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消しゴムハンコ by 夕涼庵子

寅さん全50作品&関連作品を1000文字で評論


『男はつらいよ』シリーズ全作品の見どころを解説しています。140文字による一言寸評と、1000文字による評論を掲載。作品鑑賞のガイドとして、また、かつて観た作品の内容を思い出したい時などにご覧ください。『男はつらいよ』以外の渥美清主演作品山田洋次監督作品もご紹介しています。

\知らない人のために一応ご紹介/

映画「男はつらいよ」シリーズとは?

「寅さん」は映画史上例を見ない稀有な映画シリーズ

映画「男はつらいよ」シリーズとは、1968年から1995年まで、足掛け27年にわたり全48作が製作・公開※1された、松竹株式会社配給による一連の映画作品のことを指します。主人公は、露天商や行商人の一種である「テキ屋」を職業とする「フーテンの寅」こと車寅次郎。通称・寅さんです。

彼は1年の大半を旅先で過ごし、たまにふらりと故郷である葛飾柴又に帰郷しますが、つまらぬことで周囲の人々と悶着を起こし、すぐにまた家を飛び出します。やがて旅先で出会った美しい女性(マドンナ)にすっかり惚れ込んでは、ノコノコとまた故郷に舞い戻り、周囲を壮大に巻き込みながら恋愛成就に向けて奮闘するものの、最終的には必ずフラれ、居心地の悪さからまた家を飛び出していきます。

次回作では再び寅さんの帰郷からはじまり、以降の筋書きは全48作ほぼ一緒。一話完結型であるため、どの作品から見始めても内容を十分に理解できるというのがこの映画シリーズの特徴です。

主演・渥美清の死去により、未完のままシリーズが終わる

世界最長の映画シリーズとしてギネスブックにも認定され、公開された全48作はことごとくヒット。観客動員が100万人を超えた第8作「寅次郎恋歌」以降はお盆と正月の年2回公開を基本としたため※2、初詣とセットで「男はつらいよ」を見るなど、寅さんが年中行事化したファンも多く存在しました。バイオレンスやエロとは無縁の作風が老若男女幅広い層に受け入れられることなどからも、「男はつらいよ」はいつしか「国民的映画」と呼ばれるようになります。

やがてシリーズは正式な完結作を迎える前に主演俳優・渥美清の死去により終了し、車寅次郎を代役が演じる「男はつらいよ」の新作やリメイク作品は現在に至るまで製作されていません。寅さん=渥美清のイメージは分かちがたいものであり、「007」シリーズのジェームス・ボンドのように、別の俳優が寅さんを演じることが実質的に不可能であるからです。

今もなお熱狂的なマニアを生み出し続ける、「寅さん」の世界にようこそ!

生、死、家族など普遍的なテーマを取り扱う脚本と、山田洋次監督をはじめとする熟練の映画人が仕立てあげた各作品は、時の移ろいにも風化しない堂々たる作りを持ち、マンネリズムと揶揄されながらも確固たる様式上に展開される悲喜こもごものやり取りは、何度見ても飽きのこないものであります。

レンタルビデオ時代から高回転率のコンテンツとして人気を博し、また近年では、NETFLIXなどの映像配信サービスや、BS/CSで繰り返し再放送されることで、「男はつらいよ」は世代を超えて新たなファンを獲得し続けています。全48作+特別編+TVドラマ版を合計すれば85時間近くに及ぶ膨体な寅さん作品群は、一度ハマれば全てを網羅したくなる中毒性を秘めており、熱狂的なマニアを今後も生み出していくことでしょう。

ここまで述べてきたように、「男はつらいよ」は日本のみならず世界の映画史、芸能史においても例のない、稀有な映画シリーズと言うことができます。本サイト「寅さんとわたし」では、そんな深淵なる「男はつらいよ」の魅力を多方面から探っていきたいと思います。

※1:主演・渥美清の死去後、1997年に第49作「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」、2019年に第50作「男はつらいよ お帰り 寅さん」が製作・公開されていますが、渥美清存命中のオリジナル作品という意味で記述しています。

※2:第43作「男はつらいよ 寅次郎の休日」以降はお正月の年1回公開となりました。