寅さんファンに聞く「寅さんとわたし」第9回~ピアニスト 作曲家・妹尾 武さんの巻(後篇)

ゴスペラーズ『永遠(とわ)に 』をはじめ、鈴木雅之、髙橋真梨子ら名だたるミュージシャンに楽曲提供を行っているピアニスト・作曲家の妹尾 武(せのお たけし)さんは大の寅さんファン。

寅さんの魅力について語った前篇に引き続き、「男はつらいよ」音楽担当・山本直純について、そして、寅さんの影響を受けて毎年開催している「港めぐりツアー」の見どころを語っていただきました。

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取材日:2017年3月22日
取材場所:ピアノスタジオノア

山本直純さんの音楽は“和のモダン”。いつの時代にも色あせない


これはぜひお聞きしたいのですが、同じ作曲家として寅さんの音楽担当・山本直純さんにはどんな印象をお持ちですか?

ありきたりな表現ですけど、作曲家としてものすごく尊敬しています。山本直純さんの書かれる“和のモダン”はいつ聴いても色あせないものがあって、聴いたただけで日本の風光明媚な景色の中に誘われてしまうんですよね。

僕は何年か前に『いなり、こんこん、恋いろは。』というアニメ作品の音楽を書かせていただいたんですけど、そこには山本直純さんの世界観をちょっとスパイスとして入れているんです。

メインテーマの『いつも、こころに、青い空。』という曲は聴く人が聴いたら「この人、山本直純が好きなんだろうな」とわかると思います。自分の作品の中でもベストワークだと思うので、ぜひ聴いていただきたいです。

「男はつらいよ」のような名曲が書けたら、もう死んでもいい

妹尾さんは『男はつらいよ』メインテーマをカバーされていますが、これはどういう経緯で?

デビューアルバムのレコーディングの時から、すべての録音を終えたら余興で『男はつらいよ』を弾くのがなぜか恒例だったんです。プロデューサーさんとはいつかアルバムに入れようねって話をしていて、僕が生まれ育った昭和という時代を振り返るというコンセプトのアルバム『RETRO MODERN DANDY』(2009年)でそれが実現しました。

僕のカバーは原曲と比べて洗練されているねとよく言われるんですけど、僕としては山本直純さんに対する尊敬の念を込めて、割と忠実にピアノで弾いたつもりです。原曲はオーケストラを使っていますけど、ピアノ1台で弾くとモダンな印象がより際立つのかもしれませんね。

あんな曲が書けたらもう死んでもいい!ってぐらいの名曲だと思いますよ。

♪妹尾 武の「男はつらいよ」ピアノアレンジ講座


妹尾さんバージョン『男はつらいよ』のアレンジで、気に入っている箇所をピアノを弾きながら解説していただけませんか?

もう全部好きなんで。まあイントロは普通にこうですね。(動画0:21~ ピアノを弾く)好きなところはこの辺。(動画0:28~ ♪今日も涙の日が落ちる)コードはちょっと変えているかもしれないけど、ここのメロディがすごく好きです。

コードに何か1音、アレンジが入ってるんでしょうか?

多分入ってますね。たしか原曲は♪奮闘~ってところ、G7というコードなんですけど、ここに“ミ”の音を足すだけでちょっとジャズ風になります。(動画1:20~ ジャズ風『男はつらいよ』を弾く)

『男はつらいよ』はメロディがいいのでいろんなコード付けができるんですね。ピアノの教室みたいになってますけど(笑)。

ジャジーにアレンジしても、それを抱擁してくれる曲なんですね。

そうですね。たとえばこんなのも。(動画1:54~ アレンジ版『男はつらいよ』を弾く)自分の手癖を入れちゃうこともあるんですけど、レコーディングしたバージョンは元のコードに忠実だと思います。

ちなみに今の手癖が入っているのは何風?

妹尾風でしょうね(笑)。ライブ会場だとこんな風に『寅さん』に『ユーモレスク』を混ぜてみたり。(動画2:37~ ユーモレスクが混ざった『男はつらいよ』を弾く)こういう遊びをすることもありますね。

素晴らしい!本当にありがとうございます。

名曲ってどんなアレンジ、どんな編成でやってもやっぱり名曲なんですよね。『男はつらいよ』には確固たる素晴らしいメロディがあるので、どんなアレンジをしても良く聞こえるんだと思います。

「港めぐりツアー」には、その日、その時、その場所でしか味わえないサプライズがある


最後に「港めぐりツアー」の見どころを教えてください。

会場がいわゆるコンサートホールのような遮音性の高い場所ではないので、ライブ中に外の音が聞こえてくることがあるんです。しんみりしたバラードを弾いてたらいきなり花火の音がドーン!とか、港の方から船の霧笛がボーッ!って聞こえたり、そうかと思えば急にどしゃ降りになって雨音をバックに演奏したりとか。

天気がいい日には「ちょっと寅さんを弾いてみようかな?」ということもあります。特別ゲストが登場する日もあるので、その日、その時、その場所でしか味わえないサプライズを楽しんでもらえたら嬉しいですね。

それぞれに趣のある4つの会場。寅さん第6作のロケ地もすぐ近くに!

「港めぐりツアー2017」の4会場を簡単にご紹介いただけますか?

横浜・山手ゲーテ座でのコンサート風景

横浜の山手ゲーテ座(2017年5月13日[土])は会場のすぐ近くに「港が見える丘公園」があって、そこからは横浜の景色が一望できます。寅さん第11作でリリーさんが『港が見える丘』という曲をキャバレーで歌っていましたけど、あの曲はここからの景色を歌っていると言われています。

北九州の門司港三井俱楽部(2017年6月3日[土])と、長崎の旧香港上海銀行長崎支店記念館(2017年6月4日[日])はレトロモダンな洋館です。どちらも電車の終点にあって小ぶりな会場ですけど、すごく高貴なものを感じさせる空間です。

長崎・旧香港上海銀行長崎支店記念館からは、長崎港に停泊する大型客船が見える

長崎の方はすぐ近くに寅さん第6作のロケ地(寅さんと宮本信子が出会うシーン)があるので、『男はつらいよ』ファンにはおススメかもしれません。といっても映画の風景からはだいぶ変わってしまいましたけど。

神戸・布引ハーブ園 森のホールでは、神戸の“百万ドルの夜景”を見ることができる

神戸の布引ハーブ園・森のホール(2017年6月10日[土])は、新神戸駅からロープウェイに乗って、頂上まで登ったところに会場があります。天気が良ければコンサート後に“百万ドルの夜景”が見られるという素晴らしい会場です。

そういったロケーションの妙も楽しめるのが「港めぐりツアー」なんですね。

神戸ではコンサート前には天気が良くなかったのに、終わった頃にはすっかり晴れて最高の夜景が楽しめた、ということもありました。何が起きるかわからないけど、起きたら起きたで忘れられない思い出になるというのが港めぐりツアーですね。

何泊かしてコンサートと旅行を一緒に楽しまれる遠方のお客さんもいらっしゃいますので、ぜひ小旅行気分で会場にお越しいただければと思います。

「港めぐりツアー」で、音楽が作り出す“ご縁”をぜひ感じてほしい

最後に、「港めぐりツアー2017」に向けた意気込みをお願いします。

「港めぐりツアー」というタイトルには、“みなさんとめぐり逢う”っていう意味もあるんです。“みなと”、“めぐり”、逢うって。

2005年から始めて今年でもう13回目になりますが、毎年来てくださるお客さんにも、今回初めて来てくれるお客さんにも、音楽が作り出す“ご縁”をぜひ感じていただけたらと思います。

やっぱり、寅さんのように48回まで続けます?

いやいや、さすがに無理ですよ(笑)。でも、日々生きていることへの感謝や、今年もまた会えたねという喜びを、毎年みなさんと共有できたらいいなと思ってツアーを続けています。いつまで続けられるかはわかりませんけれど、気持ちだけは永遠にと思っています。

本日はありがとうございました。

「港めぐりツアー2017でお会いしましょう!」 自宅にて、寅さん風にキメる妹尾さん

妹尾武さんインタビュー 前篇にもどる

妹尾 武(せのお たけし) プロフィール
ピアニスト・作曲家
1969年12月26日 神戸生まれ

1995年、大学在学中に作曲した「So Heavenly.」が細野晴臣選曲・監修のコンピレーションアルバムに収録されたのを機に、プロとしての音楽活動を開始。以降、ゴスペラーズ、髙橋真梨子、鈴木雅之、加藤登紀子、Lyrico(露崎春女)、Baby Boo、藤原道山、夏川りみ、谷村新司、松任谷由実といったアーティストのレコーディングにピアニストとして参加。 また、作曲家としても様々なアーティストや映画、テレビドラマ、CMに楽曲提供をしている。

自身もアーティスト活動を展開しており、妹尾武名義では計8枚のアルバムをリリース。2007年には藤原道山(尺八)、古川展生(チェロ)との3人組ユニット「KOBUDO-古武道-」を結成し、計6枚のアルバムを発表している。好きな映画は「男はつらいよ」で、その影響を受け自らのコンサート企画「港めぐりツアー」を毎年行っている。最も敬愛する音楽家はセルゲイ・ラフマニノフ。

【主な提供作品】
「永遠(とわ)に」(作曲)ゴスペラーズ
「氷の花」(作曲)ゴスペラーズ
「新大阪」(共作曲)ゴスペラーズ
「After The Rain」(作曲)黒沢 薫
「明日は来るから」(共作詞・作曲)東方神起
「枯れない花」(作曲・編曲・Cho.)高橋真梨子
「花霞」(作詞・作曲・編曲)夏川りみ
「君の未来、僕の想い」(作曲・Cho.)鈴木雅之
「Friends before Lovers」(共作曲)K
「キセキノハナ」(作曲)Lyrico
「あなたの腕のなかで」(作詞・作曲)平原綾香
「調和 oto ~with reflection~」(編曲)KOKIA
「愛するたびに生まれかわって」(作曲・編曲)増田いずみ
「絆 ki・zu・na」(共作曲)加藤登紀子
「We are ~僕らはここにいる~」(作詞・作曲・編曲)Baby Boo
「Day Of Lights」(作詞・作曲・編曲)AJI
「ココロノジカン」(編曲・Cho.)谷村新司
「Beautiful Days」(作曲・編曲)宮本笑里
「風のゆく道」(作曲・編曲)amin
「イツクシミ」(作詞・作曲)上間綾乃

【「妹尾 武」名義・主なアルバム】
FORTUNE -SENOO SONGBOOK-」(2013)Capital Village
Anchors. The Best of Senoo 2000-2009」(2009)Silent/POLYSTAR
RETRO MODERN DANDY」(2009)Silent/POLYSTAR



【「KOBUDO -古武道-」名義・主なアルバム】
cuisine de classic」(2015)ホリプロ
OTOTABI-音旅-」(2013)DENON
イツクシミ」(2011)日本コロムビア



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