとのさくら、おばちゃんの笑顔にご注目いただきたい。
寅「哀れ母を失った三郎青年の運命や如何に。その鍵を握る人それは誰(たれ)あろう」
さくら「ねえ!」
寅「ねえというさくらの声も、むなしく闇に消えていく…」
さくら・おばちゃん「(笑いを堪えきれず)わははは!」
さくらとおばちゃんの表情、笑い、タイミングを見ていると、これは確実に演技ではない。渥美清のアドリブに触発された、明らかな素の笑いである。「ねえ」という呼びかけに間髪入れず、「ねえというさくらの声も、むなしく闇に消えていく……」というセリフが淀みなく出てくるあたり流石である。
なお、作品本編ではこのセリフは使われていないので、さくらとおばちゃんの笑いによってNGになったのかもしれない。「男はつらいよ」の撮影現場では、こんな風に渥美清のアドリブがひょいっと顔を出し、堪えきれず笑いを漏らす共演者がたくさんいたのだろう。
寅さん全作品解説/第30作『男はつらいよ花も嵐も寅次郎』(1982年12月公開)
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