渥美清『徹子の部屋』出演時のトーク書き起こし

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2013年元旦放送『新春!徹子の部屋スペシャル いま甦る昭和の名場面』にて、渥美清と倍賞千恵子がそろって『徹子の部屋』に出演した際の貴重な映像が放送された。映像は1979年(昭和54年)の新春、第22作『男はつらいよ噂の寅次郎』公開中の頃のもの。

私は、渥美清の動く姿は映画の中でしか見たことがなかったが、この映像では古くからの友人である黒柳徹子と気心知れた倍賞千恵子に囲まれ、人懐っこく、可愛く、抜群に話が面白い、素の渥美清の姿を垣間見ることができた。

特に、黒柳徹子と出会った時の様子を形態模写を交えながら話す姿は、噂に違わず「座談の天才」であった。映像はダイジェストで正味10分くらい。貴重なトーク内容を以下に書き起こす。

2013年1月1日放送『新春!徹子の部屋スペシャル いま甦る昭和の名場面』より

当時を振り返る徹子の述懐からスタート

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徹子「さて続いては渥美清さんです。渥美清さんは50年ぐらい前、『夢であいましょう』とそのもっと前にドラマでもご一緒だったんですけども、本当に天才的な方でした。私はいつも『兄ちゃん』と呼んでたんですけど、渥美さんは私をはじめから『お嬢さん』と呼んでくださって、本当に最後まで長い間お友達でした。

出ていただいたのはこの一回だけなんです。ですからもっと出て頂きたいって思ったんですね。毎回毎回、徹子の部屋にどんな人が出たか、面白かったってことを私に報告なさるので、『兄ちゃんお願いだからもう一回出て』って言ったんですが『お嬢さん、何をおっしゃいます、私なんぞより面白い方がたくさんいらっしゃるじゃありませんか』と言ってとうとう出てくださいませんでした。やっぱりそれは寅さんを大事にしたからだろうというふうに思っています。

寅さんの妹さんのさくら役の倍賞さんとご一緒に、お正月に出ていただいた時の渥美清さんと倍賞さんです。御覧ください」

VTR本編

徹子「みなさまあけましておめでとうございます(徹子すでにクスクス)。

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オープニングからいきなり笑っている徹子
すぐ脇で渥美がおどけているのだ

今日のお客様、いろいろこちらでおっしゃるのがとてもおかしいんですけど、皆様にも後でたくさん笑っていただきたいと思いますが、今日は徹子の部屋の第一回目(徹子がまじめに挨拶をしている横で、おどけた渥美がゴニョゴニョと倍賞に何かをしゃべっている。徹子、笑いを堪え切れない)、ちょ、内緒話しないでください!今ご挨拶してるんですから内緒話しないでいただきたいんですが、あのー、じゃあこちらもうお映しください。

(徹子、挨拶を諦めて渥美を映すように指示)

それであの、フフ、新春でございますから、フフフ、今日から徹子の部屋が初まるんですが、イヒヒッ!1時間特別番組でお送り申し上げますのでッ(笑)

(渥美ひたすらおどけて徹子を笑わせようとぶつぶつひとりごとを言う。黒柳はそれに耐え切れずまともに喋れない)

ゆっくりしていただきたい……ですから一時間特別ということで(笑)、特別なお客さまにおいでいただいておりますが、特別特別ばっかりいってますけど、本当に特別でいらっしゃいます。寅さんでよくおなじみの渥美清さん、田所康雄さんがご本名です。そしてお隣が、可愛いさくらさん、妹さん役の倍賞千恵子さん」

tetsuko04役を離れた二人のツーショットは貴重

倍賞「おめでとうございます」

徹子「本当におめでとうございます。渥美さん、私はせっかく今とってもあらたまった新年の気持ちでご挨拶しようと思っているのに、何?なんて言ってたんですか?」

倍賞「徹子さんが『笑ってもらいます』って言ったら『じゃあ俺たち漫才夫婦みたいじゃないか』って言ってたの」

徹子「本当の寅さんだったら、こうやってお正月だったら、もう売ってるのに大変でしょ?啖呵売っていう。渥美さんの啖呵売っていうのは役としておやりになるずっと前から、あなたお上手だったじゃない。あれはやっぱり小さい時から見てらっしゃったんですって?」

渥美「そうです、上野あたりでね、ああいうおじさんたちいっぱいいましたから。それをそばに行って縁日の時にじっとみてたんです」

徹子「じゃあ今でも口をついて出てくるわけ?そういうの」

渥美「そうですね、やっぱ小さい頃に覚えたものは忘れないよね。歌でもね」

徹子「お正月にちなんだそういうのあります?なにか」

渥美「特別に正月にちなんだってものはないけど。あのーあれなんかそうかしら、一年二年三年でっていうその……『一度変われば二度変わる、三度変われば四度変わる。淀の川瀬の水車、誰を待つやらクルクルと。年が明けそして年が来て、今買わないとこの品物が高くなる』というふうに言ったりね」

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劇中で聞いたことのない啖呵売のセリフ

徹子「神田なんとか御茶ノ水、ちゃらちゃら流れるってよくおやりになるでしょう。あれは?」

渥美「あれはねえ、『四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れる御茶ノ水。粋な姐ちゃん立ちションベン』」

徹子「最後のところが(笑)さくらさんは実生活でも幸せにおなりになって、ご結婚されて。お兄ちゃんとしては嬉しかった?」

渥美「そりゃそうですよね。やはり、それは望みますよね(渥美なぜかニヤニヤしている)」

徹子「(笑)どうしてお世辞笑いすんのよ」

渥美「(笑)身についちゃってこれが。あははは!笑わなくていいとこで笑っちゃう。ね?(笑)」

一同「(笑)」

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徹子「でも今は『噂の寅次郎』っていうんですか?『噂の寅次郎』っていう題名でしょ?そして、私と渥美さんも昔ウワサになったことあるじゃない

渥美ありましたねえ……

倍賞「えっ、そう!?」

徹子「そうなのよ!(笑)それで週刊誌にね、二人がウワサになると載るの。でも渥美ちゃんの写真が他にないらしくてね、チンドン屋さんの格好している写真がいつも載るの(笑)どうしてあんなチンドン屋さんをしていたんでしょうね」

渥美「たいがいほら、週刊誌に載るとさ、女のひとはちょっと、こう悲しそうな顔して、男はちょっとレインコートの襟をたててさ、『僕はいいけどあの人にすまない……』とか、そういう記事がでるでしょ?二人が出た時はね、二人でチンドン屋やってんの!(笑)太鼓持ってさ、でこの人は嬉しそうな顔してニカニカ(笑)あれおかしかったねえ」

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週刊誌に取り上げられたときの「チンドン屋」の写真を模写する渥美清
笑顔が可愛いですね

徹子「たまたま芝居もないときに記事をお書きになったから、写真はテレビ局にあるいつもやってる役のやつをお出しになったんじゃないの?」

倍賞「それしかなかった」

渥美「怪しいカップル」

一同「(笑)」

徹子「でも、想像したことあったじゃない。結婚して子供が産まれたらさ、顔が渥美ちゃんみたいでね、喋り方が私みたいになんだってさ(笑)。そんなヒドいことを言った人がいたわね」

渥美「でももしそうしたら、うるさくてうちの中にはいらんないだろうね」

一同「(笑)」

徹子「でもお元気で何よりですね。いかがですか22作、寅さんをおやりになってきて」

渥美「まあ本当にここまでよくやってきたというかねえ、ねえ?」

徹子「だってあなたの、さくらさんのお子さんがもう、もういま小学校……」

倍賞「3年です」

渥美「3年になっちゃんだんだ」

徹子「だからあなたはフーテンで居ないからよく知らないけど、その間育っているのよね。びっくりしちゃったあの子供見て」

渥美「びっくりしますよねえ……。いやあれは僕の子じゃないんですよ?」

一同「(笑)」

徹子「ふふふ。わかってるわよ」

渥美「この人(倍賞)と、旦那さんの間にできた子供という設定ですから。寅次郎は独身ですから」

徹子「それ知ってる」

渥美「知らないんじゃないの?」

徹子「いつか一緒に見に行ったじゃない新宿に」

渥美「ああそうか」

徹子あのね、渥美さんといっしょに見に行くの寅さんを。そうするとみんな笑うのね。で、渥美さんも笑うの(笑)

一同「(笑)」

徹子「でもあなた(渥美)は試写室でご覧にならない。渥美さんほどね、俳優さんの中で他の方の映画とか芝居とかご覧になる方いらっしゃらないんですよね。よくご覧になってて本当すごいでしょ。でも映画なんかは試写室でご覧になることあるかもしれないけど、自分のはちゃんと劇場で?」

渥美「劇場で」

徹子「なんでですか?」

渥美「そのほうがね、反響が違うんですよね。ええ。反響が違う。たとえば前にね、その、メロンを、一個のメロンをみんなで分けて食べるっていう話があって。そんとき寅次郎が帰ってくんの忘れてみんなで食べちゃって。で、寅次郎が非常に怒ったっていう話をね、新宿とかそういうとこで見るとみんなとても笑うんです、もっともだって。 ところが浅草の小屋だとね、笑わないんですねえ。寅に取っといてやるのが当然なんだ、食べちゃったお前たちが悪いんだっていう反応がね、浅草の劇場だとあるのね。ですからね、そうやって、その、こう劇場を変えて見に行くってのは面白いね」

倍賞「全然違うもんね」

渥美「全然違う」

徹子「寅さんの役はね、渥美さんがぴったりだとみなさん思ってらっしゃると思うんだけど、ご自分ではやはり寅と似てるとこあるなあと思います?」

渥美「そうですね。もうこれだけ長くやっちゃうと、なんて言うんですか、ただその回だけ、そういう風に扮するってわけにもいかないでしょ」

徹子「だから寅みたいになっちゃうってこと?」

渥美「どっかなっちゃうんだね」

徹子「でも元々どうです倍賞さん?この方はじめっから寅みたいなとこがあったんじゃない?」

倍賞でもやっぱり最近とみにそうみたい

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「寅化」が進んでいるとあっさり認める倍賞千恵子

徹子「(笑)そう」

倍賞「あのー、撮影入るでしょ?入る前からもう、撮影所の近所に歩いて5分とかかんない旅館があるんですけど、そこへ泊まりっきりなの。で、自分がね、開始がお昼過ぎとかだと、たとえばそこがうるさくてなんないって時は浴衣のままちょっと羽織ってね、そのままぷらぷらぷらぷら撮影所行ったり、今度は撮影所にこうやってスっとね。ベットがあるのよ渥美ちゃんの部屋に。そこでいつも新聞見ながらか、じゃなければ天井見ながらか、こうやって寝てるのね。で、寅のまんまなのよね、冬になると半纏着て。綿入れみたいなの着てね。」

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徹子「(笑)今日も私と倍賞さん、お正月だから何か着て来るって」

倍賞「そう!そうなの、言ってたの。やっぱり女の人だからね、女の人はちゃんとしてったほうがいいよ、じゃあそれでって、撮影の合間にも(渥美と)話してたわけ。『じゃ俺もやっぱりこう絣の着物とか着てったほうがいいのかな』なんてそん時は言ってたわけ。私は『いいんじゃない、渥美ちゃんもいつもどうせこういう格好(白いセーター)だし、私もあんまりこういう格好(着物)しないからね。じゃあ渥美ちゃんにあわせてそういう格好で』なんて言ってたら、『でもやっぱり正月だからさ、ちゃんとした格好をしたほうがいい』って言うわけ。でも自分はいつもの(笑)」

渥美「いや調べたの。絣の着物も何回か着たんだよ、だから調べたんだけど、あれ俺のもんじゃなかった、衣装だったんだね。行った先々で借りたやつなんだよ。だからいくら調べたって無いわけだよ。もしあったらそれ着てこようと思ったんだけど(笑)」

一同「(笑)」

徹子「でも渥美さんていっつも思うんだけど、本当に、まあ俳優のみなさんそうだけど、いわゆるそういった、観察とかね」

倍賞「すごい鋭い」

徹子「そう。それとその観察をね、お話になる部分があるのよ、なんとも言えない。だから私ね、人間ていうのは世の中を見るのは目の大きさじゃないなって思うのね、失礼だけども。本当にそう思う。

(徹子に目のちっちゃさをいじられるが、渥美清は穏やかに微笑む)

初めの頃はね、知り合ってばっかりの頃はみんなでねえ、随分ひどいこと言っちゃってね」

倍賞「どんなの?」

(どんなの?と聞かれた渥美は、一瞬の沈黙のあと、静かな口調でボソボソと喋りはじめる)

渥美「……。酷かったですよ。え?僕のことをやっぱり、とても、別の人種だと思ってたのね。 『どこ?浅草?……ヤダ!』とかね

徹子「(笑)」

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「どこ?浅草?……ヤダ!」
静かな語りからいきなりの豹変。一気に話に惹き込まれる。

渥美「仕事してる時でもね、あの、こういう人に会ったことなかったんですよ僕それまで。それまでどっちかっていうとほら、浅草って下町だったでしょ?だから、ほっかりとした感じの、おでんの湯気みたいな子が多かった。この人はなんかね、言ってみるとね、薄い、黒いセーターをピシーッと着てね。薄いズボンをスパーッと履いてね。で、黒い靴履いてね。とてもなんていうのかしらこう……男の子とも女の子ともつかない感じの人だった。で、仕事の本番中に、『あの、そのシャツがさ』っていうことをまず言ったら『なにぃ?』

一同「(爆笑)」

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「なにぃ?」 声のハリとこのおかしな顔、もう名人芸!

渥美「『いや、そのシャツがさ』『誰がシャツ着てるのよ』『いや黒柳さんそれ』『フンッ、シャツって……。ブラウスっていうのよ!』『ああそうですか』っていう調子。全部」

徹子「(爆笑)」

渥美「うん、全部そう。そらぁとってもね……。『なにぃ?』っていうのが僕はなんか……。で、この人はね、慶応ボーイみたいな卵型のね、綺麗な坊っちゃんみたいなそういう人が好きでね。そういう人がキャバレーの脇にいるとね『いやぁん、良く撮ってくれなきゃ!』って俺らのこと放ってそっちいって『こっちで撮って』って言ってね」

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「いやぁん、良く撮ってくれなきゃ」
声色がいきなりオカマ口調になる!

徹子「(爆笑)」

渥美「で、終わったあとね、仕事終わったあとさ、ちょっと待っててねってこの人言う。それが待っててもね、普通の人ならすぐ来るんだけどもこの人いつまでも来ないわけさ。だからしょうがないから、決めといた場所にスッって先にいってたわけ。そうするとそこへ着いて怒るわけね。『あなたは一生結婚できないわよ!』

一同「(爆笑)」

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「あなたは一生結婚できないわよ!」
身を乗り出して、徹子を指さして、ピシャリ!

徹子「(爆笑)そんなこといった?」

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徹子はずっと大爆笑!

渥美「だから、なぜって聞いたら、『あなたはね、あなたに付いていく女はなし!』ってこういう風にいうんだよ」

一同「(爆笑)」

渥美「で、どうしてって言ったらね、『いい?あなただけよ、待ってなさいっていったのにスッと先にいっちゃうのは。岡田眞澄だとか、エリックだとか、みんな待ってるのよ?あなたはダメ!あなたについていく女はいない!』って怒られちゃった」

徹子「(爆笑)よかったじゃないの今はいて」

渥美「で、そういう風に言ってさ、今度は行った先でもってみんなでもって御飯たべるわけ。で、大勢だったの。お腹すいてたから箸持って食べようとするとね、スッとエビがくるでしょ?食べようすると、『待って!ほら渥美ちゃん!1、2、3、4、5、6、7、8個…、それで6人でしょ…、エビは2個!あなたは2個!』ってね、全部決めるわけ」

一同「(爆笑)」

渥美「で、僕が『そのブラウスがさ』って言うと、『なにぃ?これはシャーツでしょ』って言うんだよ

徹子「(爆笑)ちょっとコマーシャルです」

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      2016/06/01

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