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『寅さんは税金を払っていたのか?』/大村大次郎

『男はつらいよ』おなじみの登場人物を借りて、わかりやすく税金の解説をするというコンセプトの一冊。著者の大村大次郎は元国税局の調査員。現役時代の経験を元に、税金関連の著作を多数持つ税務コンサルタントである。

寅さんの世界には、経営者から、だんごやの大将、お寺の住職、サラリーマン、そして住所不定の自営業者である寅さんまで、さまざまな職業の人物が登場する。彼らの税金事情を解き明かすことは、そのまま日本の税金事情を述べることとイコールであると筆者はいう。たしかに、一般市民の税金について説明する時、『男はつらいよ』の住人たちはよいサンプルになるかもしれない。

筆者によると、税務署が寅さんから税金を取り立てるのは、とても難易度が高いことであるらしい。まず住所が不定。身内であるくるまや一同ですら居場所がつかめない。そして、仮に居場所がわかっても、寅さんが帳簿をつけているはずもなく、現金商売であるテキ屋稼業だから所得隠しも容易である。

このように所得のわからない相手の場合、税額は交渉によって決めるしかないそうだが、うるさい人や押しの強い人、つまり寅さんのようにメンドくさい人には税金を少なめに提示することも多いらしい。税務署員も人の子ですからねえ。

実際に劇中でも、タコ社長から「税金を払え!」といわれた寅さんは、「なにこの野郎!向こうからいっぺんでも俺んとこへくださいってきたか!?」といって応酬している。寅さんVS税務署員の勝負は、明らかに寅さんに軍配があがるだろう。

このように、税に関する雑学が本書の中心。中には「満男は、博とさくらはもちろん、おいちゃん、おばちゃん、寅さんまで扶養家族にすべし」と、満男が取るべき具体的な節税指南まで展開されている。

「旅芸人・坂東鶴八郎一座が、寅さんからもらった五千円は、ちゃんと申告されていたのか?」(第8作)など、『男はつらいよ』劇中の細かいネタまで取り上げられており、著者の寅さん愛が随所に感じられる。

税および寅さんに関する雑学書としてライトに楽しめる一冊である。

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