『男はつらいよ』の名脇役・米倉斉加年の出演作を振り返る
『男はつらいよ』シリーズ数作品に出演した俳優・米倉斉加年(よねくらまさかね)さんが2014年8月26日、腹部大動脈瘤破裂のために亡くなった。享年80歳。
「善良だがちょっと癖のある変人」を演じるのを得意としていた米倉さん。寅さんシリーズではこんな役で出演していた。
岡倉教授(第10作『寅次郎夢枕』)
マドンナ千代(八千草薫)に一目惚れしてしまう、ちょっぴり変わった大学教授・岡倉先生役で出演。寅さんのイジメに必死になって抵抗する変人ぶりは、実にいい味を出していた。
「夏の日のドブ板じゃねえけどもそり返ってるじゃねえか」「しゃくれてりゃいいってもんじゃねえんだよ!」と顔の特徴について寅さんに散々いじられるというすごいシーンもあった。米倉さんといえばやはりこの作品だろう。
おっちょこちょいの巡査(第16作『葛飾立志篇』第20作『寅次郎頑張れ!』第26作『寅次郎かもめ歌』)
岡倉教授以降は、仕事熱心ながらおっちょこちょいの駐在役として数本に不定期出演をする。『寅次郎かもめ歌』では寅さんを誘拐犯と勘違いし、ブチ切れた寅さんに「長引いたツラしやがって!」「このアゴ」とまたもや顔の特徴について容赦なくいじられることとなる(ひどい)。
蒸発するサラリーマン富永(第34作『寅次郎真実一路』)
マドンナふじ子(大原麗子)の旦那役として出演。仕事上のストレスが原因で突然蒸発、寅さんとマドンナがその行方を探す旅に出るというストーリーで、重要な役割を演じた。蒸発に至る瞬間の虚ろな目、そして、ラストシーンにて人間らしさを取り戻した輝きのある目は米倉さんにしかできないものであった。
【おまけ】海賊(第15作『寅次郎相合い傘』)
作品冒頭夢のシーンに海賊として出演。せむし男のような異様な風体が実にハマっている。ちなみに、となりにいる海賊は第14作『寅次郎子守唄』にて弥太郎青年を演じた上條恒彦。このように、寅さんシリーズでは同じ俳優さんが様々な役でチョイチョイ出演する。
米倉さんの遺作は『ふしぎな岬の物語』だが、その1つ前の作品は山田洋次監督『小さいおうち』であった。戦争がもたらした悲劇について悔恨に満ちた述懐は、おそらくご本人の戦争体験を反映したもの。作品のエピローグを引き締める重厚な演技を見せてくれていた。
80年の人生経験から生み出される演技は余人を持って替えがたく、今回の突然の訃報が残念でなりません。合掌。
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2016/06/03