渥美清がチャップリンを演じる貴重なシーンがテレビドラマ『泣いてたまるか』にある

寅さんを演じた渥美清を、”アジアのチャップリン”と評価するメディアもあったそうだが、その”アジアのチャップリン”が、本物のチャップリンを模した芝居を見せる映像がある。

その映像とは、渥美清主演のテレビドラマ『泣いてたまるか』。第一話「ラッパの善さん」にその貴重なシーンが収められている。

「ラッパの善さん」は、映画監督・野村芳太郎がメガホンを取った作品。野村芳太郎と渥美清といえば、映画『拝啓天皇陛下』『続・拝啓天皇陛下』でのコンビが有名。二人は映画からおよそ3年後、テレビドラマでもコンビを組んでいたのである。

本作は『拝啓天皇陛下』シリーズの姉妹編ともいうべき内容。主人公の善さんはかつて軍隊でラッパ吹きをしていた青年で、お世話になった軍隊長の未亡人のために身を粉にして献身する。映画の主人公・山口正助の設定をある程度下敷きにしているといっていいだろう。

ドラマとしては及第点の出来だが、見どころはなんといっても渥美清のパントマイム。作品内ではおまけ的に挿入される数十秒の短いシーンであるが、チャップリン風のBGMに載せて、渥美清がセリフのないパントマイムを演じている。

rappanozensan03帽子、だらしないズボン、ステッキ代わりの傘、そして歩き方までチャップリン

rappanozensan04マンホールに落ちる?かと思ったら

rappanozensan05配管工の頭を踏んづけていた

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rappanozensan08体張ってます!

さて、渥美清とチャップリンといえば、渥美清は若い頃、映画『チャップリンの黄金狂時代』のナレーション仕事をやったこともあるという。以下、小林信彦の名著『おかしな男 渥美清』より引用。

晩秋の一日、と書きたいところだが、つまりはその年の十一月九日、ぼくは狭い試写室にいた。

映画は「チャップリンの黄金狂時代」である。 (中略)

いってみれば、映画がこれからどうなるか、関係者もわからなくなった時代であり、アメリカではハロルド・ロイドのサイレント喜劇が再評価されつつあった。すべて真似事で生きる日本で、「チャップリンの黄金狂時代」をショーバイにしようと考える人たちがいたとしても不思議ではない。

どういう経路を経たものか知らないが、入荷したフィルムはドイツ語版であるという。そこで輸入業者は日本語発声版を作ろうとした。サイレント喜劇の弁士として誰が適任か?

小さなスクリーンの右側のカーテンがぐいとあけられて、黒いサングラスをかけたいかつい男が現れ、「よお」と言って、ぼくの隣の椅子に腰をおろした。

「ごぶさた。…やってるかね?」 渥美清はサングラスを外し、胸のポケットに納めた。

(中略)

「これの吹き込みをやるんだって?」 「ああ」 彼は軽く応える。

(中略)

「チャップリンの黄金狂時代」は少年のころに観ていた。渥美清にとっては青年のころか。

残念ながら渥美清ナレーション版『チャップリンの黄金狂時代』はソフト化されていないようだが、一度でいいから見てみたい。ミスマッチのような気もするし、ドハマりするような気もするし。非常に興味深いところである。

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      2016/06/01

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