『男はつらいよ』40周年を記念して出版された、寅さんの名言集。2008年に第1弾、2010年に第2弾が出版された。
収録されているビジュアルは、『男はつらいよ』40周年プロジェクトのひとつとして、JRや東京メトロの駅構内に掲示された交通広告がもとになっている。この広告が性別を問わず幅広い年齢層に好評だったようで、急遽1冊の本にまとめられたものが本書である。
中身は見開き2ページに寅さんのモノクロ写真と劇中のセリフが並ぶシンプルなもの。しかし、渥美清の顔が醸し出す強いインパクトと、素朴ながら人生の本質をついた言葉が並ぶだけでぐっと心を掴むメッセージに変貌する。モノクロ写真の上に真っ赤なフォント、その他には作品名のみというシンプルな装丁も素晴らしい。
渥美清の写真は第1作から第25作くらいまでのものが中心だと思われる。骨ばった輪郭に、ハリのあるふっくらとした肉がのり、目元には精気が溢れている。若いころのギラギラした寅さんがいっぱいだ。
かつて渥美清は映画『ブワナ・トシの歌』のロケでアフリカを訪れた際、現地人に「顔でわかる、この人、偉い顔」「あんな立派な顔初めて見た」と言われたことがあるという。情報をそぎ落とした装丁とモノクロ写真のおかげで、本書では渥美清の持つ”顔の強さ”がさらに際立つ。思わず、いい顔だなあと見惚れてしまうことだろう。
掲載されるセリフは、恋愛・仕事・家族・希望・人生論など、80近くのものが掲載されている。恋愛中の人には恋の言葉が、人生に悩む人には寅さんのポジティブな言葉が、自然と胸に迫ってくることだろう。その人が必要としている言葉をその人自身が無意識のうちに選びとるわけだから、人に贈るプレゼントとしては最適かもしれない。
何気なくパラパラと眺めているだけでも、心に染み入るものがある本だ。